高知大学医学部 麻酔科学・集中治療医学講座 横山 正尚 教授

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教育・研究の充実で人が集まる医局を実現

【よこやま・まさたか】 1980 岡山大学医学部卒業 1982 高知医科大学附属病院麻酔科助手 1990 米カンザス大学メディカルセンター研究員 1996 岡山大学医学部附属病院麻酔科蘇生科講師2002 岡山大学大学院麻酔・蘇生学分野准教授 2009 高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座教授 2012 高知大学医学部附属病院副病院長

 横山正尚教授は、崩壊の危機にあった医局を立て直そうと獅子奮迅し続け9年。大きな実を結んだその取り組みから、地方病院が直面している深刻な医師不足解消の糸口が見えてくる。

―人材の確保に向けた取り組みのスタート地点はどのようなものだったのでしょうか。

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 ご存知のように2004年、新しい医師臨床研修制度がスタートしたことで、地方の医療機関は人材の確保が難しくなりました。

 従来の制度では「地域医療との接点が少ない」といった指摘があり、必修化にあたって「プライマリ・ケアの基本的な診療能力を修得する」などの基本方針が定められたことから、研修医たちはさまざまな医療機関を経験できるようになりました。ところが、それは都会に医師を集中させることにつながり、また診療科の偏りも生むことになってしまったのです。

 さらに同年、国立大学は文部科学省の内部組織ではなくなり、国から独立した「国立大学法人」となりました。

 病院運営の効率化、収入の増加を目指す中で手術件数が大幅に増えていきました。それに伴って麻酔科の忙しさは尋常ではなくなったのです。

 人が足りないため文字通り朝から晩まで臨床に明け暮れ、研究に時間をかけられない、教育もままならない。派遣していた医局員を戻さなければならず、激務で辞めていく人も少なくない―。そんな状態が、2004年以降、10年ほども続きました。

 私が岡山大学から高知大学に赴任したのは、そのさなかの2009年のことです。当院の開院時に麻酔科助手として勤務していましたから、籍を置くのは2度目です。このとき麻酔科の医局員は1ケタしかおらず、人事統制が完全に崩壊していました。予想を超える状況でしたから、やはり辛かったですね。

 それでも「まっさらなところから頑張ってみよう」と思えた理由は、やはり私の故郷である高知に、優秀な人材を集めて根付かせたいと考えたためです。そこで、まず私が三本柱として掲げたのは「教育・研究・臨床」です。これらが整った場として教室の発展を目指すということでした。この高知という地域で、いったいどんなことができるか。そう考えたとき、特に「教育・研究」に注力するべきではないかと考えました。

―具体的な動きは。

 2009年、高知大学は最先端医療の開発と研究意欲に富む医学者の育成を目的に、独創的医療部門、再生医療部門、情報医療部門、社会連携部門、先端医工学部門、臨床試験部門の6部門からなる研究活動拠点「先端医療学推進センター」を設置しました。

 2011年に、同センターによる医学科学生を対象とする「先端医療学コース」が開始。早期研究体験やアクティブラーニングなどを特徴とする全国的にもユニークな教育プログラムです。

 同コースを選択した学生は、先端医療学推進センターの研究班に所属して実践研究に取り組みます。座学や臨床実習とは異なるアプローチで最先端の研究に触れ、かなり鍛え上げられるのです。教員と学生の距離が近いという点も特徴で、刺激を与え合うことで医学部の研究が活性化され、臨床の現場にも生かされるという好循環が生まれています。

 当教室には多様な個性が集い、教育熱心で、臨床も研究も全力で取り組むメンバーがそろっていると自負しています。多忙な毎日でも、十分に研究活動は可能なのです。 例えば2017年、河野崇准教授が取り組んだ「術後神経・認知機能障害の病態機序解明と周術期予防戦略」の研究は、日本麻酔科学会の最高賞である山村記念賞を受賞しました。毎年、医局員がさまざまな賞を獲得しています。

 学生たちは、そんな姿をちゃんと見ているのです。当教室が先端医療学コースで受け入れた学生の中にも、研究成果を発表して表彰されている者がいます。

―教室づくりの考え方を聞かせてください。

 手術の症例数では都会の医療機関に勝つことは難しいかもしれません。しかし教育と研究なら、地方の大学でもけっして引けを取らない環境をつくることができます。

 9年間、一貫してこの方針を打ち出してきた結果、毎年2、3人の新たな入局者を迎えられるようになりました。一度は外に出て行った人が再び戻ってくるケースもあります。うれしいことに、私が教授に就任して以降で辞めた者はまだ1人もいません。

