神戸医療生活協同組合神戸協同病院 上田 耕蔵 院長

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震災から学び、生かす 70周年のその先は

【うえだ・こうぞう】 1975 神戸大学医学部卒業神戸医療生活協同組合神戸協同病院 1979 同組合番町診療所所長 1991 同組合神戸協同病院副院長 1993 同院長

 開設70年を迎えた神戸医療生活協同組合神戸協同病院。阪神・淡路大震災での医療活動を通じて学んだことは、日々の診療、病院づくり、そしてまちづくりへと生かされている。被災者の診療に携わり埋もれていた「災害関連死」を見つけ出した上田耕蔵院長から見える今と未来を聞いた。

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◎避難者を襲った「災害関連死」

 この病院に勤務するようになって40年余り。忘れられないのは、1995年1月に発生した阪神・淡路大震災(マグニチュード7.3、最大震度7)です。

 病院自体は「半壊」。院内は物がひっくりかえり、ぐちゃぐちゃでしたが、医療の継続は可能でした。院外のテントでは軽傷者の処置、院内では縫合や入院患者の対応に追われました。

 震災発生当日から民医連を中心に全国から人や物資の応援をいただいたことから、翌日には避難所への救護班を開始。1週間後には、避難所に行かずに過ごしている人のために地域を回って薬などを配布する活動を始めました。

 あの大震災では、倒壊した建物の下敷きになるなどして亡くなった方に加え、震災の時に負傷していなくても、その後、病気で死亡する人が高齢者を中心に相次ぎました。

 家を失ったり、避難生活で環境が変わったりしたことによる精神的ストレス、寒さや食欲不振による体力低下...。さまざまな原因で、肺炎やインフルエンザなどの病気を発症し、亡くなってしまったのです。

 と言っても、私も当初はこの現象に気が付きませんでした。記者の取材を受ける中で、避難所生活をしている高齢者の中で、肺炎による死者が増えているという情報を聞き、あらためて患者のカルテを見直してみたところ、通常よりも多くの人が肺炎で亡くなっていることが分かったのです。

◎インフルエンザ流行でさらに拡大

 当時はインフルエンザの感染判定キットもなく、感染症対策も今のようにきちんとされていませんでした。インフルエンザの流行が起こったことで、さらに犠牲者は増えてしまいました。

 この状況はマスコミを通じて「震災関連死」の名前で広がりました。行政も調査に乗り出し、兵庫県内の震災死亡者数6402人のうち、919人が関連死と判定されました。

 あの時の教訓の一つ目は、負傷した人の治療だけしていれば良いということではない、ということ。二つ目は高齢者などいわゆる「弱者」が弱る前に保護する必要があるということ。それ以外にも限りなくあります。

 2003年11月に制定した病院の基本方針には、「震災の経験を生かし、発災時には災害福祉と連携して災害医療を行います。予期せぬ感染についても対応します。 まちづくりの一翼を担います」と盛り込みました。

 普段から医療と介護のつながりを密にするなど、学んだことを今につなげたい。それと同時に、私自身の経験も含めて情報を地域に伝え、啓発やシステム整備を進めていく必要があると思っています。

◎組合員の参画で病院を運営

 この病院は、1948年設立の神戸協同診療所が前身。今年、70年を迎えます。

 その後、各地で同様の施設が誕生したことを受けて、4年後には兵庫県民主医療機関連合会(兵庫民医連)、そして1961年には神戸医療生活協同組合が生まれ、当院も民医連に属する病院として現在に至っています。

 組合員は、班会と呼ばれる集まりを定期的に開催。特定の疾病について知りたいという要望があれば、担当診療科の医師や看護師などの講師を派遣しています。

 病院に大きな機器を導入する場合には組合員に諮り、必要な場合には出資金を募るなど、病院の経営上の意思決定機関である理事会に組合員代表が参加し、運営されているのが特徴です。

 組合員になるには1人1000円以上の出資が必要です。人間ドックや健康診断の費用の割り引きがあるほか、診断書の発行手数料も非組合員より安くなります。

◎課題に向き合う高齢者医療

 当院には内科、外科、整形外科、リハビリテーション科、皮膚科があり、21床の透析室も持っています。地域の医療機関として、肺炎、糖尿病、脳血管障害などのいわゆるコモンディジーズをしっかり診る方針をとってきました。

 この地域も後期高齢者の方が急速に増え、年齢を重ねたことが原因でリスクが高まる疾患が増加しています。

 特に増えているという実感があるのは「誤嚥(ごえん)性肺炎」。気道を通じて流れ込んだ細菌によって発症しますが、物を飲み込む嚥下機能が低下していることが原因の一つであり、単なる感染症ではないのが難しい点です。治療とともに嚥下のリハビリが関係してくるので、呼吸器医療だけの問題ではなくなってきています。

 高齢者の増加で、介護が必要な方や認知機能が低下している方への対応の難しさが浮かび上がってきています。例えば、治療や生命の維持のために必要な点滴の針を自ら抜いてしまう人もいます。そうした患者さんにも丁寧に向き合っていきたいと思いつつ、一方で医療者の負担過多も問題になっている。2025年に向けて、解決していかなければならない課題です。

 「終末期医療」も切り離せません。患者さん自身の意思や自然な経過を尊重しながら終末期の治療をどのように進めていけば良いのか。患者さん本人の意思が確認できない場合には、ご家族とも話し合いながら、医師、看護師、リハビリスタッフやケースワーカーが協力して、柔軟に対応することがますます求められていると考えています。

 われわれの病院では、患者さんを総合的に診る視点を大事にしています。検査や診断を速やかに実施することで患者の負担軽減を目指し、必要があれば専門診療科や高度急性期病院へ紹介。それが、地域の医療機関として、重要な役割だと思っています。

 また、当院を含む民医連の病院では、無料低額診療を実施しています。社会保障制度についても説明しながら、必要な人に必要な医療を届けられるよう、努力しています。

◎「総合診療専門研修プログラム」スタート

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 2018年4月、新専門医制度がスタートします。兵庫県民医連では、県内の公立病院とも連携して「総合診療専門研修プログラム」と称する4年間の研修コースを開始します。

 同プログラムでは尼崎、神戸の2コースを用意。当院は神戸コースの主病院2カ所のうちの1カ所として、1年目の前半(18年4月〜9月)、「総合医療専門研修Ⅱ」を担当します。

 私たちのプログラムは、4年間の研修後、中小病院や診療所で質の高い医療ができることを目指しています。救急、外来、入院、リハビリテーション、緩和医療、訪問診療と一通り経験。また、周辺の医療・保健・福祉施設と連携して、患者さんをサポートしていく方法も、実践的に学ぶことができます。

 具体的な研修スケジュールは、本人の希望を考慮して組んでいく考えです。この病院で一緒にやりたいと思う方に来てもらいたい。患者さんの幸せを追求したいと強く願い、支えることができる医師を養成していきたいと思います。

神戸医療生活協同組合 神戸協同病院
神戸市長田区久保町2-4-7
TEL:078-641-6211(代表)
http://kobekyodo-hp.jp/


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