独立行政法人国立病院機構小倉医療センター  澄井 俊彦 院長

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今秋、新棟開設!「変貌の年」から一歩前へ

【すみい・としひこ】 1980 九州大学医学部卒業 1982 九州大学医学部附属病院医員(第三内科) 1994 九州医療センター消化器科 2000 九州がんセンター消化器内科医長 2007 小倉医療センター副院長 2015 同院長

 2017年を「変貌の年だった」と振り返った小倉医療センターの澄井俊彦院長。変わったこと、変わらないこと、それぞれを追った。

◎「新」が続々と

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 2017年2月、5階の急性期病棟55床を地域包括ケア病棟に転換しました。

 背景にあったのは、国が掲げる在院日数短縮と在宅移行の方針に沿った医療を行うには、急性期の病棟だけでは、地域のニーズに十分に応えきれないという考えでした。そこで、入院でのサポートを継続できる体制を整備したのです。

 地域包括ケア病棟ができたことは、若手医師の教育面やスタッフの認識にも良い影響を及ぼすと考えています。

 今、この病院の医師や看護師が学び、実践しているのは、ほとんどが急性期医療です。当院で治療を受けた患者がその後、どのような経過をたどるのか、どんなケアやサポートが必要になっていくのかといったことを考えたり知ったりする機会はそれほど多くありません。

 地域包括ケア病棟では、急性期の治療を終えた患者のポストアキュートで「その後」を実際に見ることができます。在宅で過ごす患者さんを一時的に受け入れるサブアキュートの役割も果たせます。

 すべての流れを知った上で取り組む急性期医療は、それまでのものとは格段に違ってくるはずです。自分たちが今、取り組んでいる仕事が、その先にどんな影響を与えるのかを常に意識するきっかけになればと期待しています。

 そのほか、2017年3月には、先進医療である「早期子宮頸がんに対する腹腔鏡下広汎性子宮全摘術」の実施施設として認められ、手術を開始しました。

 今年の秋には、新外来管理診療棟が完成する予定です。ここには、一般検査・放射線部門と管理部門の機能を集約するだけでなく、精神科病棟も設けます。

 現状は50床の「閉鎖病棟」で、建物も古く暗い印象ですが、新たな病棟では半分を患者や面会者が自由に出入りできる構造の「開放病棟」にする予定です。

◎変わらぬ三つの強み

 当院はがん、精神疾患、成育医療、肝疾患、内分泌代謝疾患、骨・運動器の六つの領域を担当。中でも、「がん」「精神疾患」「成育医療」が診療の柱で、その方針は今後も変わりません。

 がんの診療で特徴的なのは、外来に「がん総合診療科」を設置していること。診断時から終末期に至るまで、すべての時期の患者さんの、セカンドオピニオンや治療相談などに応じます。

 緩和ケアチームを立ち上げ、がん専門相談員も配備するなど、治療以外の部分でも、患者を支える体制を整えてきました。

 消化器系や肺のがんの治療は、内科、外科、放射線科が一体となって方針を定め、進めます。白血病や悪性リンパ腫、乳がん、子宮や卵巣のがんは、それぞれ担当科が中心となって診療します。新しい技術も積極的に導入しています。

 例えば、産科・婦人科には、遺伝性乳がん・卵巣がん症候群などの検査を実施し、相談に応じる「遺伝カウンセリング外来」を設置し、腹腔鏡下での卵管・卵巣の予防的切除にも取り組んでいます。

 当院は、精神疾患がある患者さんの内科または外科的診療ができる数少ない医療機関の一つです。高齢化によって、認知症と身体疾患が併存する人も増加します。病棟も新しくなるので紹介患者数も増えると思います。

 精神科と外科、内科とが密に連携をとりながら、患者さんにとって快適で、安心できる環境を提供し、適切な治療を受けていただくことが、われわれの責務だと考えています。

 また、2009年に地域周産期母子医療センターの認可を受けるなど、成育医療の分野にも力を注いできました。早産や低出生体重児への内科的対応だけでなく、鎖肛や消化管閉塞など小児外科領域にも対応できるのが大きな強みです。

 2011年にはてんかんなど神経疾患を診る「小児神経センター」、翌年には「こども医療センター」と「新生児センター」を開設。小児科病床数は新生児センターのNICU12床・GCU 18床と、一般小児の50床を合わせて、計80床となっています。

 医師は、産婦人科医が14人、小児科医が17人、小児外科医が4人在籍。地元だけでなく、隣接する京築地方(京都郡・築上郡・行橋市・豊前市)の医師会からも信頼を得て多くの患者さんを紹介していただいています。

 緊急性が高い場合には、当院の医師がドクターカーに乗って患者さんがいる産科クリニックに出向き、当院に搬送することもあります。

◎持続のための「一歩」

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 これまでも、急性期病院として、地域での役割を果たしてきた自負があります。それでも、大きな変革を決断した最も大きな理由は、「高齢化」です。

 当院がある小倉南区の、65歳以上の高齢者の割合は、26.9%(2017年3月末現在)。全国平均よりは低いものの、街中で高齢者の姿が多く見受けられます。

 私がこれまで勤務してきた九州医療センターや九州がんセンターがある福岡市の、現在の高齢化率は20.9%(同)。赴任してきたのは10年ほど前とはいえ、それまで自分が見てきた景色と、住んでいる人の年代や雰囲気が大きく違うことに気がつき、「医療も高齢化という時代の流れに沿っていく必要がある」と強く認識したのです。

 ほかにも、「診療報酬・介護報酬の同時改定」をはじめ、「地域医療構想」「働き方改革」など、今後、病院運営を難しくさせると考えられる要素はいくつもあります。その中で、求められる医療の提供を持続できる病院であるためには、今ある特色をさらに充実させ、パワーアップさせる必要があると考えています。

 2018年は、言うならば「始まりの年」。新外来管理診療棟の完成をきっかけに、当院のテーマである「この病院があるから、この街に住みたいと思われるような病院」になるべく、さらに前へ進みたい。職員全員で、まずは一歩、踏み出したいと思います。

独立行政法人国立病院機構小倉医療センター
福岡県北九州市小倉南区春ケ丘10-1
TEL:093-921-8881
http://www.kokura-hp.jp/


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