独立行政法人 国立病院機構 南京都病院 宮野前 健 院長

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旧療養所の歴史と 国立病院機構の医療

【みやのまえ・たけし】 1977 京都大学医学部卒業 同小児科学教室入局 1983 京都大学医学部附属病院教官 1986~1988 仏グスタフ・ルーシ研究所留学 1990 国立療養所南京都病院(現:国立病院機構南京都病院)小児科医長 1998同副院長 2012 同院長

 142の旧国立病院と旧国立療養所から成る国立病院機構。一般の急性期医療機関では担うのが困難な「政策医療」を事業の一つに掲げている。南京都病院の歴史と今後の展開について宮野前健院長に聞いた。

―南京都病院の歴史と特徴を教えて下さい。

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 当院の前身となる「傷痍軍人京都療養所」は1939年2月、軍人の結核療養所として開設しました。その後1945年に厚生省に移管。名称を「国立京都療養所」に改め、一般の患者さんの診療を開始しました。

 有効な治療法の確立により結核患者数は減少。1950年代後半に800床あった結核病床はユニット化し、現在は20床のみになりました。結核の後継医療として1969年に重症心身障害児(者)の病床を設け、小児科では重度の重複障害を持つ重症心身障害児(者)医療や、隣接する城陽支援学校と連携して発達障害や小児慢性疾患を診ています。

 同じ政策医療として神経内科ではパーキンソン病や筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経難病、呼吸器科では結核や肺がんを含む慢性閉塞性肺疾患(COPD)など幅広く診療しています。

 1975年には「国立療養所南京都病院」に名称を変更。2004年に旧国立病院と旧療養所を合わせて「独立行政法人国立病院機構」が発足し、当院もその一員となり現在に至ります。

―結核治療の現状を教えて下さい。

 1940年代後半まで若者を中心に結核による死亡者数が年々増加。しかし、1950年代になると有効な抗結核薬が広く使われるようになったこと、さらには医療・衛生環境の改善と相まって、り患率は急速に減少していきます。結核は「不治の病」から「治る病気」へと変わってきたのです。

 登録患者数は1965年には人口10万人あたり309人だったのが、2016年には13.9人にまで減少。特に小児結核は0.3人と世界でもトップクラスに良い成績となっています。り患率が減少したため、医師が結核を診る機会が減ったことによる診断の遅れ、大都市における若者や免疫力の低下した高齢者の発症が課題になっています。結核は今も地域的偏在を考慮して、一定水準以上の医療を確保するとした「基準病床数制度」の対象疾患で、5年ごとに各都道府県の医療審議会で結核病床数を決定しています。

 2013年に算出した京都府における結核の基準病床数は300床。しかし稼働率は10%強で、当院においても40%以下です。2018年度の改訂では70床前後になるであろうと予想しています。

―重症心身障害児(者)医療の現状と課題を教えて下さい。

 当院は一般病床が280床、そのうち240床は120床の重症心身障害者病床を含む障害者病棟です。周産期医療や小児救急医療の進歩で多くの命が助かる時代になりましたが、一方で先天的な疾患や周産期障害、脳炎・脳症などの後遺症を負い、常時医療的ケアを要するポストNICU児・ポストPICU児は増加傾向にあります。

 現在、当院では在宅療養者のセーフティーネット機能を果たすために、7床をレスパイト入院や短期入所に活用しており、定期的な利用者が50〜60人います。また在宅の重症心身障害児(者)を対象にした「通園事業所しらうめ」があります。ここでは支援学校の高等部を卒業して医療的ケアが必要な方たちに日中活動の場を提供しています。

 重症心身障害児(者)医療を含む障害者医療は医学教育の中では系統だったものは少なく、一般の医療の延長線上では対応しきれない複雑な病態を持つ、専門性の高い医療分野です。医療・医学教育の中に障害児(者)医療を取り入れていくべきであると感じています。また、医療だけでなく福祉や行政、教育機関が一元的に支援できる体制を構築し、重症心身障害児(者)とその家族が地域社会で安心して暮らせる体制を構築することが求められています。

―地域の医療機関との連携について。

 現在、京都府における重症心身障害児(者)のうち、当院のような医療機関に入院していたり施設に入所していたりする人は4割ほどで、その他6割の方は在宅で生活を送っています。それにも関わらず在宅重症心身障害者の支援システムは未確立であり、実態やニーズの把握も十分に行われていません。

 当院は厚生労働省の「2014年度在宅重症心身障害児者の地域生活モデル事業」に採択され、当院が属する「山城北医療圏」におけるネットワーク作りを進めることができました。山城北保健所の全面的な支援のもと、福祉事業所や訪問看護ステーション、特別支援学校、さらには周産期医療を行っている急性期病院なども参加する「山城北圏域在宅療養児・者の地域生活支援ネットワーク会議」が立ち上がったことで顔の見える関係ができ、意見交換の場、さらには個別支援についても話し合える場となってきました。

 在宅支援として訪問看護は不可欠です。しかし医療ニーズの高い重症心身障害児(者)の看護経験を持つ看護師は少ないのが現状です。そこで訪問看護師などを対象に、座学と実習を合わせた5日間の研修会を開催し、重症心身障害児(者)への医療的ケアや対応を学ぶ場を設けています。他にも在宅を支える家族や介護福祉士、ヘルパー、教職員や保育士といったさまざまな職種の方を対象とした研修会を開催しており、こういった研修会は今後も継続して開催していく予定です。

 当院の重要な役割の一つに結核医療の啓発・普及があります。それまでのり患率の減少傾向が1997〜1999年に増加に転じたため、厚生労働省は結核の緊急事態宣言を発令。それを契機に当院でも今日まで医療従事者向けの研修会を続けています。

 研修会は医師向けと、感染対策を担う看護師などの医療職向けに分けて実施。院内感染対策や結核患者発生時の対応などについて、情報発信や啓発に努めています。

 今年は府内の医療機関で発生した集団感染の影響もあり、例年になく参加者が多く、感心の高さをうかがうことができました。

―新病院と今後の展開について教えて下さい。

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 老朽化のため、病院の建て替え工事を進めています。2011年に5階建ての西病棟を建設。現在建設中の外来管理治療棟は年内に竣工して2018年1月には本格的に稼働します。

 1階のエントランス部分には青谷梅林で有名な城陽市らしく壁に梅のモチーフをあしらい、開放的で明るい雰囲気が特徴です。

 今後も医師会や福祉・教育行政などと協力しながら、当院が掲げる専門医療である結核を含む呼吸器疾患や重症心身障害、さらには神経難病の情報発信や啓発を進め、国立病院機構が掲げる在宅医療の支援にも力を入れていきます。

 国立病院機構の病院群は、高度先進医療を提供する病院から旧療養所の流れをくむ「療養型」の病院まで、幅広く多様性に富んだ医療を提供。病院同士の横の連携を活用した臨床研究にも力を入れています。また他の医療機関では実施が困難な政策医療分野でも活動する責務を負っており、当院もその一員として今後も病院運営に取り組みます。

独立行政法人 国立病院機構南京都病院
京都府城陽市中芦原11
TEL:0774-52-0065(代表)
http://mkyoto-hosp.jp/


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