公益財団法人 慈圭会 慈圭病院 堀井 茂男 院長

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「HARE ACT」で地域での生活を支援

【ほりい・しげお】 香川県立高松高校 1973 岡山大学医学部卒業 1975 国立療養所久里浜病院(現:国立病院機構久里浜医療センター) 1977 岡山大学医学部附属病院 1986 公益財団法人慈圭会慈圭病院2007 同院長

 「わが子でも安心して任すことのできる精神科病院」を掲げ、65年前に精神科医の仲間が立ち上げた慈圭病院。理想の精神科医療を目指して先進的な取り組みに挑戦する堀井茂男院長にその思いを聞いた。

◎新しい考え方を導入、実践した歴史がある

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 1952年、岡山大学精神科の医師・伊原重彦氏(初代理事長)ら6人が、自分たちの抱く理想的な精神科医療を実現したいと設立した病院です。当初は72床でスタート。当時は精神科病院への偏見も強かった時代ですが「自分の家族をも託せるような病院」をつくろうという新しい考え方で始まりました。

 1962年には完全開放型の病棟を建築。1965年には当時まだ全国的にもめずらしかった「患者家族会」を設立しました。

 今では精神科病院で一般的に取り入れられている精神科の「デイケア」についての取り組みは、1980年に国の設置認可を受ける以前から着手していました。

 また、入院は必要ないものの、「地域で独立して暮らすには不安がある」という方のために、患者さん同士がともに暮らしながら地域で生活をする救護施設「浦安荘」も1976年に開設。現在もその役割を地域で果たしています。

 近年、国の方針もあって、精神科病院の患者さんの地域移行が望まれています。当院も、社会復帰を目指すさまざまな取り組みに早くから挑戦してきたという歴史があり、今もその心がみんなに引き継がれていると感じます。

◎ 24時間体制の「HARE ACT」

 2015年の秋から責任者の岡沢郎地域連携部長を中心に看護師、作業療法士、精神保健福祉士などの多職種の体制でチームを組んで進めているのが、包括型地域生活支援プログラム(ACT)です。

 全国にACTのネットワークもありますが、比較的新しい精神科医療での在宅支援の取り組みになります。

 国の施策としてはACTの基準はありませんが、全国ネットワークでは「24時間体制」「30分以内に行ける(キャッチメントエリア)」「人的体制」などの基準が設けられています。

 もともとアメリカで始まった考え方で、入退院を繰り返す重症の患者さんを支援し、地域で生活できるようきめ細かにサポートしようという試みです。

 岡山県内で精神科病院がACTに取り組んでいるケースは珍しいと思います。岡山県は雨が少なく「晴れの国」と呼ばれていることから、県ならではのネーミングで「HARE ACT(晴れアクト)」と名付けて活動しています。

 「HARE ACT」の特徴は、まず24時間365日の体制で支援すること。そして、利用者や家族が生活している場所にわれわれスタッフが出向いて自宅などに訪問します。

 現在、岡山市内に居住している約20人の利用者にサービスを提供しています。家族と暮らす方、一人暮らしの方などさまざまな環境で生活しています。その多くが統合失調症ですが、閉鎖病棟に入院したことがある方もいます。

 また、これまで退院後、一度地域に帰った方もいるのですが、地域で支える力がなく、結局再度入院という方も少なくありません。

 当院の「HARE ACT」は、患者さんの住み慣れた地域で暮らしたいという希望に沿って支援を行いますが、必要があれば入院中から退院後を想定してスタッフが早期に介入を始めることもあります。そして退院後も患者さんの意向に沿って支えます。

 スタッフは基本2人で訪問します。退院直後は2、3日に1回訪問するなど頻回ですが、日にちが経てば1週間に1回など間を空けます。もちろん要望があればそれだけではありません。

 「外食をしたことがないからしてみたい」「海水浴に行きたい」「神社に参拝したい」。といったさまざまな要望に応えてきました。

 地域でさまざまな経験をすることで、これまで引きこもりがちだった患者さんが、自宅での生活に喜びを感じているように見受けられます。

 また、在宅での生活は家族の協力が不可欠です。このため、ACTチームは患者さんの病状を説明したり、悩みを聞いたりと家族の皆さんをサポートしていく必要もあります。

 ACTをスタートするにあたっては病院としても不安が全くなかったわけではありません。しかしこれまで閉鎖病棟に入院していたような患者さんが、地域で生活できるようになれば、それはわれわれ精神科医のやりがいにもなります。

◎ストレスケア病床利用も増加

 2015年に新棟を建設した際に、新たにストレスケア病床8床を設けました。全室個室で、ホテルのような内装にしました。

 ストレスケア病床は、病院の入院室とは違い、治療ではなく心と体をリラックスさせることに主眼を置いています。

 本来は自宅で休めるのが理想ですが、家にいると「仕事について考えてしまう」「家では家事をしてしまうので休めない」...と感じる方もいます。そのような方に、自宅を離れ、ホテルのような空間でゆっくりと休んでもらい、心の回復を取り戻してもらおうと考えています。

 病床は、病院の最上階である7階にあります。児島湾、金甲山、常山などを見ながらゆったりと過ごせます。日常生活を離れることによって本来の健康を取り戻すきっかけになるでしょう。

 また、他の病棟とは動線が分かれています。プライバシーが守られストレスケア病床内の静かな空間で過ごすことができます。

 これまでは、企業の経営者の方、子育てや介護に疲れた女性などの利用がありました。医師をはじめ専門の医療スタッフがいるので安心して過ごせるようです。今後も活用してもらいたいと思います。

◎五つの理念をもとに

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 当院は「慈愛の医療」「最先端の精神科医療」「最高水準の医療倫理」「積極的な地域貢献」「チャレンジ精神」の五つの理念を掲げています。

 特に、地域との交流には力を入れ、住民や地域の学校の生徒さんとの交流も早くから進めてきました。精神科病院というと、どうしても警戒されがちですが、院内にある運動場で開催する運動会に当院の隣にある浦安小学校の子どもたちが参加してくれたり、敷地内で育てている芋掘りを一緒にしたりと活動を一緒にすることで精神科病院への理解を深めてもらっています。

 先日、小学生の頃、病院で患者さんと活動をしたという医学生が研修に訪れました。聞くと「交流がきっかけで医師を目指しました」というので感激しましたよ。

公益財団法人 慈圭会 慈圭病院
岡山市南区浦安本町100-2
TEL:086-262-1191(代表)
http://www.zikei.or.jp/


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