社会医療法人 誠光会 草津総合病院 柏木 厚典 理事長

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ニーズを取り込み 予防から高度医療まで

【かしわぎ・あつのり】 1971 大阪大学医学部卒業1981 米NIHフェニックス臨床研究所客員研究員 2001滋賀医科大学内科学講座(内分泌代謝学)教授 2008同附属病院長 2014 社会医療法人誠光会草津総合病院理事長

◎「病院がつぶれる」

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 前身の水野外科( 40床)の開院が1975年。1982年に157床の病院となり、2006年には719床にまで増床しました。

 機器や設備に大きな投資をした結果、資金繰りが悪化。債務返済の繰り延べや、資産流動化をしたものの、私がこの病院に来る前の3年間は4億3000万円ずつの赤字が続いていました。

 「このままだったら、この病院はつぶれます」

 2014年5月の就任直後、職員にそう告げ、改革をスタートしました。

 当院は高度急性期から慢性期までの病床を持つケアミックス型病院です。病棟の特色を生かしたベッドコントロールが急務でした。そこで看護局を中心に、毎朝、病床調整会議を開催。経営戦略室による日々の病床管理状態の表示や病院幹部の積極的な関与で強化を図り、急性期病棟にいる患者の入院期間を短縮。病床稼働率を下げないために、紹介・逆紹介を活発化し、救急を断らないことで患者数の増加を目指しました。

 同年、全国2番目の早さで地域包括ケア病床108床を開設したことも収益増につながりました。

 長期の入院が必要な人には、急性期病床から地域包括ケア病床へ移ってもらい、在宅に向けたリハビリなどを提供する。急性期病棟の患者の在院日数を短くしながら、患者さんの状態に適した治療が可能になりました。

 結果、2013年度に平均16.9日だった在院日数が現在は12.5日。新規入院患者数は2014年の月平均640人から800人超に増え、紹介率は60%から80%へ、逆紹介率は37%程度から60%余りに上昇しています。

 収支は就任年の下半期がプラスマイナスゼロ。翌2015年度は6700万円の黒字、2016年度は1億5000万円の黒字です。

◎独自のサポートカー

 平日の昼間、「地域医療サポートカー」を運用しています。背景にあるのは、高齢独居の人や老老介護世帯の増加。「救急車を呼ぶほど重篤ではないけれど、病院に行く必要がある」。そんな場合に、かかりつけ医や高齢者施設職員などからの要請を受け、当院の看護師らが患者さんの自宅や施設へ迎えにいきます。

 車両は以前、救急車として使用していたものを利用し、ストレッチャーなども用意。肺炎、下痢などの患者さんが多く、月の利用件数は15〜20件です。

 利用者や開業医の先生からの評判もよく、地域医療を支える一助になっていると思うと、私たちもうれしいですね。介護老人保健施設など高齢者施設からの要請が特に増えていて、「施設職員が同伴できない場合にも安心」という声もいただいています。

◎「他と違う」が強み

 腹膜播種に対する外科手術、温熱化学療法などを実施する「腹膜播種センター」が当院の特色の一つです。2007年に開設。腹腔内にゼリー状の粘液物質が貯留する悪性腫瘍「腹膜偽粘液腫」に対する手術ができるのは、国内でもごく限られた施設だけです。症例数自体は多くありませんが、東京や東北、九州からの来院者もいます。

 高度肥満症に対する外科的治療に取り組んでいるのも特長と言えるでしょう。対象はBMIが35以上の肥満症で糖尿病などを合併している患者さん。腹腔鏡下スリーブ状胃切除術を実施することで、食べられる量が減り、食欲を亢進させるホルモン「グレリン」も低下。インスリン分泌を促進するインクレチンの値が上昇し、糖尿病の薬を減量したり、やめたりできる人がいるほか、尿酸値や血圧、睡眠時無呼吸症候群の改善も期待できます。

 世界で実施されているこの手術の件数はおよそ60万例。国内では300例にとどまっています。2010年に先進医療として始まったこの手術は、2014年、保険適用になりました。この後押しを受けて、今後、この減量手術を受ける人はますます増えると予想しています。

 歯科・歯科口腔外科には滋賀県を中心に近畿一円から患者さんが訪れます。顎の変形やかみ合わせの異常、埋没したような抜歯の困難症例に手術も含めて対応。開業歯科医の方からの紹介も多く、二次施設としての役割を果たしています。

◎人口が増え続ける

 滋賀県の草津市、守山市、栗東市、野洲市で構成される湖南地域は、人口およそ34万人。子どもの数が多く、人口は2030年ごろまで増加していくと見込まれている、日本である意味、特殊な地域です。

 産婦人科医は足りているものの、重症ケースに対応できる小児科医が不十分など、小児周産期医療の充実が懸案事項です。全国的に少子化で、小児科医のなり手も増えない中、医師の確保はなかなか難しい。それでも、2〜3年後までには強化したいという希望を持っています。

 高齢化率は年々上昇し、2030年ごろには、今の全国平均と同じレベルになるでしょう。人口増の影響もあり、湖南地区全体の外来患者数は約40%、入院患者数は約30%増加すると推計されています。

 今後は、急性期医療と救急、特色ある医療の提供という従来の役割に加え、この湖南地域にマッチした地域包括ケアシステムを構築する「中核」の仕事も担っていく必要があるでしょう。

 当法人は病院のほか、複数の介護事業施設を運営。草津市地域包括支援センター機能も果たしたいと希望しています。病院から在宅への円滑な移行のため、システム作りを急ぎたい。往診や訪問診療を担う医師会の先生や慢性期医療機関のドクター、訪問看護師などと一緒になって、「地域のニーズをいかに満たしていくのか」を考えることが非常に重要になると思っています。

◎元気な高齢者を

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 日本の平均寿命は80歳を超えました。定年が65歳まで延長になったとしても、仕事を辞めた後15年、どう生活するのか、ということが大きな問題になると思います。

 高齢者に生きがいを提供できる社会にならないと、この国に未来はない。高齢者が心身ともに健康で暮らし、社会の中で貢献できるようなシステムを作らなければならないと思っています。

 そのために、大事なのが検診事業と予防医学の強化。糖尿病の重症化を予防するための食生活支援や運動機能評価、プログラムの提供をする「琵琶湖心身健康道場」を病院に併設しようと計画しています。

 病気になったり、骨折したりすれば、本人のQOLが下がり、医療費は上がる。高齢者医療を支えるために健康保険組合などから高齢者医療へと払われる拠出金も一層増加することになります。

 人口減少社会、社会の生産性低下も課題になっています。「予防」に力を入れることで、さまざまな問題が解決に進むはずです。さまざまなノウハウが蓄積できたら、肥満や糖尿病患者の増加に悩む国や今後、超高齢社会を迎える国にシステムを"輸出"することもできるでしょう。

 現在、当院では糖尿病の患者さんの病院食に玄米を取り入れることで、効果的な減量につなげる食事療法の研究を進めています。情報、ロボット医学、栄養生理学、診断技術...。さまざまな分野が急速に進歩しています。今よりももっと、在宅で健康に暮らせるようになる時代が、そこまできています。

社会医療法人 誠光会草津総合病院
滋賀県草津市矢橋町1660
TEL:077-563-8866(代表)
http://kusatsu-gh.or.jp/ghk/


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