高知医療センター 救命救急センター 西田 武司 センター長

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高知だから学べる医療 救命救急を考える

【にしだ・たけし】 2000 福岡大学医学部卒業 2014 福岡大学病院救命救急センター助教 2016 高知医療センター救命救急センター長 2017 福岡大学大学院医学研究科病態機能系専攻博士課程卒業

 高知県内の救急医療体制の「要」とも言える高知医療センター救命救急センター。西田武司センター長は、高齢化と過疎化が進む地域を守るため、スタッフとともに奮闘している。

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◎高い高齢化率

 現在、高知県内には三つの救命救急センターがあります。高知赤十字病院、近森病院、そしてここ、高知医療センターです。

 特徴的なのは、この三つの施設すべてが中央医療圏の高知市内に存在しているということ。背景にあるのは、高知県人口の7割近くが中央医療圏に集中しているという現状です。

 本来であれば救命救急センターは第3次救急医療ですので、ある程度特化した救急医療を行いたいところです。しかし、地域の1次・2次救急を担う病院が高齢化や次世代の人材不足によって、閉鎖されてしまったり救急の患者を受け入れられなくなったりしていることもあり、実質1次・2次・3次すべてを担っている状態です。

 こういった傾向は全国どこでも見られると思いますが、高知県の場合は高齢化率が37.8%(2月1日現在)と特に進んでいることもあり、傾向がより顕著であると感じています。

◎期待される新ドクヘリ

 2017年12月にドクターヘリが新しい機体になりました。

 それまでのドクターヘリは十数年使われていましたので、機能面から更新の要望が、私が就任する以前から出ていたようです。

 新しい機体は以前のものに比べて機内が1.2倍ほど広くなりました。全国的に見て付き添いの方を乗せられるヘリは少ないのですが、高知では以前から同乗できる座席があり、新機体でも確保することができました。

 家族の同意がないと治療が開始できない場合もあり、家族が病院に到着するまで何時間もかかる場合や、高齢で車が運転できない場合などには、ヘリに同乗して病院へ付き添っていただいたりしています。

 高知県は高齢者が多い上に、平地が少なく東西に長い地形から移動距離が長く、道路も整備途上です。家族に乗っていただく頻度が他県に比べて高いかもしれませんね。

 新機体の性能面では、1回の給油での最大飛行距離が700kmと、前機体より150kmほど長く飛べるようになりました。時間にすると、連続飛行時間は2時間ほどでしょうか。

 機内の密閉率も上がりました。以前はよく隙間風が吹いていたのですが、新機体ではそれがほとんどなくなり、快適になりましたね。

 外観でいえば、フロントの窓が大きくなり、キャビンからの視野が広くなったのも特徴です。新機体運航前に開いた「一般お披露目会」には、大勢の方に見学に来ていただきました。

 ドクターヘリの出動件数は2015年度が748件、2016年度は806件。月平均で60〜70件ほどです。ドクターヘリのほかに、ドクターカーFMRCもあり、こちらの年間出動数は年150件でした。

 どちらも要請があって実際に出動できた件数ですので、出動要請自体はもっと多いということになります。多い時には1日に6、7件もの要請が入ることもあり、ドクターヘリだけで間に合わない場合には、消防や警察のヘリにも協力を要請し、出動してもらうこともあります。

 災害時に備えてDMAT専用車を所有。今回、災害時にも使用可能な救急車を導入しました。DMAT専用車には医師やスタッフが乗るのですが、傷病者を乗せるスペースがないため、搬送用としては使えません。救急車と一緒に出動することで、傷病者の搬送にも対応できるようになります。

◎県全体で地震に備える

 南海トラフ巨大地震の被害は、高知県の場合、地震被害だけでなく、甚大な津波被害も想定されます。

 当センターも津波の最大被害想定では、1階が浸かってしまうという予測がでています。そうなると移動が困難になり、身動きがとれません。外部からの救助・救出も、支援の人の到着に数日かかるだろうと言われています。

 実際には、「傷病者の受け入れをどうするか」などの議論の前に、まずはわれわれがどうやって生き残るか、ということが重要事項となってきます。

 1週間、またはそれ以上の備蓄をするよう県の指導があり、現状で設備などに問題がなければ、1週間の稼働が可能な見込みとなってはいます。しかし、実際の傷病者がどのくらいになるのか正確な予測はできません。

 この高知医療センターは、南海トラフ巨大地震を想定して建てられていますので、ある程度の備えはできています。しかし、2005年の開院時以降、備えてきた備蓄用品が使用期限を迎えたり、他の物品と合わなくなったりもします。そのため定期的に備蓄物品をチェックし入れ替えなどを行わなければなりません。

 ただ、いくら備蓄を充実させても、南海トラフクラスの大規模災害となると、もはや一つの病院だけでは対策に限界があります。県全体で組織をつくり、他の医療機関と連携すること、薬剤や医療資材などの調達のためのシステムを構築することなどが大きな課題です。

 今は県に協力を要請したり、他の医療機関や企業などへ提携をお願いしたりしています。一つずつ進めていくことしかできませんが、こうして準備を進めていくことが何より重要だと思います。

◎在宅医への過程

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 高齢化が全国一早いと言われている高知県。人口減少に対して、どんな医療サービスを提供していくか、というのはまさに近々の課題であると思います。

 とはいえ、形は変えながらも救急は必ず必要な医療と言えます。救急のスタイルそのものは変わらないでしょう。

 今後はおそらく病気の内容が変わってきます。高齢者特有の病気であったり、複数の病気を同時に発症したりという事例が増えていますし、今後さらに増加することが考えられます。

 対応していくには、やはり、これまでの救急の知識だけでは難しい。今まで以上に、他の専門科の先生方と協力をしていかないといけません。

 人員不足の問題もあります。高知で医師として勤務を希望する方は、期待するほどいないというのが実際のところです。多彩で多くの経験ができるとの期待感から都市部での勤務を希望する傾向にあるようです。

 ただ、高知県ならではの医療もあります。例えば高齢者が多いということを逆手に取り、在宅医療や高齢者向けの医療を専門にしたいという方にも、救急の門戸を広げたいと考えています。

 将来、救命救急を専門としなくても、救急で得られる知識は、在宅医療でも生かせることがたくさんあります。実際、救急に高齢者の方も多く運ばれてくるので、ぜひここで研修し、在宅でも応用できる緊急処置や対応を学んでほしい。それによって、在宅で発揮できる知識、技術を蓄えることができるはずです。

 在宅医療を専門とする前に、高知で救急を経験する―。今後は、そういう道筋を作るのも、高知の新しいやり方なのかなと思います。

高知県・高知市病院企業団立 高知医療センター 救命救急センター
高知市池2125-1
TEL:088-837-3000(代表)
http://www.khsc.or.jp/


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