大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学 藤原 靖弘 教授

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小さな違和感を新疾患発見につなげよう

【ふじわら・やすひろ】 1988 大阪市立大学医学部卒業 同大学医学部附属病院研修医 1992 米カリフォルニア大学アーバイン校留学 2002 大阪市立大学大学院消化器器官制御内科学(現:消化器内科学)講師 2007 同准教授 2016 同教授

 大阪市立大学のトップである荒川哲男学長を輩出した同大学大学院医学研究科消化器内科学教室。医学教育に加え、英語教育にも力を注ぎ、世界で活躍する医師を送り出している。藤原靖弘教授が就任して2年。特色ある研究を基盤に、臨床、教育にも力を発揮している。

―これまで力を入れてきた研究は。

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 私自身の専門は、食道、胃などの上部消化管です。特に、胃食道逆流症(GERD)の基礎・臨床研究に長年取り組んできました。

 GERDは、胸やけなどの症状があり、内視鏡検査で食道粘膜にびらんや潰瘍が認められる「逆流性食道炎」と、症状はあるものの粘膜に異常が認められない「非びらん性胃食道逆流症」に分けられます。

 近年は、非びらん性の人の方が多く、GERDの患者のおよそ6割。中には、逆流していないにも関わらず症状が出る人もいます。当然、胃酸を抑制する「プロトンポンプ阻害薬」では治らない。抗うつ剤や神経に作用する薬で治療するほうが理にかなっています。

 私がGERDの研究を始めた1990年代初めごろは、まだ疾患自体の認知度が低い時代でした。内視鏡でびらんの有無を確認し、びらんがある逆流性食道炎の人に対して治療することが大きな役割だったのです。

 今は、逆流性食道炎はポピュラーな病気となり、治療薬も複数登場し、クリニックで診断、治療するのが主流です。それに伴い、大学病院は難治性GERD、つまり非びらん性食道逆流症の患者の診断、治療へと役割を変えています。

―最近のトピックを聞かせてください。

 近年の大きなテーマは国の指定難病である「好酸球性消化管疾患」。GERDとよく似た症状を訴える人が多いことから、研究を始めました。

 白血球の一種「好酸球」が消化管に集まり、慢性的な炎症を起こす病気で、炎症が起こる場所によって、「好酸球性食道炎」と「好酸球性胃腸炎」に分けられます。食道に起こると食べ物の通過が悪くなり、胃や腸に起こると腹痛、嘔吐、下痢などが現れます。

 好酸球性消化管疾患はアレルギーが関連していることはわかっていますが、発病の仕組みも効果的な治療方法も確立されていません。何がアレルゲンとなっているのかはっきりしない場合も多いのです。

 食道炎の場合は、GERDと同じようにプロトンポンプ阻害薬で3分の2の人の症状が改善されるのですが、「なぜ治るのか」ということがわからずにいる段階です。食べ物が詰まる人の場合には局所ステロイド治療を施しています。

 内視鏡で見ると、かなりひどい状態であっても、症状がそれに比例せずかけはなれている。「不思議な病気」なのです。

 好酸球性消化管疾患については、全国的な研究班があり、遺伝子解析などを進めています。われわれも参加しつつ、多くの症例を見て、治療法の開発につなげていきたいと思っています。

―腸疾患などの患者への「糞便移植」に向けて、準備を進めているそうですね。

 「腸内細菌外来」を立ち上げました。腸内細菌叢、いわゆる腸内フローラによって、健康になったり、健康状態が悪化したりする可能性が報告されています。

 糞便移植療法は、健康な人の便の中の細菌を、大腸内視鏡を使って患者の大腸内に散布する方法です。現在の当院での適応は、抗菌薬の使用で腸内フローラが乱れることによって起こるとされる「クロストリジウム・ディフィシル腸炎」患者限定。ドナーのスクリーニングなどの問題があり、まだ実際の移植に至ってはいませんが、研究は進行しています。

 国内でも、まだまだ糞便移植は「研究段階」です。どのような副作用があるのか、どのような疾患に効果が出るのか。腸内細菌そのものの研究も推進していきたいと思っています。

―教室員の力を結集して新たな所見などを集積する「F-PROJECT」が注目されています。

 教授就任後、新たな疾患や内視鏡所見を見つけるための取り組み「F-PROJECT」を始めました。

 内視鏡検査をしていると、「初めての所見」に出会うことがたびたびあります。「少し変だな」と思っても、「悪性ではないから特に問題ない」と、気に留めずにきたものもあります。

 しかし、私にとって初めてであっても、他の医師は見たことがあるかもしれない。学内外の教室員約150人全員の「初めて」の所見を集め、整理して共通点を見い出せば、新しい所見、疾患として学会などで発表できたり、治療法や予防法を見つけ出せたりするはずだと考えました。

 教室員の専門は多岐にわたりますが、何を専門にしていても通常の胃・大腸内視鏡検査はする機会があります。ちょっと凹凸があるなど些細な変化であってもピックアップすることが大事だと思っています。

 それによって、薬の影響や感染症による病変などが10年で一つぐらい見つかればいい。それぐらいの確率だと考えています。今は集積している段階と言えるでしょう。ある程度、数がまとまった段階でカンファレンスを開いていきます。

―教育面について聞かせてください。 

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 卒後は大学病院や関連病院で救急を含め消化器内科医として研鑽(けんさん)を積んでもらった上で、大学院で研究する道を選ぶのか、専門分野で臨床を極めるのか、本人の選択を尊重して、サポートしていきます。

 臨床では、早期消化管がんの内視鏡治療を担当するチームでは、内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)に積極的に取り組んでいます。特に食道がんの症例数が多いのが特徴です。

 胆膵チームは膵臓や胆管に対する内視鏡治療を実施。がんの化学療法を担当する臨床腫瘍チームもあります。

 カプセル内視鏡による小腸検査、小腸バルーンアシスト内視鏡検査、難病の炎症性腸疾患の診断・治療や、薬剤性消化管障害、原因不明の消化管出血の治療...。幅広く対応しています。

 臨床だけでなく、研究も欠かせません。私たちの教室では大学院進学や留学を積極的に勧めています。私も28歳の時、米国に留学しました。当時最新の医学、医療に触れられたこと、そして同じ研究室にいた仲間との出会いはとても貴重な体験でした。

 この教室から海外には年に1〜2人、国内にも2〜3人、留学に行っています。最先端の医療に触れ、新しい知見を持ち帰ってきてくれることを期待しています。

大阪市立大学大学院医学研究科消化器内科学
大阪市阿倍野区旭1-4-3
TEL:06-6645-2121(代表)
http://ocu-gastro.jp/


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