大津赤十字病院高度救命救急センター 石川 浩三 院長/センター長

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大事なのは地域とひとつになること

【いしかわ・こうぞう】 1977 京都大学医学部卒業 同形成外科入局 1988 同助手関西医科大学形成外科講師 1990 京都大学形成外科講師 1992 大津赤十字病院形成外科部長 2007 同副院長 2014同院長 同高度救命救急センター長

 2013年に高度救命救急センターの指定を受けた大津赤十字病院。救命救急センターでは、24時間重篤な患者の受け入れ対応が可能であり、応需率は99%を誇る。

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◎切断指再接着術に24時間365日対応

 1982年に救命救急センターを開設。さらに広範囲熱傷や四肢切断、急性中毒などの重症患者に24時間体制で対応することを目的として、2013年に高度救命救急センターの指定を受けました。

 指定を受ける前から当院では24時間365日体制で切断指の患者を受け入れ、再接合と機能再建術を施術してきました。35年ほど前に滋賀県で初めて切断指の再接着を行ったのも当院で、手外科が専門の私も整形外科の一医員として手術に携わりました。

 1992年に形成外科部長として着任後は、手・足外科を診る形成外科と整形外科の診療科の連携を強化し、切断指の患者を24時間365日受け入れる体制を構築しました。全国的にもこういった病院は少なく、当院の強みの一つと言えます。

 病床数は滋賀県下で最多の796床。救急車の搬送件数は年間約7000件で、大津市消防局管内の約4割を受け入れています。救急要請を受けて断ることはほとんどありません。

 滋賀県では当院のほか、長浜赤十字病院(長浜市)、済生会滋賀県病院(栗東市)、近江八幡総合医療センター(近江八幡市)と四つの病院が救命救急センターを持っています。どこも応需率は95%を超えており、受け入れ病院の決定までに要する時間は短く、救急医療に熱心に取り組んでいます。

◎よりよい災害医療体制の構築を目指して

 滋賀県内に10ある災害拠点病院の中で中心的な役割を担う「基幹災害医療センター(現:基幹災害拠点病院)」の指定を1997年に受けました。

 年に1度の「滋賀県災害医療体制連絡協議会」では、各災害拠点病院の災害担当者、DMAT、行政の担当者が集まって現状システムの確認・体制の見直しをしています。

 その後開かれる「DMAT部会」では、当院の松原峰生・救急部長が中心となり、滋賀県DMATの体制について課題やアイデアを出し合い討議します。どの病院も士気が高く、これらの会合は各病院の災害医療に対する意識の底上げにつながっています。

 DMATが365日、常に緊張感を持って災害発生に備えて待機するのは容易ではありません。そこで当院を含む災害拠点病院を2病院ずつ組み合わせて、それぞれ毎月当番で、災害発生時に第一班として出動できる体制を作りました。病院の組み合わせは病院の規模、DMATの数といった総合的なバランスを見て、DMAT部会で調整します。

 DMATは通常1チーム4人で編成されますが、当院では医師10人、看護師12人、業務調整員8人と余裕を持った人数で5チーム作っています。出動時に構成員の勤務状況などを考慮し、組み合わせに融通が利くようにするためです。

◎院内における救急災害医療体制

 医師・看護師・事務・メディカルスタッフにより編成された7人1チームの赤十字救護班が四つあります。定期的に開催される救護斑を対象とした研修会では、組織体制に関する講義のほか、救護班役と傷病者役に分かれての実技訓練を実施します。座学では身に付けることができない傷病者のこころのケア、緊急度・重症度に応じて治療の優先順位を決めるためのトリアージ、それに用いるトリアージタッグの記録および装着の仕方などを、実技訓練を通して体で覚えていきます。

 救護班は1年ごとに斑員を入れ替えます。救護班員以外にも熟練者が大勢いるため、東日本大震災など大規模災害時に既存の救護班で足りなくなった場合は、追加の救護班を作って派遣することもあります。

 血液浄化(透析)センターの機能についても災害時を想定したマニュアルを作成し、災害時も支障なく機能するように訓練しています。

 発災時の統制について、当院には、県の認定を得た「滋賀県災害医療コーディネーター」が10人、日本赤十字社の認定を受けた「日赤災害医療コーディネーター」が8人います。災害時も迅速かつ切れ目のない医療を実践するために、他の機関との調整を図ってかじを取るなど、重要な役割を担っています。

 2017年に原子力災害拠点病院の指定を受けました。滋賀県が隣接する福井県には四つの原子力発電所があります。原子力災害が発生した場合は、長浜赤十字病院が基幹病院となって、同じく指定を受けた滋賀医科大学医学部附属病院と当院の3病院で、汚染の有無に関わらず傷病者を受け入れ、被ばくがある場合には適切な診療を行います。

◎備蓄の見直しこそ綿密に行う

 一般的に「備蓄の目安は3日分」とされています。しかしどういった根拠なのか、今ある備蓄量で足りるのかなど、細かい基準はなかったため、現状把握と見直しを進めてきました。

 その結果、飲料水を供給するための受水槽の最大貯水量は43・9時間分であるのに対し、最小貯水量は29・4時間分。燃料となる重油は最大燃料117時間分に対し、最小燃料は72時間分と、備蓄の一部は常時使用しているため貯蓄量が一定ではなく、日や時間によって大きく差があることが分かりました。

 食料の備蓄は、病床数796床を基準としつつも少し多く見積もって900人分、さらに発災時に400人の入院患者が来ると想定した1300人分で計算することにしました。非常食は1日2食、それを大規模災害発生後約72時間(3日)は、人命救助を優先し、かつ二次災害から身の安全を守るという根拠のもと3日分の7800食分を備蓄しています。

 飲料水や臨床検査薬、医療酸素、医薬品などは、災害時に優先して供給してもらえるように卸業者と協定を結んでいます。

◎見えている課題をいかにクリアしていくか

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 大津市の北に位置する湖西地区は、平地が少なく、地震や水害で山が崩れると道路が遮断され通行できなくなります。山が湖岸に迫った地形のため、湖の港にも土砂が崩れて船をつけることも困難になるでしょう。

 そうなると空路以外で傷病者を搬送することはできなくなります。湖西地区内で医療が完結でき、物資をまかなうことが可能であれば問題ありませんが、そうでない時にどうするか。解決策はいまだ見いだせておらず、滋賀県としても重要な課題です。

 滋賀県が被災した場合、基幹災害拠点病院である当院は、全国から集結するDMATや救護班の活動拠点となります。しかし、当院の建物も山に面しているため土砂崩れが起き、被害を受ける可能性があります。また駐車場も少なく、医療者の待機場所はあまり多くありません。そこで行政と相談し、災害時は滋賀県庁を活動拠点の一つとすることで現在調整をしています。

 年に1度開催する「近畿ブロック赤十字合同災害救護訓練」は、赤十字の職員だけでなく、行政や市民も参加する500〜1000人規模の大規模な合同訓練です。

 救護所の活動や移動式仮設診療所の運営、避難所の巡回のほか、赤十字の活動を支える「赤十字奉仕団」による炊き出しや無線訓練など、その内容は多岐にわたります。

 院内外の活動を通して、あらゆる災害現場に対応できる組織作りをこれからも目指します。

大津赤十字病院
大津市長等1-1-35
TEL:077-522-4131(代表)
https://www.otsu.jrc.or.jp/


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