 もう一つ貢献しているのは「同門会」の設立だと思います。当教室から巣立っていった医師たちともあらためて連携を強め、より一枚岩になれたことが人材の定着につながったのではないかと感じます。教室の「核」となる人を育成し、その人がまた次の世代を成長させる。切れ目のない連続性が維持されていることが、コンスタントに人が集まってくる教室には必要だと思います。

 今、医局は若い力に支えられています。ある世代は少ないが、逆にある世代は多い。そうではなく、常に年齢の近い層が一定数いて切磋琢磨できる環境がいい。それは一般企業などでも同じことでしょう。

 私が学生だったころに比べると、女性の割合も非常に高まりました。互いにカバーしようという意識が浸透していますので、産休や育休を取得して復帰する人も多くいます。女性医師のキャリアサポートにも積極的に取り組んでおり、安心して子どもが産める医局だというイメージがつくられつつあるようです。

 医局員の派遣先も少しずつ増えましたし、他の医療機関との交流も本格化しています。しかし十分に対応できているとは言えません。大きな病院であっても人手不足にあえいでいるのが地方の現状。まだまだ頑張らなければなりませんね。

―これまでの学会長の経験も生きるのでは。

 各所での医局員の活躍が後押しとなり、2016年11月に高知で開かれた「日本臨床麻酔学会第36回大会」の会長を務めました。高知大学が開学して以来、最大級の学会です。海外の著名な講師を招いたほか、国内外の約3000人が参加。この成功は、当教室のメンバーにとっても大きな自信になりました。

 高知でこれだけの規模の学会ができるという前例になったので、他科でも「挑戦しよう」という機運が高まったのであれば喜ばしいことです。

 2019年には「第15回アジア・オセアニア区域麻酔ペイン医学会」(4月18日〜20日)と、私が立ち上げた日本区域麻酔学会による「日本区域麻酔学会第6回学術集会」(4月19日〜20日)の同時開催が控えています(会場・高知市文化プラザかるぽーと)。

 アジア・オセアニア地域と日本における脊椎麻酔、硬膜外麻酔、神経ブロックなどの区域麻酔と痛みに関する基礎研究や臨床の最前線をジョイントさせた内容です。1500人規模の大会になる予定で、多くの医療者が高知に集結するとあって県のバックアップなども得ています。開催に向けて盛り上げていきたいと思います。

―4月に始まる新専門医制度については。

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 麻酔科は術前、術中、術後と周術期をトータルで診ることのできる専門医です。チーム医療の中心となり、病院機能の核となる存在です。当院を基幹施設とする専門研修プログラムでは、麻酔管理だけでなく集中治療、ペインクリニック、緩和ケアと、関連領域について幅広く研さんを積むことができます。

 また、それぞれ特色のある専門研修連携施設において、個人の将来のビジョンに合わせたプログラムを組めるように配慮しました。例えば「小児診療を中心に学びたい」「救急に特化したい」といった要望に応えることができます。

 さらに、高知県は高齢化率32.8%(2015年総務省国勢調査)と全国でも高齢化が著しい地域です。高齢者のハイリスク症例に対する周術期管理を学ぶ機会が豊富であるとも言えます。地域医療において、ますます必要とされる麻酔科医のやりがいも肌で感じられるでしょう。

 今年、新制度で4人を受け入れる予定です。実は、麻酔科は「日本で初めて専門医制度を導入」した診療科なのです。新制度を見すえた研修プログラムも、すでに2015年度に先行して導入していますので、大きな混乱は生じないでしょう。

 今後の最も大きなテーマとしては、世界で活躍する人材を輩出していくことだと考えています。現在、私が複数の学会で国際交流委員長を務めている縁もあって、世界的な麻酔科学の権威を当大学に何人も招くことが、かないました。海外施設との交換留学の準備も進めており、今年は初めて臨床研修留学生を受け入れます。当教室のウェブサイトのトップページに記載している「南国高知から世界へ」というスローガンが、徐々に実現し始めているところです。

 坂本龍馬は世界に目を向けていました。彼を生んだこの地で、海の向こうに羽ばたく人材を育てたい。そのチャンスを広げていきます。

 日本で初めての麻酔学教室が開講したのは1952年と、歴史的にはまだ浅い学問です。ですから、これからの歴史を切り開く「勝負」ができるフィールドは広い。若い人にどんどん挑んでほしいと思います。

高知大学医学部麻酔科学・集中治療医学講座
高知県南国市岡豊町小蓮185-1
TEL:088-866-5811(代表)
http://www.kochi-ms.ac.jp/~fm_ansth/


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