医療法人財団華林会 村上華林堂病院 菊池 仁志 理事長

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在宅神経難病患者  支援体制を構築

【きくち・ひとし】 1992 久留米大学医学部卒業 1999 九州大学大学院医学研究院修了 2002 米コロンビア大学留学 2006 九州大学神経内科講師 村上華林堂病院 2012 同理事長 2014 九州大学臨床教授

 「病気だけでなく病人をみる」という志を胸に、神経難病患者やがん患者を支える医療法人財団華林会村上華林堂病院。菊池仁志理事長は、レスパイト入院と訪問診療を軸とする「在宅神経難病患者支援システム」を生み出した。患者と家族に寄り添い、支えるこの仕組みは、国が推し進める「地域包括ケアシステム」と一致する。

基本は在宅時々、入院

―神経難病に対して、どのような取り組みを重ねてきましたか。

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 2006年に、当院に赴任して神経内科を立ち上げ、主に筋萎縮性側索硬化症(ALS)など神経難病患者を長期的にサポートする「在宅神経難病患者支援システム」の構築に取り組み始めました。

 私は神経難病が専門で、九州大学医学部神経内科では福岡県重症神経難病ネットワーク事業に関わっていました。

 そのころの神経難病の患者は長期入院が基本。一方で患者を受け入れていた国立療養所など公的な施設が統廃合の対象となったり、病床の規模を縮小したりする傾向にありました。

 重症患者が集中することで、受け入れを続けている医療機関に負担がかかり、医療従事者も疲弊。患者からの在宅療養を望む声もありました。

 そこで、患者は基本在宅で過ごし、時々入院する方法を原則とし、在宅療養する難病患者を支えるシステムを考え、実践に移したのです。

 2006年、療養病床36床を、神経難病病棟として「障害者施設等一般病棟」に変更。2007年には在宅診療部を設立し、神経内科専門医による訪問診療もスタートさせました。

―具体的なスケジュールを教えてください。

 ALSの場合は、2週間〜1カ月入院し、1〜2カ月の在宅療養。その繰り返しです。病状の進行に合わせて、入院期間は変わります。

 在宅で過ごしている間は、訪問診療と往診で対応。入院時はリハビリや医療処置によって、機能を維持したり、若干回復させたり、薬の調整などもしています。急変時の入院にも対応します。最終的には、病院で亡くなるか、自宅での看取(みと)りか、というところまで伴走していきます。

 支援システムを整備した目的の一つに、患者家族のサポートがあります。患者さんが入院しているときは介護からしばし解放され、リフレッシュできる期間です。私たちから「入院中は病院に来なくていい」と伝えることもあります。入院は「レスパイト」のためでもある。そのことを、理解していただくようにしています。

 また、入退院のスケジュールがある程度決まっているので、介護している家族が、「次の入院まで頑張ろう」と思うことができるという利点もあります。

 病院にとっても入退院をスケジューリングできるというのは大きなメリットがあります。「重症患者が一時的に集中する」といった状況を回避できますし、病床を有効に活用することで従来より多くの患者を診ることができます。

 2007年から2015年までの8年間で、延べ2868回のレスパイト入院を実施。1カ月の平均利用者は29人でした。

「やらなければ」という使命感を胸に

―システム構築で苦労したことはありますか。

 患者や家族の理解を得ることですね。

 それまでは神経難病患者は長期入院が当たり前だったので、患者や家族からは「1度退院してしまったら2度と入院できないのでは」「入院したら病院から出られないのでは」と心配されることが多くありました。

 家族からすれば、入院していれば不安も負担も少ない。「なぜ自宅に帰すのか」と詰め寄られたこともありましたね。患者・家族と病院で、"シェア"するという、考えを理解していただくには、時間が必要でした。

 このシステムが軌道に乗るまでは、病院スタッフも不安だったと思います。病院にとっては、「チーム医療」も初めての試みだったからです。

 アメリカのコロンビア大学に留学していたころ、現地ではすでに、メディカルスタッフと連携した難病支援のためのチーム医療は一般的なものでした。しかし、日本ではほとんど取り組まれていなかった。だからこそ、やらなければいけないという使命感もありました。

 現在、当院では、主治医、在宅担当医、リハビリスタッフ、臨床心理士、栄養士、ケアマネジャー、訪問診療医、訪問看護師などで在宅患者さんを支える充実したチーム体制を取り、対症療法、リハビリテーションを中心とした診療と、患者家族を含む心理サポートを提供しています。

 システムの中心となるのは、病棟の看護師長と医療ソーシャルワーカー、在宅難病コーディネーターの3者です。

 医師ももちろん関わりますが、基本的な日々のケアはメディカルスタッフが自分たちで考えながら動いています。「この人ならできる」というスタッフに権限をすべて渡す。方向性だけ伝えて、後は任せるようにしています。

 例えば、リハビリスタッフは患者さんの自宅を訪問し、間取りなどを調査して、日常生活を送るために必要なリハビリを考え、実施しています。スタッフにとっても目標がはっきりと定まるので、やる気につながっているようです。

長期の関わりでお互いに理解し合う

―課題があるとすれば、何でしょう。

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 やはり、介護をする家族の高齢化や、健康状態の悪化です。ご家族が先に倒れてしまうケースもあります。その場合は在宅療養ができなくなるため、残された期間がある程度長い場合は、長期療養が可能な県内の他の病院に入院していただいています。

 ALSに限れば、終末期に人工呼吸器を着けるか、着けた後も在宅で介護できるかという選択を迫られます。選ぶのは患者さん本人ですが、家族の思いが患者さんの意思と一致するとは限らない。難しい問題です。

 当院では大学病院などの基幹施設でALSだと診断を受けた患者を紹介していただくことが多くなっています。

 大事なのは症状が軽くても、できるだけ初期から定期的に来院していただくこと。計画的に診療し、レスパイト入院を繰り返すことで患者さんのプロセスが見え、コミュニケーションも密に取れるので、サポートがしやすいのです。難しい選択を迫られたときも、より良い対処ができると感じています。

 当院は福岡市西区にある全160床の総合病院で、内科、外科、眼科、整形外科などを有しています。当然、神経難病以外の患者さんも多く受け入れ、緩和ケア病棟もあります。

 5年前、病院の正面に、サービス付き高齢者住宅を新設しました。病院のベッドも自宅のベッドも、サ高住のベッドも「病床」とみなすという考え方は、神経難病に限りません。構築が進む地域包括ケアシステムにも当てはまると思います。

 今、厚生労働省の案件で、同省の研究班員を務め、日本神経学会の難病医療体制セクションのコアメンバーとして活動。当院の取り組みについても、各地で講演をしています。この方法が少しずつでも広まり、それぞれの地域に合った包括ケアシステムを作り上げていく際の参考にしてもらえれば、という思いでいます。

医療法人財団華林会村上華林堂病院
福岡市西区戸切2-14-45
TEL:092-811-3331
http://www.karindoh.or.jp/


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