内視鏡検査・治療の最先端を行く
1973 新潟大学医学部卒業同外科教室入局 1985 秋田赤十字病院外科部長 1992 同胃腸センター長 2000 昭和大学医学部教授 2007 上海復旦大学附属華東医院終身名誉教授 2011 医療法人社団進英会特別顧問
1998 川崎医科大学卒業 神戸大学医学部第二内科入局 2001 昭和大学横浜市北部病院消化器センター 2007 神戸大学大学院医学系研究科博士課程卒業 2013 医療法人社団進英会大阪内視鏡クリニック院長
胃や大腸の検査・治療に欠かせない内視鏡。大阪内視鏡クリニックの工藤進英特別顧問は痛みの少ない内視鏡挿入法や拡大内視鏡の開発に取り組み、早期大腸がんの発見に大きな功績を上げてきた。クリニックには現在、近畿圏はもとより、北陸や中国地方など広い地域から患者が訪れている。
◎負担の少ない内視鏡検査
蓮尾直輝院長(以下、蓮尾院長)
患者さんに極力負担をかけない形で最高の内視鏡診断を行い、場合によってはクリニックの中で治療も完結しています。ポリープ切除に入院は必ずしも必要ありません。それを患者さんに知っていただくことで、患者さんの負担軽減や日本全体の医療費削減にもつながると考えています。
来院する方は、40〜50歳が中心。受診のきっかけは便潜血反応で陽性が出た、血便や腹痛といった自覚症状がある、などが多いです。
働いている世代の方が定期検診で来るケースや、家族・親類の方が大腸がんにり患した、ポリープが見つかったということで、一度調べておきたいと受診する方も増加しています。
工藤進英顧問(同、工藤 顧問)
昔は近くの病院に行く人が多かったのですが、現在当クリニックに来る方の6割から7割がインターネットで調べて離れた地域から受診されているのが特徴です。
ある程度の年齢に達したら必ず1回は内視鏡検査を受ける、腸の中がどうなっているかを診てもらう、という予防医学的な傾向も強くなっています。特に大腸がんは女性のがんの中で死亡率第1位。自覚症状が出る前に検査を受けるようわれわれも勧めています。
◎最先端の軸保持短縮法
工藤顧問
「本クリニックは、患者様のために存在します」「世界最高の医療を提供します」「医療で感動と驚きを与えるよう努力します」「笑顔をモットーに診療します」を理念としています。
この理念を実現させるためには、まず、技術がしっかりしていないといけません。大腸内視鏡は平均5分以内で腸まで入り、問題が見つからなければ検査は短時間で終了。検査は、なるべく麻酔をかけずに行い、早く回復して帰宅していただけるようにしています。
大腸検査では私が考案した「軸保持短縮法」を採用しています。技術は必要ですが、患者さんの痛みを最小限に抑えられる。今、世界でも主流になりつつある方法です。
軸保持短縮法では、腸を折りたたむように短縮して内視鏡をなるべくまっすぐに入れていきます。ただ、1mほどある腸を70cm程度にまで縮めて入れていくのは、かなり難しい。S状結腸と横行結腸の間の一番長い部分をいかに縮めていけるかが、この方法の鍵。腸を縮める場所などに関する技術を伝えていく必要性を感じています。
◎進化する内視鏡と診断技術
工藤顧問
1993年にオリンパスと私たち医師が共同で倍率100倍の拡大内視鏡を作りました。膨大な量のデータを取りながら、途中でさまざまな変更を重ね、完成品へとつなげました。
ただ、100倍の倍率では病理の構造、がんの一つの指標は分かるものの、細胞や核までは見えませんでした。細胞や核が分かれば高い確率で病理と同様に診断できます。そこで、500倍率を目指した超拡大内視鏡「エンドサイト」の開発を進め、今年2月に発売されました。
さらに、病理検査と同じような画像をビッグデータ化し、国立がん研究センターやがん研、東京医科歯科大学、静岡がんセンターと共にデータを集めた上で、人工知能(AI)を用いた自動診断をする機器の開発にも取り組んでいます。
欧米では内視鏡の医師は病理を採る、病理医は診断する、と役割分担がはっきりしています。
そこで、AIで自動診断ができる機器を作れば、すぐに活用されるかもしれないと考えたのです。日本から世界へ輸出できる機器を作り、日本の医療技術の世界への発信と、輸出にも役に立てればと考えています。
◎発見されにくかった陥凹型大腸がん
工藤顧問
腫瘍は、隆起型と平たん型、そして陥凹型と大別して3種類に分かれます。これまでも、食道や胃の早期がんで最も多いのは陥凹型であることは分かっていました。一方、大腸にはポリープが多いため、ポリープからがんになると考えるのが世界の主流であり、大腸には陥凹型はないとされていました。
ポリープは見つかりやすく、ごく一部ががんになっている、あるいは良性のポリープが多い。これに対し、陥凹型は小さいながらすべてががんでできており、非常に発育が早く下に潜っていく、悪性度の高いがんです。
陥凹型がこれまで見逃されがちだったのは、バリウムやCTでの検査では隆起がないと見つからないためです。「引っ込んでいるのが分からない=がんがない」となってしまっていたのです。
小さな陥凹型がんは色の違いで発見するしかなく、内視鏡を使わなければなりません。技術の進展でようやく内視鏡による陥凹型大腸がんの検査が一般化されつつありますが、同時に技術を持った医師を増やしていく必要性も高まっています。
大腸がんは早期の段階で見つければ、ほぼ100%根治できます。大腸癌研究会で議論していますが、2cm以下の小さながんによって亡くなった人のほとんどが陥凹型であるとの新たな見解が示されており、世界でも陥凹型がんに対する意識が高まっています。
◎京都にも内視鏡クリニック開設へ
工藤顧問
日本は内視鏡検査・治療ができる医療機関の分布のバランスが良くないのが現状です。当クリニックには西日本や北陸各地から患者さんが来ています。そこで大阪に次いで京都にも内視鏡クリニックを開設する予定です。
開設場所を京都にした理由はもう一つあります。京都は世界でも有名な日本の観光地。外国人が検査目的で来日し、クリニックで内視鏡検査を受診した上で観光する、いわば医療ツーリズムという特徴も出していければと考えています。
医療法人社団 進英会 大阪内視鏡クリニック
大阪市淀川区宮原1-1-1 新大阪阪急ビル7階
TEL:06-6391-0080
http://osaka.endoscopic.jp/