大田市立病院 西尾 祐二 院長

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新病院建設で地域密着の健康な未来を支える病院に

【にしお・ゆうじ】 1982 島根医科大学(現:島根大学)医学部卒業 島根医科大学医学部附属病院麻酔科 1985 米エール大学麻酔科留学 1994 鳥取県立中央病院麻酔科医長 1999 大田市立病院外科系診療部長兼麻酔科医長 2002 同副院長2013 同院長 2014 大田市病院事業管理者

◎新病院の概要

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 現在の病院は、ほとんどが前身である国立大田病院から引き継いだ建物です。築45年になる建物は老朽化が目立ち、耐震基準や狭い療養環境が現在の医療基準に適応できていないなど多くの問題を抱えています。

 このため、2013年に新病院基本構想を策定。病院が果たすべき役割を明確にし、その目的における機能と規模を決定、計画を進めてきました。自治体病院として政策医療、特に救急医療と小児周産期医療の充実に取り組むとともに、機能分化と集約化が進む中においても、圏域の中核病院として地域に必要な医療が提供できることを目指しています。

 今後も変わりゆく医療環境の変化に対応できるよう、設計に柔軟性を持たせました。5階建て、総床面積は1万9000㎡。現在より3000㎡ほどサイズダウンしますが、110床減の229床とするため、病室や廊下は広くなり療養環境は快適になります。

 病棟は1病棟あたり約45床の5病棟構成。急性期機能を持つ3病棟、回復期リハビリ病棟と地域包括ケア病棟が各1病棟、そして感染症病床を4床備えます。サイズをそろえることで病棟の入れ替えも可能となるよう配慮しました。

 診療科は、現在の20診療科を維持。1階が各外来、中央処置室、検査、放射線、薬剤など、2階は手術室、透析、化学療法、リハビリ、中央材料、厨房が入ります。3〜5階は北棟と南棟に分かれ、3階の北棟以外は病棟となり、その中央をナースステーションでつなぐ構造です。3階の北棟には管理部門や会議室、医局を配置します。

◎ECI方式による建設

 新病院建設では、東京五輪でも話題となったECI(施工予定技術者事前会議)方式を採用しました。施工者の技術と経験を反映させ、より優れたものを、より低コストで造ることを期待するものです。最近は多くの建設事業で採用されていますが、病院建設ではほとんど実績がありません。

 建設事業費が高騰し、病院建設において入札の不調、不落が多発していることを背景に、工期を遅らせることなく実施、かつ事業費の圧縮を図ることを目的に、この方式としました。プロポーザル審査の結果、大成建設に決定。現在は実施設計の最終的なプロセスを進めているところです。当院の試みが、これからの病院建設の一つの成功例となることを目指したいと思っています。

 本体工事は2018年度開始。2020年5月のオープンを予定しています。東京五輪が開催される年でもあります。新しい日本が始まるとも言える年に、大田市にとっても新しい医療の未来を拓(ひら)く新病院がオープンすることは意義深いものがあります。

 外構整備や現病院の解体工事を経て、グランドオープンは2021年2月ごろになる予定です。職員の士気が上がり、地域の人たちの病院への期待も一層高まることを期待しています。

◎過疎化が進む大田市のこれからと新病院の役割

 島根県は国内でも過疎化、人口減少が進んだ自治体の一つです。大田市を含む県央地域は高齢化に加え、今後さらに急速な人口減少が見込まれています。中山間地域が多く産業が乏しいこともあって、人口流出も少なくありません。地域医療を支える診療所の数は、この15年で4分の3に減少。世代交代も進んでいないのが現状です。

 市南部の山間地域では、医療過疎地や無医地区が広がっていく状況にあります。医療機関へのアクセスが困難となり、地域で支えあう「自助」「共助」にも限界が見えています。山間地域の住民の皆さんが、住み慣れたところで安心して暮らしていくには、もはや「公助」しか残されていないのかもしれません。医師会や行政と共に考えていく必要があります。

 当院は、訪問看護や訪問リハビリの機能をすでに持っていますが、今後さらに何ができるか、何をすべきなのか、新病院としても取り組んでいく重要な課題だと認識しています。

◎地域包括ケアの中で病院が目指すもの

 現在、病院の機能分化と集約化が進められています。医療の効率化を図るという大義の下、地域の病院においては、診療科が維持できなくなったり、病院の医療体制そのものも変化を迫られたりする状況にあります。

 しかし、当地のように医療機関までの距離が遠く、アクセスも悪い地域で効率化を追求しすぎれば、ますます過疎化が進行、地域の崩壊にもつながりかねません。新病院では小児、周産期医療や救急医療、地元で対応すべき一般急性期医療をしっかりと守り、若い人から高齢者まで基本的な医療が受けられる体制を堅持、地域の安全安心を守っていくつもりです。

 一方、当院で提供できない急性期医療や高度医療は出雲圏域の病院に協力を仰ぎ、当院にない慢性期医療については、市内で慢性期医療と精神医療を提供する「石東病院」、隣の川本町で回復期医療と慢性期医療を提供する「加藤病院」と連携の話し合いを始めています。 

◎働きやすい環境整備と優れた医療人の育成

 病院が新しくなるのに合わせて、従来からある院内保育所「たんぽぽ」の園庭や療育スペースを拡大しました。基本保育に加え延長・夜間・一時保育などの機能も維持していきます。子育て世代や社会進出が進む女性が、子どもを預けて安心して働ける環境を提供することで、人材確保にもつながるものと考えます。

 「新病院の"売り"は?」と聞かれますが、特徴ある魅力的な医療を用意しているわけではありません。地味ですが確実に地域医療を実践し、地域から信頼される病院を目指していきます。

 医療は患者のためのものであり、医師のパフォーマンスのためにあるわけでありません。医療はもともと泥臭い、地道な仕事だと思っています。「専門医を目指したい」「自分を高めたい」と自らを向上させることは大切なことであり、追求すべきです。しかし、専門の疾患、専門の部分しか見ないというのはどうでしょうか。

 自己研鑽(けんさん)は最終的には患者さんに還元されて意味を成すものです。にも関わらず、目の前に患者がいても「専門が違う」と見ない、見たくないとしり込みする医者も少なくありません。地域医療では専門特化した医者は必要ありません。目の前の患者を「何とかしたい」と思うスピリットと、患者さんのために自己研鑽を積む医師が必要です。

 自分の関心や利益のために働く医師ではなく、患者のために働くのが本来の医師の姿です。そんな心ある医師を育て、一緒に働きたいと思っています。

◎地域に開かれともにある病院

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 4年前に私が病院長になってから「開かれた病院」「地域とともにある病院」をスローガンに掲げてきました。病院祭りを年1回開催。毎回800人程度の地域の住民の皆さんに参加いただいています。地域の方にも出し物や売店出店などでご協力いただき、病院体験ツアー、ゲーム、骨密度測定などの企画も用意しています。

 このほか、出前講座としてスタッフが出向き、健康や疾病をテーマに講演したり、病院を訪れた方に院内講演会「ふれあい講座」を開いたりもしています。患者満足度調査の結果を公表し、病院ボランティアや地元自治体との病院合同草刈りを開催するなど、地域と共にある病院を実践しています。

大田市立病院
島根県大田市大田町吉永1428-3
TEL:0854-82-0330(代表)
http://www.ohda-hp.ohda. shimane.jp/


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