医療法人にのさかクリニック 二ノ坂 保喜 院長

  • はてなブックマークに追加
  • Google Bookmarks に追加
  • Yahoo!ブックマークに登録
  • del.icio.us に登録
  • ライブドアクリップに追加
  • RSS
  • この記事についてTwitterでつぶやく

「絆」があってこその幸せな看取り

【にのさか・やすよし】 長崎県立長崎西高校卒業 1977 長崎大学医学部卒業 同第一外科 1996 にのさかクリニック開業

 にのさかクリニックでは地域の在宅患者200人余りの診療を実施している。二ノ坂保喜院長が考える看取りとは。

k22-1-1.jpg

◎在宅医療のさらなる充実を

 日本は多死社会を迎えています。2025年には年間約160万人もの人が亡くなると予想されています。2005年の年間死亡者数は約108万人。20年間で約52万人も増える計算です。単純計算すると1年で約2.6万人ずつ亡くなる人が増えていく。それを47都道府県で単純に割ると500人強ずつ増加する計算になります。

 もちろん都会と地方では人口も高齢化率も違うので、単純計算はできません。だけど、ある程度の予測は十分可能です。毎年の死亡者数の予測が立てば、どれくらいの数の在宅医療機関が必要かを把握できます。

 現在、在宅看取りを実施している医療機関は全体の5%ほどにとどまります。死亡者数の増加に対応するため在宅看取りを実施する医療機関を増やす必要があるでしょう。

 2015年11月、福岡市医師会は「福岡市在宅医療医会」を創設。私が会長を務めています。この会は地域包括ケアシステムの構築と在宅医療の質の向上のために、在宅医療に携わる医師同士が連携を深めることを目的としています。在宅医自身の研修のほか、医療・福祉・介護関係者への研修を実施。在宅に関わる各職種のレベルアップを図ります。

 在宅医療機関と病院との連携強化も大切です。福岡市在宅医療医会が旗振り役となり、昨年から3カ月に1度、各地域の病院と在宅医療を提供するクリニックとの勉強会を開催。病院と在宅医療機関のスタッフによるグループディスカッションなどをしています。こうした取り組みを続けることで福岡の在宅医療が、より充実することを期待しています。

 病院の医師には、患者さんをご自宅に帰すためにどうすれば良いか、戻すために何が障害になるのか、それぞれの患者さんの家庭背景なども考慮しながら検討してほしいと思います。

 例えば、がんが再発した人がいたとします。痛みの緩和をしてほしいということであれば、その希望をかなえ、在宅へとつなげる。それを考えるのも医師の役割だと思います。難しいケースもありますが、病院と在宅医療機関が密にタッグを組んで対応していくことが求められるのです。

 病院が1次、2次、3次医療機関に分かれているのと同様に、今後は在宅医療機関も機能分化していく必要があると思っています。私たちのようなクリニックが24時間365日、在宅医療診療室として機能し、スタッフが少ない在宅クリニックをサポートする。今後はそんな流れに移行していくと考えています。

◎2.5人称の役割

 12月2日に「在宅ホスピスを語る会」をクリニック内で開催しました。この会は自宅で家族を看取った人が体験談を語ってくれる会で毎年開催。今年で10回目です。

 今年は、在宅で家族を看取った2人の方をお招きしました。ご主人を看取った方とお母さんを看取った方に、故人との思い出、当時の在宅介護の様子などを語ってもらいました。

 看取りとは本来、自宅で過ごす患者さんのご家族や親しい人が、その患者さんの最期の瞬間までそばにいてあげることだと思っています。それが病院に入院するようになり、その延長線上で医師、看護師が看取るようになった。やがて、それが普通のことになってしまったのです。

 今回お話ししてもらったお2人は、在宅で自分が愛する人の最期を看取りました。医師ももちろん看取りをしますが、あくまでも脇役であり、ご家族を支える立場だと思っています。患者さんとご家族の絆があってこそ初めて幸せな看取りができるのです。

 看取りの場合、1人称は「患者さん」、2人称は「ご家族」、3人称が「他人」です。私たちも他人ですが、医療従事者として2.5人称ぐらいの役割を果たせているのかなと思いますね。

 「在宅ホスピスを語る会」と同様の取り組みは県内の他の在宅クリニックや訪問看護ステーションなどでも開いています。自宅でご家族を看取った人の話を聞くことで、多くの方々に在宅での看取りについて知ってもらいたいと思っています。

◎家族の「休息」も必要

k22-1-2.jpg

 当クリニックでは毎週水曜日の午前中にカンファレンスを開き、症例報告や学会発表のための準備などをしています。

 11月18、19日に長崎市で「第8回九州在宅医療推進フォーラムin長崎」が開催されました。そのシンポジウムで当クリニックのソーシャルワーカーも発表をしたのですが、その直前の11月15日のカンファレンスで、同フォーラムのシンポジウムで発表するソーシャルワーカーが職員全員の前で模擬発表をしました。

 職員には発表を聞いて意見を出してもらいました。事前に多くの人に発表し、それについての意見をもらうことは貴重だと思っています。

 フォーラムで発表したテーマは「レスパイト入院先の開拓と取り組み〜病院も在宅の応援団〜」です。

 レスパイトとは「休息」「息抜き」といった意味です。レスパイト入院とは在宅患者さんのご家族が休息するために病院が2週間程度、患者さんを預かることです。カンファレンスでは「病気ではない人を入院させるのは保険診療上、問題がないのか」という意見も出ました。しかし、もともと病気がある人が在宅にいて入院するわけで、問題はありません。

 レスパイト入院をすることで介護に疲れたご家族がリフレッシュ。結果的に介護力が高まるというメリットがあります。

 私たちは、ご家族に積極的にレスパイト入院を勧めています。しかし、一般的には、まだまだ認知されているとは言えません。時にはレスパイト入院で、ご家族を支えることも必要なことだと思います。

医療法人にのさかクリニック
福岡市早良区野芥4-19-34
TEL:092-872-1136
http://www.drnino.jp/


九州医事新報社ではライター(編集職)を募集しています

九州初の地下鉄駅直結タワー|Brillia Tower西新 来場予約受付中

九州医事新報社ブログ

読者アンケートにご協力ください

バングラデシュに看護学校を建てるプロジェクト

人体にも環境にも優しい天然素材で作られた枕で快適な眠りを。100%天然素材のラテックス枕NEMCA

暮らし継がれる家|三井ホーム

一般社団法人メディワーククリエイト

日本赤十字社

全国骨髄バンク推進連絡協議会

今月の1冊

編集担当者が毎月オススメの書籍を紹介していくコーナーです。

【今月の1冊, 今月の一冊】
イメージ:今月の1冊 - 88. AI vs. 教科書が読めない 子どもたち

Twitter


ページ上部へ戻る