独立行政法人 地域医療機能推進機構 滋賀病院 来見 良誠 院長

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総合力で挑むのは近未来型の地域医療

【くるみ・よしまさ】 1981 滋賀医科大学医学部卒業 1987 同第一外科助手 1988 米ピッツバーグ大学留学 2002 立命館大学理工学部客員教授 2005 滋賀医科大学外科学講座准教授 2011 同総合外科学講座教授 独立行政法人国立病院機構東近江総合医療センター副院長 2015 JCHO滋賀病院院長

 2015年に独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)滋賀病院に着任後、心臓リハビリテーション、もの忘れ外来の開設など、医療ニーズに応じた変革に積極的に取り組んできた。来見良誠院長は「すべての職種に総合力が求められる」と語る。

◎予防から介護まで

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 1953年に総合病院健康保険滋賀病院として50床で開設し、1996年に社会保険滋賀病院に改称。2014年に社会保険病院、厚生年金病院、船員保険病院を運営していた団体が改組し、JCHOが発足。同年、当院もJCHO滋賀病院に移行しました。

 当院は最寄りのJR石山駅まで京都駅から約15分、名神高速道路の大津ICからも車で約10分の距離にあり、遠方からもアクセスしやすい場所に位置しています。

 病院隣接の健康管理センターでは2台のバスによる巡回バス健診を含め年間約3万5000人の健康診断を実施。人間ドックも年間約1500人が受診しています。

 さらに病院には急性期の病床275床に加え地域包括ケア病床50床を備え、在宅への移行をサポート。病院附属の介護老人保健施設もあり、「適切な医療を提供し、自宅や施設など、望む場所に帰す」という責務遂行のため、予防医療、医療、介護をシームレスに提供しています。

 診療面では1969年に、滋賀県下で初めてとなる人工透析室(現在の腎センター)を開設しました。ベッド数53床と滋賀県下で最大規模の施設で血液透析や腹膜透析をするほか、在宅血液透析にも対応しています。

◎地域医療教育研究拠点として

 医師も患者も専門性を求めるようになり、各診療科で専門分化が進みました。これまで1人で行っていた診療に大勢の医師の関与を要するようになり、医師不足が発生。医師としての専門性はもちろん必要ですが、自分の専門領域しか診ることができないのでは、医師不足は解消しません。

 人口過疎地域でも対応していける「総合力のある専門医」を育成することを目的として、2010年、滋賀医科大学で寄附講座「総合外科学講座」「総合内科学講座」が開講。2013年には常置講座になりました。

 2014年に独立行政法人国立病院機構東近江総合医療センター(東近江市)、2015年9月にはJCHO滋賀病院が、滋賀医科大学と「地域医療教育研究拠点に関する協定」を結びました。

 2016年からは、協定を結んだ2病院で滋賀医科大学医学部医学科の5年生を受け入れ、臨床実習を実施しています。

 大学と病院は、文部科学省と厚生労働省とで運営母体が異なり、協定を結ぶのは容易なことではありませんでした。

 しかし協定病院で研修し、病院側の「診療する人材を教育する」、大学側の「学生を教育する」というそれぞれの目的を達成できる仕組みとして地域医療教育研究拠点の協定が実現しました。

 研修では、将来的に人口が増加するが高齢化も進む地域の「都市近郊型地域医療」をJCHO滋賀病院、人口減少が進むとともに高齢者が増加する地域の「遠隔地型地域医療」を東近江総合医療センターで学ぶことができます。

 実習では5年生全員が1人で各診療科を日替わりでローテーションします。毎日違う学生が来るので、同じ内容を繰り返し教えることで教員の労力を抑え、最大限の効果を生み出し長く続けられる仕組みにしています。

◎実践するのは近未来型の地域医療

 2010年に141万1000人いた滋賀県の人口は2025年に139万8000人、2040年には130万9000人まで減少する一方、65歳以上が占める割合は2010年に29万2000人( 20.7%)だったのが、2025年には38万5000人( 27.5%)、2040年には42万9000人( 32.8%)に増加すると推測されています。

 また、2017年に公表された都道府県別の男女の平均寿命が84・7歳で全国1位になった滋賀県。今後も人口が減少する一方で、高齢者数は増加し平均寿命はさらに延びることでしょう。

 高齢になると全身状態が悪くなり、さまざまな疾患が併存するようにもなります。そのため専門領域だけでなく、広い範囲を総合的に診療できるようになることが求められてきます。それこそが近未来型の地域医療です。

◎病院全体で総合力を高める

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 現在高齢者を取り巻く環境は家族、地域、かかりつけ医、病院などそれぞれが正しいと思った医療やサービスを提供しており、そこに本人の意思はないように感じます。

 自分が高齢者の立場になり「何をしてほしいか」を考える仕組みを作ることが、近未来型の医療の実現に向けてやるべき課題であると考えています。

 当院では幅広い世代と時代に適応した病院運営を目指して会議の在り方を見直しました。「幹部会議」「次世代会議」「新世代会議」を創設し、現在病院運営の中核にいる「幹部」だけでなく、10年後の病院運営を担う「次世代」、若い人の感覚を取り入れ時代のずれを調整するために「新世代」と、3世代の意見を取り入れる仕組みを作りました。

 総合力を欠き分業化が進んだ場合、一人が抜けると組織は崩壊してしまいます。しかし総合力を培えば、個々が補い合うことで乗り越えられると考え、2015年に院長として当院に着任後、「総合診療カンファレンス」を始めました。

 毎朝、全診療科の医師が集まり、前日に入院した患者の症例を中心に情報を共有します。全診療科のカンファレンスに参加することができ、効率よく総合診療的な力を身に付けることができます。また毎朝全診療科の医師が顔を合わせることで、診療科同士の垣根が低くなり、医師同士の仲が良くなったように感じます。

 医師だけでなく、職員全員に求められる「総合力」を強化するために、2015年から2030年まで5年ごとの中期目標を策定しました。

 2015〜2020年までの中期目標は「診療体制の適正化」「教育研究体制の機能推進」「地域医療の機能推進」「総合診療の推進」「ベクトルの整流化」の五つ。

 「地域医療の機能推進」では、現行の地域医療に足りないものを見つけて補うことで、新たな医療サービスを展開していくために、地域医療のニーズの抽出や現行地域医療のサービス解析などを行っています。

 職員全員で考えや目指すものを同じ方向に向けるために定めた「ベクトルの整流化」。具体的な取り組みとして当院のパンフレットやポスターに掲載する地図やロゴを統一するために、それらを職員に公募して製作するなどしています。

 総合力を強化して近未来型の地域医療を実践しながら、地域住民にとって満足度の高い専門診療を提供することこそ、私たちが果たすべき役割なのです。

独立行政法人 地域医療機能推進機構滋賀病院
大津市富士見台16-1
TEL:077-537-3101(代表)
https://shiga.jcho.go.jp/


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