医療法人龍志会 IGTクリニック 堀 信一 理事長・院長

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動脈塞栓術が がん治療を変える

【ほり・しんいち】 三国丘高校卒業 1975 徳島大学医学部卒業 大阪大学医学部放射線科研修医 1977 大阪府立成人病センター(現:大阪国際がんセンター)放射線科 1985 スイスベルン大学医学部放射線科常勤医師 1990 大阪大学医学部放射線医学教室講師 1995 市立泉佐野病院放射線科部長 2002 ゲートタワーIGTクリニック(現:医療法人龍志会IGTクリニック)理事長・院長

 動脈塞栓(そくせん)術によるがん治療の症例数が1万件を超えるというクリニックが関西空港近くのりんくうタウンにある。肝臓だけでなく乳がんや肺がんにも適応するのが特徴で、同院には日本国内だけでなく、海外からも多くの患者が訪れる。

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―がんの血管内治療を専門にしていますね。

 当クリニックは2002年に開設。国内には数少ない動脈塞栓術によるがん治療を中心に運営している施設です。

 クリニックがあるりんくうタウンは、関空から電車で約5分、年間約2000万人が観光やショッピングで訪れます。近畿外からの患者も想定しアクセスを重視する当院の方針にぴったりの場所でした。

 2016年10月には、りんくうタウン内にできた「メディカルりんくうポート」の3〜5階に移転、診察室7室と、病床19床を設けました。すべての診察室や病室から大阪湾や関空が望めます。ビル内にはレクチャー室があるので医師向けの講義などもできます。

 IGTは「ImageGuided Therapy」の頭文字です。われわれが取り組んでいる動脈塞栓術が、CTや血管造影などの画像をガイド役として利用しながらカテーテルを使って治療をすることから、この名前をつけました。

―動脈塞栓術とはどのような治療法ですか。

 治療はまず脚の付け根の動脈から約1.5mmの細いカテーテルを挿入。これにさらに細いマイクロカテーテルを通し、大動脈に入ったマイクロカテーテルを指先でコントロールしながらがん組織に近づけます。そしてこのカテーテルを通して抗がん剤を注入したり、正確に塞栓剤で血管のふたをしたりします。

 がん組織への血管をふたでふさぎますので、少量の抗がん剤で効果的に治療ができますし、がん組織に栄養が届かないようにしてがんの増大を防ぎます。いわばがんを「兵糧攻め」にするといったイメージです。

 もともと1982年に大阪市立大学医学部の山田龍作先生が発表された治療法「肝動脈塞栓療法(TAE)」が始まりです。長年肝臓がんの治療に取り組んでいた山田先生が、肝臓に栄養を送る動脈を塞栓剤で止めたところ、肝臓がんが縮小するという効果が見られたのです。その後、肝動脈塞栓療法は世界中に広がりました。

 動脈塞栓術は抗がん剤を使用しますが、がん組織近くで使用するので使用量が少なくなります。抗がん剤を全身投与する場合と比較すると、平均で10分の1程度になります。このため、抗がん剤による副作用が抑えられます。また、局所的な治療ですから体への負担が少ない点も大きな特徴でしょう。

 また、動脈塞栓術は、外科治療、化学療法、放射線治療の3大療法と同様に公的保険が適用されます。患者さんのQOLを維持しながらできる治療という意味では、新たながん治療の選択肢の一つになり得るものだと考えます。

―貴院の治療の特徴は何でしょうか。

 動脈塞栓術を、肝臓がんだけでなく肺がんや乳がんなどの治療に実施している点が大きな特徴です。動脈塞栓術を肝がん以外に応用するために、海外の学会や論文から学び、それぞれのがんに合わせた治療技術を培ってきました。

 例えば肺の場合、肺動脈と気管支動脈の二つの動脈があります。肺の中心にある肺がんは気管支動脈から栄養を受け取るため、気管支動脈から塞栓剤や抗がん剤を注入してがんを治療します。

 開業時は、約8割が肝臓がんの患者さんでしたが、現在は肺がんや乳がんなど肝がん以外が8割以上を占めるまでになりました。クリニック開設から約16年。約1万5千人の患者さんに治療を実施しました。最近では患者さんの半数が近畿圏以外で、海外から来院される方も多くいます。

 力を入れているのは画像診断です。最新の血管造影装置や造影剤を使うダイナミックCTを導入し、がん組織へ栄養を送る血管の位置や太さ、形状をできるだけ細かく把握。栄養補給のための「道筋」を断つのが動脈塞栓術ですから、3D画像などで正確に動脈について把握することが重要なのです。治療室にはCTと血管造影装置を設置しており両方を駆使して血管内治療をします。

 最新の医療機器を使いこなすことと同様に、カテーテルを扱う技術も重要なポイント。われわれの技術は大変特殊なため最低2年間は修練を積むことが必要だと考えています。最新機器と技術がわれわれの治療を支えています。

 動脈塞栓術に取り組む過程で、使用する塞栓材料の開発にも取り組みました。塞栓材料「ヘパスフィア」は、米国のベンチャー企業の支援を受けて実用化。吸水性に優れているため水分を含むと膨張します。

 がん細胞につながる血管にこれを注入することによって血管内で膨らみしっかりと血管を塞栓。がん組織への血流が遮断されるのです。当院が肝臓以外のがんにも塞栓術を適用できるのはヘパスフィアによるしっかりとしたふたができるためだとも言えます。

 ヨーロッパや米国で医療機器の承認を受けました。2014年には日本でも医療機器として認可を受け、国内の医療施設でがん治療などに活用されています。

―課題は。

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 私は約16年の間、動脈塞栓術に取り組んできました。塞栓術による治療をより広めたいという思いで開業を決意、現在に至ります。その間、他病院で「余命わずか」と言われたものの、動脈塞栓術後、数年もの間、元気に過ごされた患者さんも多数見てきました。

 2016年度の治療実績は1073件。そのうち肝細胞がんは107件です。転移性肝がんの原発疾患は、大腸がんが最も多い207件、次に乳がんが96件、胃がんは43件でした。開院からこれまでの実績は当院のホームページで公表して、がんに対する動脈塞栓術の効果を医療関係者や一般の方にも知っていただきたいと考えています。広報活動には、今まで以上に力を入れていきたいと思っています。

 また、当院の動脈塞栓の技術を世界に広げるため、海外の医師への情報発信にも力を入れています。2016年には中国の医師45人が当院を訪れました。私自身も10年ほど前から毎年のように中国を訪れ、講演をしています。

 現在アジアの新興国でもがん患者が増加しています。動脈塞栓術は、局所治療のため、1回当たりの治療時間は短く、費用も安くすみます。がんの3大療法と比べると時間的にも、費用的にも抑えられるため、今後はもっと需要が高まると考えています。

 生物学的製剤など新たな薬剤が次々に登場していますが、これらと併せて、われわれの「動脈塞栓術」という技術を使うことで、がん治療の可能性はもっと広がると考えています。

 当院の使命は患者さん一人ひとりのQOLを大切にして誠実に向き合い治療を続けていくことです。そのためには医療の進歩とともに私たちも技術を磨き続けなければなりません。

医療法人龍志会 IGTクリニック
大阪府泉佐野市りんくう往来南3-41 メディカルりんくうポート3・4・5階
TEL:072-463-3811
http://www.igtc.jp/


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