八尾市立病院 佐々木 洋 総長

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信頼し愛される病院を目指して

【ささき・よう】 1976 大阪大学医学部卒業 同第2外科入局 1988 米ピッツバーグ大学外科肝移植科客員外科医 2004 大阪府立成人病センター病院消化器外科主任部長 2007 八尾市立病院副院長 2009 同院長 2017 同総長

 医師不足で赤字続き。公立病院でありながら一度は救急病院の指定返上まで考えた。その状況が一転、6年連続の黒字経営を達成、優良病院表彰受賞に至るまでの歩みと病院の取り組みとは。

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◎5大がんの手術

 八尾市立病院の建物は2004年に建て替えを終え、全国に先駆けて始めたPFI事業会社の管理によりハードは美しいものになりました。その一方、経営状態は毎年赤字が続き、十分な医師の確保もままならず市議会では「見た目はきれいな病院だけど、中身は充実していない」と言われて悔しい思いをしたこともありました。

 こういった状況を改善するために2007年に副院長として赴任して、まず「大阪府がん診療拠点病院」の指定を受けることを病院全体の第一目標に設定しました。私が専門とする肝臓がんの外科的治療を含む「肝胆膵外科」を開設。高度技能認定施設としての認定を受け、それまでは年間数例しかなかった肝胆膵の手術件数は年間60〜70例まで増加しました。

 2011年に大阪府立成人病センター(現:大阪国際がんセンター)で副院長をしていた呼吸器外科医の兒玉憲医師を特命院長として招き、肺がんの手術を開始。それにより、日本における5大がんと呼ばれる胃がん、大腸がん、乳がん、肝がん、肺がんの手術ができる環境が整いました。

 さらに緩和ケアチームやがん相談支援センターなど、必要な部門を新たに開設。こうして2009年4月「大阪府指定がん診療拠点病院」の認定を取得することができました。

◎外来化学療法と放射線治療の充実

 がんの手術件数が増えれば比例して抗がん剤による治療件数も増加します。そこで2009年に化学療法科(現:腫瘍内科)を新設し、抗がん剤治療の専門医を招へい。通院治療センター(外来化学療法室)の機能と配置する職員数を充実させ、2015年に9床あった通院治療センターのベッド数を16床に増床し、2016年度の外来化学治療症例数は4616件と年々右肩上がりに増加しています。

 2014年に大阪府立成人病センターの副院長だった放射線治療医の西山謹司医師を副院長として招き、2016年には「定位放射線治療(ピンポイント照射)」や「強度変調放射線治療(IMRT)」が可能な放射線治療装置「トゥルービーム」を約7億円かけて導入。これにより放射線治療件数が大幅に増加し、2016年度は7400件の放射線治療を実施しました。

 胃がん、大腸がんの手術のほとんどは開腹手術でしたが、腹腔鏡手術を得意とする井出義人医師が着任したことで現在、大腸がんの手術の9割ほどは腹腔鏡による鏡視下手術が行われています。

 こうした取り組みによって2015年4月に指定基準が府指定に比べてはるかに厳しい「厚生労働省指定がん診療連携拠点病院」の認定を取得することができました。

 2016年度のがん患者管理数は2174人、1084件のがんの手術を行いました。

◎スピード・決断・実行で経営改善を図る

 2009年に院長に就任した際「スピード・決断・実行」というスローガンを掲げました。高度で安全な医療の推進と経営状態の改善・黒字化、その二つを車の両輪に例え、どちらにも傾かないようにバランスを取りながら、院長自ら医療の最前線でスピーディーに決断し実行していくことを職員の前で宣言しました。

 がん治療をはじめとして病院全体の医療提供体制が充実したことで患者数が増加。2007年に約70%だった病床利用率は現在90%を超えています。

 2010年にはがんを中心とした全病院的な病診連携の会を発足させました。また疾患別に当院が主体となって症例検討会などの勉強会を開催し、その中で診療所やクリニックでは困難な治療や検査、手術を当院でできることをアピール。

 紹介率50%以上、逆紹介率60%以上という当時の承認要件をクリアし、2012年11月に「地域医療支援病院」の承認を受けました。

 こういった取り組みにより経営状態は次第に改善。2008年度に約22億円だった赤字額は翌年には11億3000万円と徐々に減少に向かいました。そして2011年にはついに、わずか400万円ですが黒字に転じたのです。それ以降も黒字経営は続き、2016年度は1億7000万円の黒字を達成しました。

 累積欠損金がなく5年以上経常利益を計上し、かつ経営努力、地域医療への貢献度が選考基準を満たし、2017年6月に大阪府で初めてとなる「自治体立優良病院表彰」を受賞。同年11月に「全国国公立病院連盟会員病院表彰」を受賞しました。この二つの表彰をダブル受賞することは非常に珍しく、名誉なことです。職員も大変喜んでくれました。

◎品格ある病院としての取り組み

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 良い医師を集めたことで「ここで学びたい」という志の高い医師や「ここで治療を受けたい」という多くの患者が集まりました。治療においても経営の健全性が保たれていることで高度な医療機器の導入が可能になり、病院全体が活性化しました。

 2007年に研修医を含めて約70人であった医師数は現在では約120人にまで増加しました。救急診療部門では自ら当直を志願する若い医師が増え「断らない救急」という目標達成に向けて、現在、八尾市の救急搬送の約3割を当院で受け入れています。深刻な医師不足により一時は救急告示病院の指定返上まで考えたこともありましたが、そうしていれば今の八尾市立病院は存在していなかったでしょう。

 診療機能のさらなる充実を目指し、「栄養管理(NST)チーム」「褥瘡(じょくそう)対策チーム」「緩和ケアチーム」「感染対策チーム」など九つの部門から成る「チーム医療推進委員会」を発足しました。

 多職種のスタッフが集結した各チームでは年度初めに目標を設定します。秋には中間報告を行い目標への達成度と課題を確認してフォローアップ。年度末には成果報告の発表会を開くことで、単年度の事業で済ますことなく次年度につなげていきます。

 3年ほど前まで常勤医がおり白内障の手術を年間約700件実施していた眼科や、腎臓内科、呼吸器内科、神経内科といった内科系の診療科には常勤医師が不在という現状があります。これらの診療科の医師を招へいし、幅広く患者の要望に応えられるように総合的な診療を目指していきたいと考えています。

 八尾市立病院の三つの基本理念の一つに「市民に誇れる公立病院として、品格ある病院運営を実践します」とあります。医療の本質を忘れず、良心に基づいた医療を行い、市民や地域の開業医、市議会、当院で働く職員と、当院を取り巻くすべての人に愛され、信頼される病院でありたいという思いを込めて「品格」という文言を入れています。

 2018年4月に八尾市は中核市に移行します。移行に伴い、具体的な内容は未定ですが、今後は八尾市保健所との連携強化を進め、新たな取り組みを考えています。

 当院で働く職員だけでなく、市民のみなさんに誇りに思ってもらえる病院作りを今後も続けていきます。

八尾市立病院
大阪府八尾市龍華町1-3-1
TEL:072-922-0881(代表)
http://www.hospital.yao.osaka.jp/


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