三井造船株式会社 玉野三井病院 磯嶋 浩二 院長

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高齢化進む地域を在宅医療で支える

【いそしま・こうじ】 1983 岡山大学医学部卒業 岡山大学医学部附属病院 1989 愛媛県立中央病院内科医長1991 玉野三井病院 2015 玉野三井病院院長

 三井造船営業部門のひとつとして、造船職員の福利厚生のためにつくられた玉野三井病院。創立から80年、バブルのにぎわいは過ぎ去り、病院を取り巻く環境は大きく変わった。磯嶋浩二院長は、同病院が地域住民にとってのセーフティーネットとして機能するべく、日々奔走している。

―在宅医療に力を入れていますね。

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 訪問診療を中心に、のべ月80軒ほどにうかがっています。担当医師は、私を含めて3人。外部の訪問看護ステーションとも協力して、点滴注射やとう痛管理、麻薬管理などに24時間体制で対応しています。体が不自由で通院困難であることが利用条件で、訪問回数は基本週1回。最大週3回まで利用可能です。緊急往診や自宅での看取(みと)りも行っており、機能強化型在宅療養支援病院として認定されています。

 病院がある岡山県玉野市は造船で栄えた街ですが、不況に伴って人口が減少し、高齢化が進んでいます。高齢者だけの世帯がほとんどという地区もあり、空き家や更地も増加。私が赴任したばかりの頃はにぎわっていた商店街も、今ではシャッター通りになり、寂しい限りです。

 また、インフラ面も脆弱(ぜいじゃく)化しています。昔はバスが結構通っていましたが、だんだん本数が少なくなっています。病院に乗り入れる市の福祉バスや乗り合いタクシーが運行していますが、利用できる方ばかりではありません。かといって、高齢者の車の運転には不安が付きまといます。交通手段がないお年寄りにとっては、通院自体が非常に難しくなっているのです。

 今後は、ますます在宅医療の需要が高まるでしょう。私たちは、高齢者が住みやすい街になるよう、医療面から地域をバックアップしたい。そして、できるだけ人生の最後まで住み慣れた場所で暮らすお手伝いがしたいと考えています。

―いつから訪問診療を本格的に始めたのですか。

 赴任直後に、在宅酸素療法の患者さんを引き継いだときからなので、もう27年になります。患者さんは90代。病院までの道のりに坂があったので、これは往診した方がいいだろう、というところから始まりました。

 結果的に当院は、療養病棟と地域包括ケア病棟も活用し、救急、外来、一般入院、亜急性期入院、在宅と、循環完結型の医療体制を整えることができ、地域包括医療をあらゆる面から支えています。

 訪問診療を利用している患者さんは、ADLの低下で通院から在宅に切り替えた方が大半。その他は、訪問看護師さんやケアマネジャーさんからの紹介です。開業医の先生方も高齢化していて、往診まで手が回らない現状があるようです。

 最近は、岡山ろうさい病院や岡山赤十字病院、岡山大学病院などの基幹病院から末期がんの患者さんを頼まれることもあります。当院の取り組みが少しずつ認知されるようになり、うれしいですね。個人的には患者さんとじっくり向き合える訪問診療が好きなので、もっと増えてもいいと思っています。 

 在宅での看取りも、積極的に行っています。先日は、前立腺がんの方をご自宅で看取りました。年間10件ほどを目標にしていますが、なかなか難しいですね。事前に患者さん本人やご家族が希望されていても、いざその時になると「苦しむ声に耐えられない」など、予想もしなかった事態が起こりますから。

―新専門医制度が始まります。

 総合診療専門医の受験資格を目指す研修医を受け入れる予定です。在宅医療や地域医療を志す人材にも、たくさん集まってもらいたいですね。

 いずれは常勤になってもらえるとありがたいですが、家庭医や総合診療医を選ぶのであれば、まずは救急を経験していただきたいというのが私の持論です。研修医からすぐに在宅医療の現場に飛び込むのは、患者さんのためにもお勧めしません。

 訪問診療では、最新鋭の機器は当然使えません。聴診器や血圧計、問診、触診のみで診察し、その状況を把握しながら同時に療養管理を行います。常に、適切な判断が求められる。どのような治療が望ましいか、自分の手に負えるものなのか、高次病院に送るべきか―。その決断力と診断力を、救急で養ってほしいのです。

 われわれは、10年先、20年先を見据えています。できれば急性期診療の第一線から退いたのち、当院で在宅医療に関わる医師が増えることを願っています。

―2017年に創立80周年を迎えました。

 当院は1937年、三井造船玉野事業所の従業員だけでなく、地域住民にも開かれた総合病院として開設されました。建物も当時のままです。部屋が少し狭いので壁を抜いてリフォームしたかったのですが、関東大震災クラスの地震でもびくともしないように造られているため、取り壊すのも大変だそうです。むしろ、このレトロさを大切にした方がいいのかと思い始めています。 

 ある程度の設備投資も必要ですが、これから100周年を目指す上での喫緊(きっきん)の課題は、経営基盤の強化と人材の確保です。

 玉野市には当院を含め三つの中核病院がありますが、どこも経営は厳しく、医師の数も足りていません。ここ数年は、大学病院でも、医師を他所へ派遣する余力がなくなっています。

 このままでは、玉野市の医療そのものが危うい。そこで、3病院と市や医師会が協力し、一つの組織を作ろうという話が出ました。

 しかし、経営母体がそれぞれ異なるため、結局はうまくいきませんでした。それでも、やはり地域でまとまらなければ、充実した医療の存続は難しいでしょう。地域住民のニーズに応え、各病院の経営も支える新しい仕組みを考えなければいけません。

 この5年間で厚生労働省の方針は大きく変化しました。5年後は、また違う状況にあるかもしれません。時代に合わせて正しい方向にかじを切る力が、今の病院経営には求められているのではないでしょうか。

―今後の展望は。

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 三つ、実現したいことがあります。一つは、患者からの「今日は起き上がれないので、自宅に来てほしい」といったイレギュラーな要望にも柔軟に応えられる往診体制を整えること。今は定期訪問のみ対応していますが、できればもっと気軽に訪問診療を利用してもらいたいと思っています。

 二つ目は、地域の救急システムの中で、患者を重症度に応じた医療機関に振り分ける「門番」の役割をさらに充実させること。今は一部隣の岡山市へ搬送している玉野市内の救急患者を可能な限り受け入れ、重症度を見極めて、1次・2次救急は当院で治療し、3次救急は高次病院に転送したいと思います。その場合でも、回復期は当院でケアできたらうれしいですね。

 最後は、予防医療としての「健診」に重点を置くことです。病院に通っている人は定期的に検査をしますが、それ以外の人は会社などで補助がない限り、健康診断の機会に恵まれません。そのような人たちの健康管理ができる病院になりたいと考えています。今は外来で手一杯ですが、これからは人間ドックや市の検診などを中心に受け入れたい。健診の大切さを訴える広報活動にも取り組みたいですね。

三井造船株式会社 玉野三井病院
岡山県玉野市玉3-2-1
TEL:0863-31-4187
http://www.tamano-mitsui-hp.jp/


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