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愛知医科大学医学部麻酔科学講座 藤原 祥裕 教授

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 超音波ガイド下神経ブロック草分け安全で確実に痛み取る

【ふじわら・よしひろ】 愛知県立岡崎北高校卒業1987 名古屋大学医学部卒業 2000 名古屋大学医学部附属病院講師 名古屋第一赤十字病院副部長2002 国立長寿医療センター医長 2005 愛知医科大学医学部麻酔科学講座助教授 2010 同教授2014 愛知医科大学病院副院長

 超音波を使って神経を映し出しながら局所麻酔薬を注射する「超音波ガイド下神経ブロック」が日本で使われるようになって約10年。最初に導入した施設の一つが愛知 医科大学病院だ。

 副院長も務める同大学医学部麻酔科学講座の藤原祥裕教授は「旧来の方法に比べて確実性と安全性が大きく向上した」と話す。

◎注目の技術

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 今、麻酔科の分野で若手医師が最も興味を持っているのが、超音波ガイド下神経ブロックだと思います。当院では、ほかのいくつかの施設とともに日本で最初に導入しました。

 神経ブロックは、生理機能に大きく影響する「全身麻酔」「硬膜外麻酔」「脊髄くも膜下麻酔」と、影響は小さいけれどごく狭い範囲にしか効かない「局所麻酔」の中間にあります。

 手術中に全身麻酔と併用するほか、意識がある状態で使えるので術後の鎮痛にも有効です。ひざの人工関節置換術のように非常に痛みが大きい場合も、神経ブロックによって快適に過ごせます。

 超音波を使わない旧来の方法は、体を外から見て神経の位置を推測し、麻酔薬を注射していました。悪い言い方をすると「運が良ければ神経に当たる」。確実性が低いため、有効であってもなかなか普及しませんでした。

 超音波を使えば神経が見えるということがわかり、神経ブロックに活用され始めました。これにより、確実性と安全性が大きく向上しました。

 医療技術は、海外で確立されたのちに日本国内に持ち込まれることも多いのですが、この技術は世界と同時に進行してきました。各地で試行錯誤を繰り返し、細かい違いが収れんされて成熟してきました。

◎訓練積めば比較的容易

 超音波を出すプローブは幅2〜3㎜なので、その範囲に神経と麻酔薬を注入する針を同時に映り込ませる必要があります。患者の体ではなく画面を見ながらの作業も、慣れないと難しい。しかし、言い換えればある程度トレーニングをし、経験を積めば旧来の方法より容易だと思います。

 この技術を学びに、全国から医師が研修に訪れています。タイやネパールなど海外からも、これまでに30〜40人が来ました。

 通常、超音波で見るのは腹部や心臓なので、深さ10〜15㎝に合わせた周波数の機器を使います。神経はもっと浅い所にあるので、より周波数の高い機器が適しています。必要なのは、そのほかに局所麻酔薬と針くらいなのですが、導入する施設はさほど増えていません。

 理由の一つは、手術の際に全身麻酔に神経ブロックを足しても、診療報酬の点数がほとんど加算されないこと。せっかくの技術が使われないのはもったいないですね。せめて設備投資に見合う加算があればと思うのですが、医療費削減が叫ばれる中、難しいと思います。

◎医師不足解消へ

 日本の麻酔科医の数は、10年ほど前のデータだと人口当たりでアメリカの半分以下です。さらに同国では、訓練を受けた専門職である「麻酔看護師」が医師と同じくらいいることを考えると、日本の人員不足は明白です。

 中でも、愛知、岐阜、三重は特に少ない。人手不足から過重労働になり、さらに退職者が増えるという悪循環に陥っていて、外科医が麻酔をかけるという文化が根付いています。

 麻酔科医を急に増やすことはできません。そこで、医師以外にもできることは他職種に任せています。この医局にいる4人の看護師は、動脈圧ラインの挿入や人工呼吸器の設定などの特定行為研修を受け、大学院も卒業しています。医師の指導の下、麻酔にも携わっています。人が足りない時だけの臨時業務ではなく、通常業務として取り組んでいます。

 「チーム医療」という言葉は広まっていますが、本当の意味で実践できているところは少ないのではないでしょうか。私は、医師から看護師や薬剤師など医療スタッフへの権限移譲が重要だと思っています。

 技術革新により、機器も薬もずいぶん良くなりました。昔ほど、緊張感を持って患者をつぶさに見ている必要もなくなりました。

◎経営の視点で効率化

 医師は多忙過ぎて、診療や手術以外に手が回っていません。しかし、合併症が起きた事例の検討をしたり、新たな麻酔技術を開発したりするためにもっと時間を割くべきです。業務を見直す必要があるのです。

 さらに、周術期医療の現場の効率化も重要です。一つ目の手術が終わってから次の手術まで、相当な時間が空いてしまうことがあります。その間、人員も設備も無駄な時間を過ごすことになります。もっと効率的なスケジュールを立てられないかと考えています。

 私は、教授になる直前に南山大学で経営を学び始め、経営学修士(MBA)を取得しました。病院では、所属する人がそれぞれの論理で行動し、組織として機能しているとは言えません。そこを改善し、組織として医療サービスを提供する必要があると思っています。

◎周術期を総合的に管理

 当院は幸い、建物としては効率的に業務ができる環境が整っています。麻酔科外来と周術期集中治療部(GICU)が手術部と同じフロアにあり、術前から術後まで患者を総合的に診ることができます。GICUは28床と多いので、それほど重症でなくても合併症が起こりやすい術後一晩だけはここで経過をみます。

 術前の説明は従来、患者さんが入院後、麻酔科医が病棟に足を運んでしていました。今は外来で説明をしています。

 これにより、他の患者もいる大部屋で既往歴について質問をせざるを得ないといった倫理的な問題を解消。心不全などの既往歴があることが入院してから判明し急きょ手術を取りやめるということも回避できるようになりました。医局員と患者の双方から、評価が上がっています。

 術後の痛みへの対応でも、従来は麻薬の持続注入器を付けて病棟に返していましたが、量が過剰になる可能性がありました。また、硬膜外麻酔を追加投与した方がいい場合でも、病棟では血圧低下を恐れて躊躇(ちゅうちょ)してしまうこともありました。これでは、せっかく手術で入れたカテーテルが有効に使えません。その点、GICUで麻酔科が管理すれば、何かあってもすぐに対応できます。

 今後はさらに、GICUから病棟に戻った後も、看護師や麻酔科医が定期的に回診し、痛みに対応していきたいと考えています。

◎世界標準の医療を目指す

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 一例をあげると、アメリカや欧州では大多数の出産で無痛分娩が行われていますが、日本ではほとんど実施されていません。その理由は、麻酔科医不足もあるでしょうし、日本独特の文化もあるでしょう。いずれにせよ、日本の妊婦さんたちが出産時に感じる痛みは、諸外国に比べはるかに強いことは間違いありません。私は日本の患者さんに、諸外国と同等以上の医療を受けてほしいと思います。ただし、無痛分娩はきちんとしたやり方で麻酔をしないと死に至る合併症を起こすことがあります。無痛分娩の麻酔が原因で妊婦が亡くなる事故もありました。さらに医局員を充実させ、「技術と知識を持った麻酔科の専門医が安全に実施します」と言える体制にしたいですね。

愛知医科大学医学部 麻酔科学講座
愛知県長久手市岩作雁又1-1
TEL:0561-62-3311(代表)
http://aichi-med-u-anes.com/


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