若い力で地域を支える
「平均年齢が30代という若い病院ですが、それが強みでもあります」と言う保田昇平理事長。前身の堀口整形外科病院から数えて63年間地域の医療に貢献しながら、さらに救急医療に力を入れていくという堀口記念病院の歴史と特徴を聞いた。
◎これまでの歩みと病院の概況
当院の前身となる「堀口整形外科病院」は、初代理事長の堀口銀次郎医師が1955年、和歌山市本町に開設しました。2代目理事長として、私の父である保田龍男医師がその後を引き継ぎ、2011年に私が理事長に就任。地域医療への貢献に励んでいます。
建物の老朽化により2013年に同市湊本町に新築移転し、「医療法人やすだ堀口記念病院」に病院名を改称しました。
移転に伴い、整形外科単科であった診療科に加えて、内科・呼吸器内科・循環器内科・消化器内科・外科・リハビリテーション科・救急科を増設。患者の幅広い要望に応えられる環境が整いました。現在は内科や外科、リハビリテーション診療が中心となっています。
許可病床数は150床。一般急性期病棟、回復期リハビリテーション病棟を持ち合わせ、患者さんのニーズに応えています。
◎高齢化に若い力とチーム医療で立ち向かう
30.9%で高齢化率が全国7位、近畿府県内では1位である和歌山県の状況に対応すべく、リハビリテーションには特に力を入れています。
移転当初に8人からスタートしたリハビリのスタッフは、現在約40人と5倍に増員。20〜30代の体力とやる気がみなぎる若いスタッフが多く在籍しており、リハビリ室はいつも活気にあふれています。
リハビリスタッフだけでなく医師や看護師も含めて当院の医療スタッフの平均年齢は30代と若く、何事にも積極的かつスピーディーに取り組む姿勢は当院の強みであると言えるでしょう。
診療においては他職種によるチーム医療に重きを置いています。医師が頂点にいてその下に他職種が連なり医師の意見だけで動くようなピラミッド型の封建的な組織では、問題が起こった時にすべて指揮者のせいにしてしまうなど、不均衡な関係が築かれる恐れがあります。
そこでそういった環境をできるだけなくし、どの職種のスタッフも対等に意見を言い合い、それを医師が統括してチームで診療をするという体制を「チーム医療」という形で実現しています。
◎救急医療体制の現状と課題に向けた取り組み
和歌山市では救急告示医療機関(二次救急)に当院を含めて21の医療機関が指定されています。しかし、二次救急医療機関において日中はまだしも休日・夜間に診療できる医療機関は不足しています。
多くの救急患者を受け入れている三次救急医療機関に軽症の患者が多く搬送されていることで、本来診るべき重症の患者を診ることが困難になっています。結果、高度救命救急医療の提供に支障が生じるなどといった問題が起きています。
私たちの病院では、地域連携室を通して三次救急医療機関をはじめとする地域の医療機関との連携を強化。三次救急医療機関に搬送された軽症患者の入院受け入れも積極的に行っています。また高齢の患者も多いので、和歌山市内の介護施設などとも密に連携を図っています。
現在当院では、重症で緊急を伴う患者以外の救急患者を積極的に受け入れており、救急応需率は約70%です。
当院に運ばれてくる患者の多くは早急に診療を開始しなければ重大な結果を及ぼすというようなことはほとんどありません。しかし、医療の現場はどこもスタッフの数が潤沢にいるわけではありません。
そこで患者や救急隊を待たせることなく、ストレスなく受け入れて少しでも早く診療を開始するために、救急隊到着の約5分前になると院内にオルゴールの音楽が鳴り、それを聞いた医師や看護師が救急診療部に集結するような体制にしています。
こうした取り組みにより現在当院では、年間1000人以上の救急搬送患者を受け入れています。
◎職員一人ひとりの意見を病院運営に生かす
移転したのを機に食事の献立を決める栄養科のスタッフに頑張ってもらい、入院患者から「食事がおいしい」という意見をいただくことが多くなりました。
毎月、接遇委員会を開き、患者からのアンケート結果に目を通して振り返り、改善できることは改善するようにしています。個人名でお褒めの言葉をもらった職員がいれば朝礼で発表します。褒められた職員だけでなくそれを聞いた他の職員も「次は自分も良い評価をもらえるように頑張ろう」とモチベーションが上がることに期待しています。
診療においては、骨粗しょう症や骨折のリスクを判定するため骨密度測定をして、骨密度が低い場合は注射などの薬物療法によって治療を行っています。転倒することによって骨折、入院となると高齢の場合はそのまま寝たきりになって認知症を発症することも少なくないからです。たとえ転倒して入院してしまっても、すぐにリハビリを開始して退院できるように、予防医療にも力を入れています。
チーム医療を実践するということは、各人に責任とスピードある判断が求められます。当院で働くスタッフはモチベーションの高い人が多く、それは「ますます成長したい」という強い気持ちの表れだと思うのです。
外来では待合時間を利用して外来患者を対象とした「健康体操」をボランティアで実施しています。また、回復期リハビリテーション病棟ではリハビリスタッフが患者と共に定期的にラジオ体操をしています。
これら二つはリハビリスタッフの発案により始まった取り組みです。当院には職員の自発的な取り組みや希望、アイデアを積極的に取り入れようとする土壌があります。
歴史を大事にしつつも新しいことを積極的に導入している背景には、私が地元の高校を卒業した後、近畿大学の理工学部に進学し、卒業後は一般企業に就職した経験が関係しています。医療者としてだけでなく、一般の患者や家族の立場で物事を考える姿勢は今後も変わらず持ち続け、病院運営に生かしていきたいと思います。
やりたいと思うことをかなえることができればモチベーションが上がり、成長できる。こういった風潮が院内に浸透しているのは若いスタッフが多い当院ならではの特長だと言えるでしょう。
◎地域における在り方と将来の展望
今後は整形外科の常勤医と外科医を招き、外科を中心とした医療提供体制をより充実させていきたいと考えています。現在、やむを得ず受け入れをお断りせざるを得ない患者さんも可能な限り受け入れられるよう、ソフト面の整備を進めていきます。
往診や訪問看護、在宅医療も当院でカバーしていきたいと考えていますが、人員の確保や設備整備の必要もあるためもうしばらく時間が必要です。
高度急性期病院と地域の開業医の双方をつなぐ機能を果たす。それによって地域の医療機関と競合するのではなく、機能や規模に応じて困っていれば助け合い、地域包括ケアシステムに沿って共存共栄していくことが求められています。地域で治療を完結させ、地域全体で患者を支える体制の1日も早い確立を目指していきます。
医療法人やすだ 堀口記念病院
和歌山市湊本町3-4-1
TEL:073-435-0113(代表)
http://horiguchi.or.jp/