全国有床診療所連絡協議会 鹿子生 健一 会長 (医療法人健成会 鹿子生整形外科医院 院長)

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需要高まる有床診療所 基盤整備 着々と

【かこう・けんいち】 1975 九州大学医学部卒業 同整形外科教室学入局 1981 福岡整形外科病院 1985 鹿子生整形外科医院開業

 経営難や後継者不足を理由に減少を続け、7500カ所を切った有床診療所。地域包括ケアシステム構築が進む中、注目が集まっている。ただ、これまで医療政策からは「置き去り」にされてきた。太宰府市で有床診療所を営む鹿子生健一・全国有床診療所連絡協議会長は、行政への提言などを重ね、基盤整備を進めている。

◎福岡での火災が発端見直され始めた「有床診」

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 2013年、福岡市博多区の有床診療所で火災が発生し、患者ら10人が亡くなりました。当初、有床診療所や院長に対するマスコミの論調は厳しいものでした。「スプリンクラーもないような劣悪な環境に、高齢患者を入院させるとは何事だ」と。

 たしかに、良い環境とは言えなかったかもしれません。

 30年前には先進的な医療機器を先んじて導入し、患者を病院よりも短い在院日数で退院させ、病院とそん色ない高度な医療レベルだった有床診療所ですが、病院との「入院基本料」の差の拡大とともに、経営が厳しくなっていました。

 医師が1人のところでは「自分が病気になったら閉鎖するしかない」と設備や機器に投資がしにくくなり、導入できなかったり老朽化したり。火災が起きた診療所のスプリンクラーも例外ではなかったはずです。

 しかし、スプリンクラーを付けていれば解決する問題だったのでしょうか。

 経営難で夜間の勤務職員数は増やせない。スプリンクラーを設置する費用の捻出も難しい。自宅に帰ることができない高齢者や介護ができない家族は患者の入院を希望する。患者を少ない医療者で引き受け、日々忙しく、十分な避難訓練をする余裕もない...。

 私たちは当時、会見を開き、有床診療所が置かれている状況、地域で必死になって果たしている役割について話しました。そして、そんな私たちの訴えを聞くうちに、報道が少しずつ変わっていったのを覚えています。

◎地域の「町医者」存続のために

 有床診療所とは、入院治療ができる医療機関の中で、病床数が19床以下の小規模医療機関です。

 多くの場合1人のドクター、少人数のスタッフで、近隣の方々を診て、必要があれば入院治療を施します。患者家族3世代みんなが通ってくるような医療者と患者との「顔の見える関係」を長年続けてきました。

 30年ほど前、有床診療所が発展する形で、病院へと転換するケースが増加しているのを受け、厚生労働省官僚が「有床診療所の使命は終わった」という趣旨の発言をしたこともありました。

 ただ、超高齢社会の今、地域包括ケアのために有床診療所が果たす役割は大きいと、再び注目が集まっています。高齢者は数日間の下痢で衰弱してしまいます。寝込んでいれば、足腰が立たなくなったり、誤嚥(えん)性肺炎を起こしたりするリスクも高くなります。

 そこで必要になるのが、医療なのです。在宅で過ごす人の風邪や下痢、発熱などによる軽症入院や、看護・介護で家族が疲れたときに患者を一時的に預かるレスパイト、在宅看取(みと)りの後方支援など、すべきことはさまざまです。

 軽装備で、意思決定が早いために小回りが利き、入院のためのベッドもある有床診療所は絶対に必要だと思います。地域に近い「診療所」だからこそ、気軽に頼ってもらえるという利点もあるでしょう。

 有床診療所が存続し、力を十分発揮できる環境を整えることが、協議会会長である私の今、もっとも大切で、急がなければならない仕事だと考えています。

◎「有床診」に明るい未来はあるか

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 2017年8月に全国有床診療所連絡協議会会員2646施設を対象に実施した現状調査では、36.9%、976施設から回答を得ました。医療・介護提供の現状や経営の実態、病床維持の意向などを聞いています。

 「病床はそのまま維持する」が50.0%、「病床は維持したいが無床化するかもしれない」が26.5%など厳しい状況が浮き彫りになる中、インパクトがあったのは「入院患者満足度」の調査結果です。

 医師による診療・治療内容に「非常に満足」「満足」と回答した患者が86.7%、医師以外のスタッフの対応に対しては83.7。施設、食事などの満足度も高い水準でした。

 信頼関係とスムーズなコミュニケーションができていれば、たとえ施設が新しくなくても、患者さんからの満足を得られるという、一つのヒントになった気がします。

 現在、有床診療所をとりまく環境は、少しずつですが上向いてきています。

 2006年の医療法の改正で、有床診療所への48時間を超える入院を制限する「48時間規定」が撤廃されました。

 それに伴い一般病床が医療計画の基準病床の適用となったことで新規開業が制限されてきましたが、2018年4月以降、地域包括ケアシステムの構築に必要な診療所だと認められた場合は、療養病床または一般病床の設置が可能になります。

 また、2014年度の診療報酬改定で「在宅復帰率」が導入された際には、在宅復帰率の計算式の対象退院先から有床診療所が外れていましたが、2016年度からは、在宅復帰機能強化加算を届け出た有床診療所が含まれるようになりました。十分ではありませんが、確かに変わってきているという実感があります。

 病院の集約が進み、中小規模の病院は運営が厳しくなっています。閉鎖を余儀なくされるケースもあるという話も聞きますが、地域の人にとって一つの病院がなくなるというのは大きな問題です。

 せめて有床診療所として残してほしい。「大変そうだから」「経営が成り立たなそうだから」と避けるのではなく、患者さんが喜んでくれるという医者冥利(みょうり)を感じられるこの世界に、飛び込んでほしいと願っています。

 「有床診療所に未来はあるのか」と聞かれたら、私は「ある」と答えます。今、有床診療所を続けている医師の中には、意気軒高な若い方たちもいます。「大変だけれど楽しい」という彼らのがんばりに応えるためにも、魅力的な環境を残すための努力を続けるつもりです。

医療法人健成会鹿子生整形外科医院
福岡県太宰府市五条3-4-14
TEL:092-925-1222
http://www.kako.or.jp/


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