琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座 鈴木 幹男 教授

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病変の発見・治療は好循環の時代に入った

【すずき・みきお】 1986 滋賀医科大学医学部卒業 1995 米テネシー州立大学医学部免疫アレルギー科 1999 滋賀医科大学医学部耳鼻咽喉科講師 2005 福岡記念病院耳鼻咽喉科部長 2006 琉球大学医学部耳鼻咽喉・頭頸部外科学分野(現:講座)教授

 耳や鼻の機能は極めて高度。患者のQOLを大きく左右するだけに精緻な医療が求められる。鈴木幹男教授の言葉を通して、耳鼻咽喉科領域の最新の動向を伝える。

-耳鼻咽喉科領域の疾患と治療法の傾向は。

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 副鼻腔(鼻の周りにある四つの空間)の炎症によって鼻づまりや匂いを感じられなくなるといった症状が起こる「副鼻腔炎」の手術は、「コールドウェル・ルック手術」に代表されるように、口の中から大きく切り骨を削る方法が一般的でした。

 1990年代に入り内視鏡手術が普及。4K内視鏡などで鮮明な映像が得られるようになり、術式も改良が重ねられ低侵襲化が進みました。上顎がんなどの治療にも内視鏡が用いられています。

 以前は細菌などが副鼻腔に入り込んで発症する副鼻腔炎が多かったのですが、近年は「好酸球(こうさんきゅう)性副鼻腔炎」が増加傾向にあります。鼻の中にポリープ状の「鼻茸(はなたけ)」がたくさんできるのが特徴で、「好酸球」という免疫細胞が多く認められることから名付けられました。

 世の中が「きれい」になって細菌が減ったことと関連があるとも言われていますが、増加の原因は分かっていません。非常に難治性で手術をしても再発しやすく、2015年に指定難病となりました。治療法は手術と、術後のステロイド点鼻が有効とされています。

 気管支ぜんそくを伴っていることが多く、内科での受診時に鼻づまりや嗅覚障害を合併していることで耳鼻咽喉科に紹介される患者さんがよく見られます。1990年代の半ばあたりは1割程度でしたが、現在、当院で手術する副鼻腔炎のうち8割ほどを好酸球性副鼻腔炎が占めています。

 耳の手術については慢性中耳炎、真珠腫性中耳炎の比較的軽度なものや耳硬化症などで内視鏡単独、あるいは顕微鏡と内視鏡を併用することが増えています。

 病変部のすぐそばにまで内視鏡が近付くことができるようになり、明るく広い範囲を見ることが可能。機器の機能向上が疾患の早期発見を後押ししています。鼻の領域に関しても同様で、誰もが映像を共有できるという点で、若い医師の教育にも貢献しています。

 がんの領域では、特殊な光を照射して血管の状態を観察する「ナローバンド・イメージング(NBI)」など、ごく小さな病変を発見できるさまざまな先進的な技術が登場しました。特に、口腔やのどといった複雑な構造では見つけにくかった早期の腫瘍発見に力を発揮しています。

 もう一つ、検診での経鼻内視鏡検査の普及も早期発見につながっている要因でしょう。ゆっくりと挿入し、嘔吐反射が起こりにくい。そのため病変に気づく確率も高まったと考えられます。

 腫瘍が成長して症状が出始めてから手術となると、その周辺部分も切除することになり、かなりの負担を患者さんに強いることになります。

 早期発見が増えたことで、経口的な内視鏡手術「トランスオーラル・ビデオラリンゴスコーピック・サージェリー(TOVS)」などの機会も広がりました。早く見つけて、小さい傷で治療し早期退院、社会社会を果たす。そんないい循環が生まれています。

-先生の専門の一つであるメニエール病についてはいかがですか。

 メニエール病は、ストレスと密接に関係しています。大切なのは疾患とどうやってうまく付き合っていくかを探ることです。手術をして5年ほど症状がおさまっていたものの、職場の環境が変わったとたんに再発してしまった。そんな患者さんもいます。

 主な症状であるめまいや難聴の原因は、内耳のリンパ液が過剰にたまった状態である「内リンパ水腫」です。ストレスによってリンパ液の分泌量が多くなる、内リンパ嚢での吸収力が低下するなどの説がありますが、そもそもなぜ内リンパ水腫ができるのかという根本的な理由は明らかにされていません。

 一般的な手術法はリンパ液の流出路をつくる「内リンパ嚢開放術」と、体のバランスを司る前庭神経を切り離す「前庭神経切除術」があります。

 前庭神経切除術で強いめまいの発作は解消できます。ただし、例えば振り返った時や暗い場所でのふらつきなどが残ります。それでも、めまいが仕事に大きな支障をきたしていた人が、なんとか社会生活を送れるようになる可能性があります。

 症状の度合いも生活環境も違いますから、患者さんが何を目指しているかを私たちが理解し、サポートできる方法を選び取ることが大切です。

-「聞こえ」を守るための医療は。

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 重度の難聴を対象とする人工内耳の進化は目覚ましいですね。かつて太くて硬かった電極は、軟らかくて細いものに進化していますので、低侵襲で入れることが可能となりました。また、低音域に聴力が残っている方に低音部は音響刺激で、高音部は電気刺激で音を送り込む人工内耳も製品化されています。

 子どもの治療は発達を踏まえて取り組むことがポイントです。出生時の脳波で聴力に問題があると診断されても、1歳くらいまでの間に改善することがあります。補聴器を使う、人工内耳の手術を実施するなどの判断は成長とともに変わる実際の音への反応や、ご家族の要望なども含めて、慎重に見極めて検討していく必要があります。

 先天性高度難聴児では4〜5歳を過ぎると、人工内耳の手術はあまり効果が期待できないという報告もあります。脳が最も発達する期間に聞こえるようにすることで、音や言葉に対する反応が高まると言われています。

 新生児から高齢者まで私たちが治療する対象はまさにすべての人。そして、自分で診断から治療までを担い、QOLの向上を直接的に支えることができるのが耳鼻咽喉科領域のやりがいです

 耳の遺伝子の研究も進めており、患者さんに合わせた治療法の選択や、将来難聴がどの程度進むのかといった予測の確立を目指しています。より良く生きてもらうために何ができるか、考え続けていきたいと思います。

琉球大学大学院医学研究科耳鼻咽喉・頭頸部外科学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
https://ent-ryukyu.jp/


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