独立行政法人 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター 林 清二 院長

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今秋新病棟完成でさらなる魅力拡大

【はやし・せいじ】 金沢大学教育学部附属高校卒業 1979 大阪大学医学部卒業 1980 大阪府立羽曳野病院(現:大阪はびきの医療センター)1985 国立療養所近畿中央病院内科(現:近畿中央胸部疾患センター)1987 米国立研究所 1989 大阪大学医学部附属病院第三内科 2002 近畿中央胸部疾患センター内科 2010 同院長

 大阪府以外からの患者の受診も多く、肺がんの手術件数は、年間約200例と日本でもトップクラスの実績。2018年秋には新病棟が完成する。林清二院長は「新病棟が完成すれば病院の機能はさらに上がるでしょう」と語る。

◎新病棟建設までの歩み

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 1964年に旧国立療養所大阪厚生園と旧国立大阪療養所が統合し、国立療養所近畿中央病院として発足。結核をはじめとした呼吸器疾患の専門医療機関として、診療を行ってきました。

 約50年前に建てられた当院は、長期の入院を要する結核患者を収容することを想定し、低層階で廊下は狭く、ほとんどの病室が4人部屋。細長い造りで、ナースステーションは病棟の端に位置しており典型的な旧国立療養所の設計です。

 1970年代に新たな抗結核薬が開発され、急速に普及しました。

 近年は、国が公衆衛生の改善と保健所などによる感染症サーベイランスといった対策に力を入れていることもあり、結核の新規り患者数は全国で毎年約5%ずつ減少。入院期間も大幅に短縮しました。しかし結核菌が蔓延する地域の外国人の入国など避けられない要因もあり、なくなることはないでしょう。

 現在は入院する患者の約半数を肺がんが占めています。疾患構造が変化する中で、病室が狭く、人工呼吸器などの機材を病室へ持ち込むことに不便を感じる。重症患者も多いが、ナースステーションが病棟の端にあるため病棟内での異常をスピーディーに把握することが難しい。そんな弊害が出てきました。そこでハードウエアを改善し、さらに医療水準と安全性を向上させることが、今回の建て替えの第一の目的です。

 「国立」と称していますが、建て替えに公費が投入されるわけではなく、新築後は償還が必要となります。呼吸器単科で結核診療を行う当院は、病院運営について決して有利な立場にあるわけではありません。

 国立病院機構内に結核医療を担う病院は50施設ありますが、結核病床の稼働率は平均70%を切っています。結核病床は法律上、他疾患の病床に転用できないため、ほとんどの病院で多くの空床を抱えることになります。しかしながら、診療報酬の引き上げも公費による補てんも期待しにくく、それが病院経営を圧迫しているのが現状で、今後の償還にも大きな負荷となります。

 今回建て替わるのは病棟部門です。その他外来、管理・検査部門、手術部門などは、病院の経営状態を見ながら3〜4期の工程で建て替えを進める予定です。

◎診療の特徴と新たな取り組み

 2008年から呼吸器疾患集中治療室(RCU)が4床稼働しています。重症肺感染症や間質性肺炎の急性増悪など、さまざまな呼吸器疾患が起因となる重症な呼吸不全に、呼吸器内科医、看護師、臨床工学技士、理学療法士などの多職種チームで対応しています。

 従来のように気管挿管する侵襲的人工換気を必要とする方も一定数いますが、高流量で100%に近い高濃度の酸素をマスクを通して鼻から投与する呼吸管理法「ハイフローセラピー」などの新しい治療法も普及してきています。

 また、抵抗力の落ちた患者を周囲の汚染から守る陽圧管理と、排菌したものが周囲に漏れるのを防ぐ陰圧管理の両方ができる病室が1室あり、徹底した感染症の管理を行っています。

 肺がんの患者が約半数を占める中、必然的に需要が高まっているのが「緩和ケア」。呼吸器内科医、心療内科医、薬剤師、がん性疼痛看護や緩和ケアの認定看護師による「支持・緩和療法チーム」が病棟を回り、患者およびその家族に身体的・精神的ケアを提供してきました

 病院によっては病院から地域へ、在宅へと病態に応じて治療を提供する場が変わりますが、当院では高度な医療水準を維持しながらも、一部の患者については終末期の看取(みと)りまで行ってます。

 支持・緩和療法チームの診療を継続しつつ、新病棟では新たに緩和ケア病棟を開設。これまで地域のホスピスに紹介していた終末期の患者を取り込み、さらなる緩和医療の充実を図ります。

 新規の結核患者の減少を見込んで、新病棟では結核病床数が現在の60床から40床に減床します。新たにできる緩和ケア病床21床、一般病床250床と合わせて計311床での稼働を予定しています。

◎呼吸器医療に軸足を置く教育体制

 肺がんの手術をはじめとして、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、稀少疾患など、胸部疾患の専門病院として他の医療機関では難しい症例も数多く受け入れてきました。

 結核については、新規り患者数が減少している今だからこそ、しっかりと若い世代の医師を教育し、結核の知識や治療を受け継いでいかなければならないという責任を感じています。

 結核治療のポイントは「結核かもしれないと思いつくか」という点にあります。喀痰(かくたん)検査をすれば診断はつきます。その検査をするかどうかが肝心なのです。

 見極める力をつけるには、結核の症例を経験する必要があります。肺炎の恐れがあり救急搬送されてきた患者が実は結核だったという場合もあります。診断の遅れは結核の大量感染につながり非常に危険です。

 研修期間中は、呼吸器内科全般の診療を受け持ちますが、研修後も当院に在籍する場合は、自由に自分の興味ある専門分野の臨床や研究に注力することができます。

 私が属する呼吸器内科には現在約35人が属しています。ミーティングの際、各自が参加した学会や研究会の情報を報告し合います。参加するだけで最大35人分の情報を収集できるのは大世帯の当呼吸器内科ならではの魅力と言えるでしょう。

 年間約1000件に上る気管支鏡検査は、5チームに分かれて曜日ごとに交代して行い、業務を効率よく進めることで多くの症例を経験できます。

 また、医師数が多いことで当直業務による一人ひとりの負担軽減にもつながります。論文作成や研究に時間を割くことができるため、呼吸器専門医を目指す医師にとっては非常に良い環境だと思いますよ。

 研究に関して言えば、国立病院機構というネットワークが生かせていると思います。機構内で呼吸器疾患の診療を行う全国143の病院と研究チームを作り、多施設共同で肺がんなどの研究に取り組んでいます。

◎新病棟ができることで期待すること

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 堺市医療圏には中規模以上の病院が多数ありますが、ここ数年の間にどこも建て替えが進む中、当院もやっと建て替えにたどり着くことができました。

 高度な医療水準という中身の魅力に加え、今回の建て替えでハードの魅力も上がります。患者のみでなく、若い医師にも選ばれ、来てもらえる病院作りに今後も取り組んでいきます。

 また、専門性を持ちつつ結核の正しい知識も身に付けた、オールラウンドな呼吸器専門医を育成していきたいと考えています。

独立行政法人 国立病院機構近畿中央胸部疾患センター
大阪府堺市北区長曽根町1180
TEL:072-252-3021(代表)
http://www.hosp.go.jp/~kch/


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