独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院 杉山 和英 副院長・麻酔科部長

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患者との出会いを大切に麻酔を通して人生を知る

【すぎやま・かずひで】 1980 久留米大学医学部卒業1985 久留米大学大学院医学研究科修了 米国立衛生研究所(NIH)留学 1994 米テキサス大学医学部ガルベストン校留学 2003 社会保険久留米第一病院(現: 独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院)麻酔科部長 2012 同副院長

 手術麻酔、緩和ケア、ペインクリニックを担当する独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)久留米総合病院麻酔科。麻酔科部長でもある杉山和英副院長は、「患者に優しい手術麻酔」と「患者の思いをしっかり受け止める緩和ケア・ペインクリニック」に力を注ぐ。

◎患者に優しい手術麻酔

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 JCHO久留米総合病院は、女性医療を強みの一つとしています。乳腺外科と婦人科の手術がおよそ7割を占め、特に乳がんは全国でもトップクラスの症例数。年間手術件数は、175床の病院としてはかなり多い約2000件です。

 私が当院に赴任して14年。それまで全身麻酔では、気管挿管するのが標準的でした。

 気管挿管は、のどの奥に管を入れる方法で、長時間の麻酔でも安定的に呼吸管理できるものの、術後にのどの痛みが出ることもあることがデメリットです。

 そこで、乳がん手術の際は、マスクを当てて酸素と麻酔のガスを流す「無挿管マスク麻酔」に変更。当院の乳腺外科医は経験数が多いため手術が速く、乳房全摘術でも1時間ほどで終了することから、スムーズに変更することができました。

 さらに、麻酔前の鎮静薬注射を中止して患者さんが手術室に「歩いて入室」できるようにすることや、手術終了時の鎮痛を強化して「痛いと言わずに退室」してもらうことなど、複数の目標を掲げ、周術期の管理に取り組んできました。

 「患者さんに優しい手術麻酔」が私たちの目標です。術後、患者さんから「ストレスがほとんどなかった」「つらくなかった」と言われたい。そのためにも、手術の前後に患者さんのもとに足を運び、話をする「顔が見える麻酔科医」を目指しています。

◎心と体の痛みをとる

 私は手術麻酔に加えて、週4日、午前中を中心に「ペインクリニック内科」外来で、さまざまな痛みを訴える患者さんに対して、神経ブロックや薬物治療、運動療法などを施しています。

 患者数が多いのは、脊柱管狭窄症と椎間板ヘルニアによる腰痛や下肢痛の患者さん。この二つでペインクリニック内科の患者の4割ほどを占めています。

 脊柱管狭窄症は高齢者が多く、患者さんは「手術はしたくない」とペインクリニックを選択されます。椎間板ヘルニアの場合は、「手術」から、痛みを緩和させながら自然治癒を待つ「保存療法」へと治療の主流が移り変わったことで、開業医の先生からの依頼も増えています。

 数は多くありませんが、痛みはあるものの原因がはっきりつかめず悩んでいる方、不安を感じている方もいます。患者さんの話にじっくり耳を傾けることが有効な場合もあります。心や体の痛み、化学療法の副作用などがあるがんの患者さんには、がん性疼痛(とうつう)・緩和ケア認定看護師らとチームで寄り添います。

 2016年度の「ペインクリニック内科」の患者数は、外来が延べ2068人、入院が延べ778人。いずれも過去最高となりました。

 私が緩和ケアやペインクリニックに関心を持ったのは、久留米大学病院に勤務していたころでした。手術麻酔をしていると、患者さんと関わることができるのは手術前後のほんの数日間。患者さんともっと接したいと思い、この病院に移ってきました。

 神経ブロック注射によって「痛みが取れた」と喜ぶ方や、入院で緩和ケアを受けた方が少し回復して自宅に戻る方を見ると、喜びを感じます。一方で、心身の痛みを緩和できないまま患者さんを看取(みと)ることも多く、難しさを感じることも多々あります。

 ただ、人間はいつか必ず亡くなります。人が穏やかに亡くなっていく手伝いをすることも、大事な仕事。その部分でも、自分の力を発揮したいと思っています。

◎AIにできない仕事を

 私が30年前に麻酔を学び始めたころは、麻酔は若手外科医が1年ほど学ぶもので、いわゆる「麻酔のプロ」はほとんどいませんでした。

 ここ20年ほどで、麻酔科を専門にする医師が増加。それとともに、手術中麻酔や血圧、呼吸管理の主導権が外科医から麻酔科へと移り、お互いにプロフェッショナルとして力を発揮しやすい環境ができてきたと感じます。

 アメリカには、「ナース・アネステティスト」と呼ばれる「麻酔専門看護師」がいて、麻酔科医の指導の下で麻酔をかけています。日本でも同様の動きが徐々に始まっています。

 機器の進歩も著しく、今後さらに時代が進めば、AIが患者さんの手術中の状態をコントロールするようになるでしょう。細かく情報をインプットしておけば、AIの方が早く正確にさまざまな判断や薬の調節ができるようになるかもしれません。

 しかし、麻酔科を含め、医師の仕事が「人対人」を基本にすることに変わりはありません。時代が変わり、方法が少しずつ変わったとしても、人でなければできない仕事がある。そのヒントも、患者さんから得られるはずです。

◎「自分は何ができるか」

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 当院の麻酔科は、常勤医3人、非常勤医9人。もっと多くの麻酔科医に当院で働いてほしいと思っています。

 特に希望しているのは、手術麻酔だけでなく、緩和ケアなどにも関心を持っている医師。患者さん一人ひとりとの出会いを大切にし、「この患者さんに対して自分は何ができるのだろうか」と考え、努力を重ねることができる。そういう人と一緒に働くことができたらうれしいですね。

 当院には30代、40代でがんと闘う女性患者さんがたくさんいます。だからこそ私は、特に若手の女性医師に来てほしいと思う。同世代の女性たちが、がんだと診断され、手術など治療を重ね、悩み、あるいは亡くなっていく―。手術時の麻酔、術後の管理、緩和ケアを通して交流を深める中で、医師として、同じ女性として、数えきれないことを教わるはずです。

独立行政法人地域医療機能推進機構久留米総合病院
福岡県久留米市櫛原町21
TEL:0942-33-1211(代表)
https://kurume.jcho.go.jp/


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