兵庫医科大学 整形外科 吉矢 晋一 教授

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スポーツそして人生長く楽しめるように

【よしや・しんいち】 1979 神戸大学医学部卒業 同大学整形外科研修病院 1984 米クリーブランドクリニック整形外科 1986 神戸大学附属病院整形外科助手 1996 明和病院整形外科部長 2002 神戸大学医学部運動機能学(整形外科)助教授 2005 兵庫医科大学整形外科教授

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◎教育機関であり地域医療の砦

 大学の役割としては学生や研修医をしっかり教育して、世の中のためになる自立した医師にすることが柱。そのためには、先進的な技術や知識を用いて大学ならではの医療に取り組むことが不可欠です。

 専門分野に集中することで発展する大学もある中、当教室は領域全体をカバーしていることが特徴です。上肢は肩、肘、手で各専門のドクターがおり、下肢も股関節、膝、足と同様です。膝は膝で、人工関節など高齢者の手術を扱う部門と、スポーツ外傷の関節鏡手術がメインの部門がある。各分野の教官やスタッフが協力して、第一線の治療に取り組んでいます。

 全体を網羅する理由の一つは、まんべんなくトップレベルの内容が学べる整形外科でありたいから。もう一つは、私学の病院として、合併症が多くて手術できない患者や、手術が複雑すぎるなど地域の病院で治療しきれない事例に対して、最後の砦(とりで)のような存在でありたいからです。

 ですので、手術件数は多く毎月およそ100件、年間1200件ほどに上ります。

 研究面でも、われわれは比較的診療に近い研究が多い。研究機関というよりは、臨床医を育てつつ、地域での責任を果たすというイメージです。

 1年目の研修医には大学でみっちり基礎を身に付けてもらうのも当教室の特徴です。臨床研究に基づいて患者さんを診て、治療の結果はきちんと論文にまとめて学会で発表する。悪い点も良い点も共有しながら発展につなげていくことを大切にしています。

◎プロチームのドクター

 患者数や学会などでの発表が多い領域といえば、私の専門でもある関節外科とスポーツ外科。それに変形矯正といった脊椎の大きな手術、大学以外ではあまり扱わない腫瘍部門が挙げられます。

 スポーツ外科に関しては、Jリーグの「ガンバ大阪」のメディカルスタッフを長年務めています。チームの診療所に1人常勤していて、試合にも帯同。内科的問題の窓口にもなります。

 ラグビートップリーグの「近鉄ライナーズ」もグループでサポートしており、系列病院の「ささやま医療センター」の医師が責任者で、私もチームドクターの一人です。

 また、昔から個人的に関西学院大学のアメリカンフットボール部のチームドクターをしていたのをきっかけに、現在も継続してグループで担っています。阪神地区は高校・大学スポーツが盛んですし、小学生や社会人の選手も多い。私自身の専門分野は膝ですが、足、股関節、脊椎と患者さんは多いですね。

◎スポーツ医療の現場で

 オリンピックレベルのトップ選手に対する医学的サポートはここ10〜20年ほどで充実し、それに伴い成績も上がってきています。

 ナショナルトレーニングセンターの隣には国立スポーツ科学センター(JISS)がありますし、大会となるとサポートセンターに医師が常勤するなど、環境は向上しています。

 一方で、一般的な学生スポーツの選手をどう支援するかについては、課題が多いと感じています。サポートが充実しているとされる大学アメフトでも、関西1部リーグに在籍しながら固定のチームドクターがいないところもある。2部、高校は言うに及ばず、他のスポーツはなおさらでしょう。

 アメリカだとメジャー大学はどこもチームドクターやトレーナーを置いています。アスレチックトレーナーは準医療職として社会的な立場もある。高校にも配置されています。

 日本でも、メダルを取るための医学サポートだけでなく、圧倒的多数の一般選手を支援するために予算や人材を投入するという意識が必要でしょう。実際、ケガで困った経験のある選手は多い。「医療機関に行くと練習や競技をやめろと言われるから」と整骨院などに通い、診断がつかないまま適切な治療が受けられず悪化させてしまうケースもあります。

 指導者はチームを強化して学生の就職や進学を有利にしたり、学校の知名度を上げたりといった仕事が求められます。故障した選手に見切りをつける場合もある。しかし、そこに医学的なサポートが入っていれば違ってきます。この選手はこの期間、こんな治療をすると復帰できるという判断は、監督だけでなくチームドクターの役割でもあります。

 スポーツ医療を取り巻く環境を向上させるにはどうすればいいのか。スポーツ庁もできたことですし、われわれ医師もスポーツ医学系の学会を通じて政治的、社会的に訴えていく努力が必要だと思っています。2020年に向かって、学生選手がサポートを得ながら安心してスポーツに打ち込める。そんな環境づくりが進むことを期待します。

◎スポーツが高齢者の生きがいに

 高齢者のスポーツ人口も増えています。今後は、運動の注意点などを内科的、整形外科的に確認するメディカルチェックの取り組みが必要だと思います。

 近年、日常生活には困らないがスポーツを続けるために手術したいという患者さんが増えています。登山やテニス、スキーなどを本格的にする60代〜70代です。そんな中、脚光を浴びているのが膝の骨切り術です。

 半世紀前からある、骨を切って膝の変形を治すこの手術は人工関節のほうが手っ取り早いと、しばらく影を潜めていたのですが、「自分の膝」で運動できるとあって、最近見直されてきました。全国の中でもうちは先進的に取り組んでいます。

 超高齢社会を迎え、健康寿命をどう延ばすかが課題です。最後まで日常生活を送れるようサポートするのと同時に、高齢者がスポーツをできるだけ長く続けていけるよう支援するのも、手術という強力な手段を使えるわれわれの使命だと考えます。

◎関節鏡手術の将来

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 今は人工関節以外の関節手術の多くで関節鏡を用いています。低侵襲であることはもちろん、より正確に施術できるというメリットも大きい。 膝では靭帯や半月板の損傷が一番の治療対象で、手術の目的はスポーツへの復帰です。手法はかなり確立し、9割が復帰できるようになってきています。

 靭帯のうち9割は前十字靭帯の手術。サッカーやラグビーの全日本クラスの選手で復帰した人も複数います。

 半月板は靭帯よりもさらに手術数が多い。昔は切除が多かったのですが、老化現象が早まったり水がたまったりすることが問題になり、ここ5年ほどで縫って治す治療にシフトしました。スポーツ外傷に特化した施設ならではの治療でしょう。

 関節鏡の手術は、ここ20年ほどで見違えるような発展を遂げてきました。ここから先は、完成品をより洗練させていく段階です。

 一つの方法は、幹細胞や成長因子を利用した再生医療の導入。もう一つは、ナビゲーションシステムなどのコンピューター支援やロボット手術。すでに人工関節や靭帯再建には部分的に使われており、人間の経験や勘に頼るより正確にできるのがメリットです。腹腔鏡ではだいぶ進んでいますが、関節鏡でも今後発展していくでしょう。

 これらを取り入れつつ、学習意欲を高めるような教育環境を充実させるのも大学の責任です。各々で目標を見出し、前進していける人材を育てることに力を注ぎたいと思っています。

兵庫医科大学 整形外科
兵庫県西宮市武庫川町1-1
TEL:0798-45-6111(代表)
http://hdc-orth.com/


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