効率化で経営改善 8年連続黒字達成
―自治体立優良病院「両協議会会長表彰」と「総務大臣賞」を受賞されました。
2015年度と2017年度にそれぞれ受賞しました。経営の健全性が保たれ、地域医療に重要な役割を果たした病院に与えられるものです。
経営改善と医療従事者の確保は、すべての自治体病院に当てはまるといってもいい課題です。
特に200床未満の病院では、それが深刻です。多くの病院が赤字経営。常勤医師数も新医師臨床研修制度が開始された2004年以降、横ばいの状態が続いています。
当院は122床の総合病院です。人材の確保については他の病院と同様、苦労していますが経営については幸いなことに2009年度から黒字決算が続いています。
―黒字経営を維持していける要因は何でしょう。
黒字経営を維持し続けるための「特効薬」は存在しません。業務を効率化し、地道な経営改善に努め続けることこそが必要なのです。その結果、当院は自治体病院の中で純医業収支率は全国トップ(2015年度)です。
ただ、昔から順風満帆だったわけではありません。2003年にこの地に新築移転。減価償却費の上昇などにより、大幅な赤字決算になってしまいました。
また翌年には新医師臨床研修制度がスタート。その影響で常勤医師が減り、産科を廃止せざるを得ませんでした。
自治体病院の経営状態の悪化や医師不足に対応するために、総務省は2008年に「公立病院改革ガイドライン」を策定。それに対応するために当院は「美濃市立美濃病院改革プラン」を策定しました。
2011年度の黒字化を目指して改革に取り組んだのですが、改革開始初年度の2009年度から黒字化を達成。現在に至っています。
経営改善についての取り組みの一つに病病連携、病診連携の強化が挙げられます。地域の診療所と患者さんの情報を共有することで、効率的な診療ができるようになりました。また当院で対応できない疾患に関しては近隣病院や岐阜大学医学部附属病院に紹介しています。
地域連携室を中心に連携強化に取り組んだ結果、2003年の病床利用率が77.5%だったのが90%を超えました。
また医師の事務作業を職員がサポートすることで、医師は医療に専念できるようになりました。2009年にはDPC対象病院へと移行、経費削減などの改革を進めてきました。
2014年度の診療報酬改定により亜急性期病床が廃止。それに伴って当院では地域包括ケア病床を設置しました。高齢者が多い地域の医療ニーズに応えるとともに、さらなる病床利用率の増加につながっています。
当院の医師には専門分野に加えて診療科を越えた総合医の役割を担ってもらっています。外科系が専門でも内科系にも対応してくれる医師がいれば、通常は外科系、内科系の2人で担当していた当直も1人で済みます。限られた医師数で効率の良い医療を提供するためには医師の働き方改革が必要だと思っています。
効率的な経営のためにはデータに基づいた経営分析が必須です。毎月、事務職が詳細なデータ分析をすることによって経営についての問題点が見つかります。そうすれば早急な対応が可能です。
効率的な経営には職員間の情報共有も重要です。当然、月一回の朝礼では必要な情報を職員に発信しています。電子カルテ内には院内の情報アクセスサイトを設けています。病院内のすべての委員会、経営会議の議事録をアップするようにしていて、職員は今、院内で何が起きているかがすべて把握できます。
美濃市は毎年人口が約8%減り続けていますが、高齢者人口は2030年ごろまでに約2割増えます。
これまでの発想であれば高齢者が2割増えるのなら病床を2割増やせばいいということになります。しかし政府は病床数を削減する方針を打ち出していますので、そんなことはできません。その場合は在院日数を2割短縮するなどの努力をすればいいわけです。
今後も医療体制、業務を効率化しつつ、クオリティーを保つことが必要です。
―医療面の特徴を教えてください。
地域に密着した総合的な医療を提供するとともに、当院の強みである生活習慣病、消化器疾患、整形外科疾患の治療にも力を入れています。
当院は美濃市唯一の病院であり、在宅療養支援病院の指定を受けていますので、24時間365日、在宅医療を支援しています。病院内の医療だけでなく、訪問看護など退院後のケアも当院が地域で果たさなければならない役割です。
予防医療にも力を入れています。昨年7月に「みの健康管理センター」を開設。健康診断や人間ドック、脳ドック、肺がんドックなどを実施しています。
健康管理センターでは乳がん検診や子宮頸がん検診を受ける方のための女性専用エリアを設置。待合室にはパステル調のソファを置いています。患者さんが緊張せずにくつろげるように配慮しました。センターのオープンを機に最新鋭のマンモグラフィー装置も導入しました。
みの健康管理センター2階の「みの健康ホール」では住民向けの健康教室「みの健康講座ラリー」を開催。糖尿病や認知症など毎回テーマを決めて年に6回開催しています。健康ホールの定員は150人。毎回多くの方に来ていただいており、地域の方の健康に対する関心の高さを感じます。
昨年10月には新外来棟がオープン。中央処置室や待合室、診察室の面積が広くなりました。
2008年に開設した胃や腸などの消化器疾患の診療のための「みの内視鏡センター」では現在年間約2500件の検査を実施しています。
「地域の方々の健康長寿のお手伝いをする」。それが当院の役割だと思っています。健康寿命を延ばすためには寝たきりを防ぐことが重要です。寝たきりになってしまう原因は、脳卒中による後遺症や骨粗しょう症の人が転倒することによって起こる骨折などが挙げられます。
当院は脳卒中自体には対応できません。しかし、発症の原因の一つである糖尿病に関しては、地域の糖尿病治療の基幹病院に指定されているので対応が可能です。
整形外科は常勤医師が3人体制で骨折に対応していますし、人工関節置換術、脊椎固定術などもしています。
―今後の課題は何でしょう。
来年4月の診療・介護報酬同時改定では2025年問題への対応や医療と介護の連携が求められるでしょう。
診療報酬への対応はもちろん重要です。しかし、その前に個々の病院が経営効率を上げて黒字化の達成を目指すことが大切です。また医師の地域偏在の問題を解消する取り組みを急ぐ必要があるでしょう。
美濃市立美濃病院
岐阜県美濃市中央4-3
TEL:0575-33-1221
http://minohospital.jp/