独立行政法人国立病院機構九州がんセンター 森田 勝 統括診療部長

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がん診療に必要な四つのチーム医療

【もりた・まさる】 1987 九州大学医学部卒業同第二外科入局 1999 米MDアンダーソンがんセンター 2012 九州大学消化器・総合外科診療准教授 2013 九州大学外科分子治療学准教授 2014 九州がんセンター消化器外科部長 2015 同統括診療部長

 手術の侵襲が大きく、難度も高い食道がんを専門とする森田勝・九州がんセンター統括診療部長。実臨床の場で必要に迫られ「チーム医療」を推し進めてきたという。森田部長が掲げる「四つのチーム」を聞く。

ーチーム医療が必要だと思うようになった背景は。

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 食道がんは、治療が難しいがんです。手術が困難で患者の負担も大きく、術後に再発するケースもよくあります。放射線治療、抗がん剤治療も含めて立ち向かわなければならない病気です。

 私は、かねてから「患者に一貫して関わることができる医師でありたい」と思ってきました。だからこそ自分の専門外の方々との「チーム医療」が必要だと思ったのです。

 「医師と医師」の連携で言うと、例えば、食道がんと咽頭がんは「飲酒」「喫煙」というリスク要因が同じ。ですから同時もしくは、どちらかのがんの術後にもう一方のがんが発生するということがあります。頭頸部外科の医師とは一緒に手術をすることも多く、コミュニケーションが必須です。

 10時間という長時間、しかも侵襲が大きな手術になることもあるので、全身管理という意味で麻酔科や循環器の医師とのコミュニケーションも欠かせない。再建や血管吻合には形成外科が関わります。術後の合併症を防ぐための周術期口腔機能管理、つまり歯科医との連携も極めて重要です。

 さらに抗がん剤による「化学療法」、さらに最近では「免疫療法」については腫瘍内科の医師と連携。放射線科医とは、診断から治療に至るまでディスカッションを重ねます。

 同じ職種の「他診療科とのチーム」というだけでも、さまざまな関わりが必要になるのです。

ーほかの「チーム」とは。

 「職場内」「多職種」「地域」です。職場内というのは、私がいる消化管外科で言えば、部長、医長、医師で構成するのが一つのチーム。一つの病棟の看護師で考えると看護師長がいて、副看護師長がいて、看護師がいる。その中で情報を共有し合い、協力し合うことが職場内の連携です。

 当院の看護部門は「パートナーシップ・ナーシング・システム」を導入しています。2人の看護師がペアになり、教育したり、業務を確認し合ったり補完し合ったりする新たな看護方式。それも最小単位の「チーム」と言えるでしょう。

ー「多職種」は、近年、さまざまな場面で言われています。

 2015年、食道がんの患者に関わる医師や看護師、薬剤師などが集まる「食道癌(がん)周術期ワーキング」を立ち上げました。

 ちょうど、さまざまな部署がマニュアルなどを自発的に作り始めていた時期。「管理が難しい周術期をスムーズに乗り越えよう」とみんなが思っていることを感じ、「このタイミングだ」と呼びかけたのです。

 その後、このワーキングが発展する形で、あらゆる手術に対する「周術期管理チーム」ができました。また、「入院支援センター」が院内に開設され、入院が決まった患者に、外来の時点から多職種が介入し、服薬・栄養指導、リハビリなどを行っています。

 「クリティカルパス」も、多職種連携に欠かせないツールです。パスの目的は医療の標準化と、一般的な経過を患者・家族に知ってもらうこと。医療サイドからみると、検査や採血などの指示を簡略化できるという医療の効率化、さらに新人教育にもつながっています。

 ただ、クリティカルパスはできあがったパスだけが意味をもつのではなく、パスを作りこんでいく過程が大事だと言えるでしょう。つまり異なる職種のスタッフが顔を突き合わせ、言いたいことを言いつつも歩み寄り、患者の治療のためにもっとも良いことを見い出す過程こそが、チーム内のコミュニケーションにつながると思います。

 さらに言えば、クリティカルパスで示された経過と異なる状態「バリアンス」が起きた理由を考えることで、自分たちの医療を振り返ることも可能になります。結果的に、医療の質を高めることに、つながるのです。

ー「地域」もチームだと考えているのですね。

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 患者が満足する医療を考えた時、地域との連携は欠かせない。福岡県がん診療連携拠点病院として、がんの地域連携クリティカルパス「わたしのカルテ」の作成にも取り組んできました。

 さらに、3年前からは、医師、がん相談支援センターの看護師などが一緒に地域の医療機関を訪問し、当院についてお伝えしています。

 「がんセンター」のイメージを聞いてみると「がん以外は診ない」「救急はとらない」...。

 しかし、今は良性腫瘍でも診ますし、がんによる腸閉塞や急激な痛みが起きた患者が登録医から紹介された場合、「緊急緩和ケア病床」で受け入れています。レスパイト入院も可能です。「遺伝相談外来」、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の方への予防的卵巣切除も実施している。そういった情報を知っていただくために出向いているのです。

 「がん相談支援センター」を知っていただくことも、大きな狙いです。

 2017年からは社会保険労務士が県の職員「就労支援アドバイザー」として支援センターに常駐し、がんの診断を受けた後、就労を継続するための方法、活用できる社会保険制度などを助言。就労先を探すためのハローワークの出張相談もあります。当院の受診歴に関わらず、相談に乗っていますが、医療者にも、まだあまり知られていないと感じますので今後、広めていきたいと思っています。

 地域の医療機関を訪問した件数は、2015年度が107件、2016年度が143件、今年度がおよそ155件。開業医の先生方との関係が深まることで当センターへの意見、要望を聞くチャンスも増えてくると期待しています。

 当センターは訪問看護を開始し、今後、退院支援に一層力を入れていきます。在宅への流れはますます加速する。その中で、地域にある「チーム」の存在が、患者や家族の安心と信頼を高めるのだと信じています。

独立行政法人国立病院機構九州がんセンター
福岡市南区野多目3-1-1
TEL:092-541-3231(代表)
https://www.ia-nkcc.jp/


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