大分大学医学部救急医学講座 重光 修 教授

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最高のパフォーマンスを連鎖させていく

【しげみつ・おさむ】 1982 徳島大学医学部卒業 1989 大分医科大学(現:大分大学医学部)外科学講座第2助手 1995 同附属病院救急部助教授 1999 米ハワイ大学留学 2001 大分医科大学医学部救急医学講座教授 2013 大分大学医学部附属病院高度救命救急センター副センター長 2015 同センター長(~2017年6月)

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◎命を救えるのは医療者だけではない

 大分と福岡の県境付近で韓国人旅行者が乗ったマイクロバスが事故を起こし8人が重症外傷を負ったことがありました。大分大学、久留米大学、佐賀大学のドクターヘリが現場に駆けつけ各大学病院に分散して搬送。全員が助かり、後日、帰国することができました。

 ヘリやドクターカーを活用し、医師が現地で早期に診療。医療機関に情報を伝達して受け入れの準備を整え、患者が到着したらすぐさま治療を開始する。こうした仕組みの整備や救命救急センターの増加などによって、以前なら助けることが難しかった症例も救える確率が上昇しています。

 近年の救命救急医療における転機の一つは2010年版「心肺蘇生法ガイドライン」でしょう。一般市民による心肺停止を判断する方法や蘇生開始の手順などを見直し、できるだけ早く「十分な強さと回数の連続した胸骨圧迫」を開始することの重要性を強調。119番通報の際の指導や啓発活動などが積極的に展開されたのです。

 ガイドラインで新たに標準化された心肺蘇生のポイントは「途切れずに胸骨圧迫を実施する」ことです。心臓や脳の機能低下を防ぎ、AED(自動体外式除細動器)の電気ショックの成功率も高まるとされています。救命救急のシステムは医療者だけが取り組むのではなく、市民の協力を得て社会的に根付かせることが欠かせないのです。

 自動車が大破してしまうような大事故であっても、エアバッグなどのおかげで乗員に目立つ外傷がない場合があります。ところが体内では、臓器の損傷など深刻なダメージを受けている。事故の直後は異常が見られないが、じわじわと症状が進行して、最悪の場合は後日亡くなってしまうこともある「高エネルギー外傷」です。

 「外傷初期診療ガイドライン」では、車外に放り出されたり、自動車に高度な変形が見られる場合、高エネルギー外傷として対応。救命救急センターに搬送するとされています。これまで見逃されていた外傷も、医療者や救急隊が指針を共有して対処することで死亡率の低下につながっています。

◎今後の高度化は「組織化」がカギ

 現在、課題として高齢者に対する救急医療のあり方がクローズアップされています。当院の救命救急センターの入院患者もほとんどが高齢者。主に70〜80代です。

 高齢の患者さんは複数の基礎疾患があり、軽度の外傷であっても重症化しやすい。治療の効果もなかなか思うように得られない。救命救急センターの平均的な入院期間は2週間ですが、さらに何週間も滞在する方も少なくありません。

 終末期医療との関わりも考えていかなければならない問題です。寝たきり状態にある方が心肺停止になったとき、蘇生処置を施すべきか。本人に「蘇生処置を望まない」という意思があり、その希望をかかりつけ医に確認できた場合は処置を中止すべきではないか。

 医療者の意見はそんな流れに傾きつつありますが、現在は明確な指針がないために、現場は非常に難しい判断を迫られます。法の整備を望む声が高まっています。

 例えば患者さんに終末期医療に対する要望や既往歴、服用している薬などを記録したカードを所持してもらい、万が一のときにはすぐに確認できる。そんな仕組みがあれば問題の解決に役立つでしょう。

 すでに一部の地域では同様の試みが始まっています。県や九州といった広域的なシステムとして展開できないだろうかと考えており、提言として取りまとめていきたいと思っています。

 欧米の主要な急性期病院において、ERやICU、外傷センターといった機能は医療の中心であり、また経営や教育においても重要な存在として位置付けられています。

 米国のERに勤務する救急医は4万2000人ほどいると言われ、主要な専門医の一つです。各診療科のドクターやさまざまな医療従事者、救急隊とともに心肺蘇生、重症外傷、急性冠症候群、急性脳卒中など、患者の状態に応じて多様な救急医療チームが迅速に動き出します。

 日本では、まだ米国ほど組織化されていないと感じています。国内の救急科専門医は4584人(2017年6月)。救命救急システムのさらなる高度化を図るには十分とは言えず、特に地方では専門医が不足している状況です。

 救命救急医療に対する若い医師たちの関心は高いと思います。人間の生命を左右する場に直接的に関わり、さまざまな診療科と力を合わせて命を救う│。そのやりがいを伝え、救急科専門医を志す人材の増加に貢献できればと考えています。

◎「そのとき」に備え力を高めていきたい

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 大分県の救命救急センターは4施設。由布市に高度救命救急センターである大分大学、大分市にアルメイダ病院と大分県立病院、別府市に新別府病院があります。大分県は沿岸部に高度医療を提供する施設が集まっているのです。

 1996年、救急医療の発展を目的に大分救急医学会が設立。南海トラフ地震をはじめとする自然災害への対応についても検討を重ねています。

 南海トラフ地震が発生すれば、一部の医療機関や大分空港など、重要な施設が浸水してしまい機能しなくなる危険性が指摘されています。

 広範囲に津波が押し寄せ、大分県よりも宮崎県の被害が大きいというシミュレーションもあります。県外からの救援が分散し、多くの支援が期待できない状況に陥る可能性があります。

 標高が高い大分大学は津波の影響を免れ、建物の被害も最小限で済むでしょう。災害時の拠点として、大部分は重症患者の受け入れや遠隔搬送の役割を果たしていくことになると思います。

 よく「救命の連鎖」と言いますが、救急に関わる者それぞれが最高のパフォーマンスを発揮しバトンをつないでいくことで、助かる命を増やすことができます。私たちが普段取り組んでいる診療の質を高めておくことが、すなわち有事の備えでもあるはずです。

大分大学医学部救急医学講座
大分県由布市挾間町医大ケ丘1-1
TEL:097-549-4411(代表)
http://www.med.oita-u.ac.jp/ed/


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