日本医師会 会長 横倉 義武

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 明けましておめでとうございます。国民の皆様におかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。

 昨年は、7月に甚大な被害をもたらした九州北部豪雨や10月の大型台風21号の発生など、各地で大雨や台風をはじめとする天候不順により自然災害が相次ぎ、多くの方々が被災され避難生活を余儀なくされました。被災された方々には、改めてお見舞い申し上げます。

グローバルなレベルでの健康長寿社会実現に寄与

 昨年10月、世界医師会(WMA)シカゴ総会において、私は第68代WMA会長に就任いたしました。日本人としては、1975年の故武見太郎元会長、2000年の故坪井栄孝元会長に続く3人目になります。

 WMAは、1947年に設立され、現在114の各国医師会が加盟する世界の医師を代表する組織です。本部はジュネーブ近郊のフェルネイ・ボルテア(フランス)に所在し、WHOや国連等の国際機関と連携して世界中の人々の健康水準の維持、向上に努めています。日本医師会は、1951年の第5回WMA総会で加盟し、現在、会長、理事3名を有してその活動に貢献しています。

 私は今回の就任に際し、国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げてきたわが国の優れた医療システムを世界に発信し、グローバルなレベルでの健康長寿社会の実現に寄与して参りたいという強い思いを述べました。年を新たにし、改めてさまざまな分野での医療協力・パートナーシップを深め、人材の育成・生涯教育の一層の推進など、WMAの果たすべき任務を遂行してゆく責任の重さを痛感しています。

 また、昨年9月には、アジア大洋州医師会連合(CMAAO)東京総会を第35代CMAAO会長として主宰いたしました。CMAAOの活動をより活性化させ、地域住民の健康の増進に努めながらWMAとの関わりをより一層緊密なものとし、当該地域の医師の声がWMAに届くよう努めることは、両団体の活動に深く携わる日本医師会長、CMAAO会長、そしてWMA会長としての私のもうひとつの大きな使命であると位置づけています。

戦後復興を支持した国民皆保険制度を堅持

 歴史を振り返りますと、わが国が世界のトップレベルの健康長寿を達成してきた背景には、国民皆保険の下、われわれ医療従事者の献身的な努力があったという事実があります。戦後の経済復興の過程には、国民が安心して仕事をし、生活を送るための基盤として国民皆保険がありました。

 国連が2016年に開始した2030年に向けての「持続可能な開発目標、SDGs」には「誰一人取り残さない」という国民皆保険に通じる理念があります。1961年に実現した我が国の国民皆保険は50年以上にわたり国民の健康を支え、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)のあるべきモデルとして高く評価されており、何としてもその仕組みを堅持していかなければならないと考えています。

 高齢社会の抱える問題のひとつである終末期医療については、会内の生命倫理懇談会でも提言を取りまとめていただきましたが、WMAでもそのあり方、とりわけ安楽死などの問題を検討してきました。

 WMAの地域会議として開催されたCMAAO東京総会における「終末期医療」をテーマとしたシンポジウムでは、アジア諸国にはさまざまな宗教が存在し、宗教が終末期のあり方にも影響していること、また、膨大な人口、家族、地域共同体の結びつきが非常に強固であり、終末期医療における意思決定にも関わっていることが報告されました。

 昨年11月にはバチカン市国において「WMA欧州地域終末期医療シンポジウム」が開催され、医療、法律、緩和ケア及び医療倫理の専門家、神学者、哲学者などが参加し、患者の権利と治療の制限など、終末期医療に関する世論への理解を深めるための議論が行われました。また、3月にはラテンアメリカで、本年2月にはアフリカで同様の会議がそれぞれ開催され、今後、各地域の意見を集約したWMAとしての方針を政策文書としてまとめていくことになっています。

実情に合う働き方改革とかかりつけ医機能充実を

 一方、国内に目を転じますと、働き方改革が重要な課題となっています。日本医師会はこの問題に関して、医療現場の実情と「応招義務」に配慮した方策を強く求めてきました。その結果、政府は「医師の働き方改革に関する検討会」を設置し、医師の働き方について別途議論を進めています。

 3月までには、会内に設置した「医師の働き方検討委員会」の答申も取りまとめられる予定でありますので、それらの意見も踏まえながら、引き続き、国に対して意見を述べていきたいと思います。

 また、少子高齢化の一層の進行が予想される中で、社会保障費は、医療、介護などを中心に今後も増加することが見込まれ、その財源をどのように賄っていくかについても大きな課題となっています。財政緊縮の立場から、成長戦略や規制緩和の名の下に、保険給付範囲を狭める圧力が予想されますが、国民皆保険を堅持していくためにも、われわれ医療側から生涯保健事業の体系化による健康寿命の延伸など、過不足のない医療が提供できるよう、適切な医療を提言し、時代に即した改革を進めていく必要があります。

 わが国では、フリーアクセスによる外来へのアクセスの良さが病気の早期発見・早期治療に寄与しています。その中心を担う「かかりつけ医」をまず受診することで、適切な受療行動、重複受診の是正、薬の重複投与の防止等も可能となり、医療費の適正化も期待できます。日本医師会としては引き続き「かかりつけ医機能研修制度」を実施することで、「かかりつけ医機能」の更なる向上を目指して参る所存です。

 また、日本医師会では、より良い医療のあり方について、国民と医師とが共に考えながら、更なる国民医療の向上に寄与していくことを目的として、日本医師会の設立記念日と「いい( 11)医(1)療」の語呂合わせにより、11月1日を「いい医療の日」に制定しました。広く国民に周知されるよう、今後もさまざまな活動に取り組んでいきたいと思います。

 最後になりますが、私は国民に寄り添い、国民の健康を守ることが医師の役割であり、その医師の声を基に、国に対してさまざまな政策を提言していくことが日本医師会の役割であると考えています。今後もWMAとCMAAOの会長として、日本のみならず世界に広く目を向け、理念を高く掲げ、人々の健康、福祉の向上に努めて参りますので、国民の皆様のご理解とご支援をよろしくお願い申し上げます。


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