医療法人あおばクリニック 伊藤 大樹 院長

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在宅医療はプライマリ・ケア提供手段の一つ

【いとう・ひろき】1996 神戸大学医学部卒業 沖縄県立中部病院 沖縄県立宮古病院 2003 米ハワイ大学臨床内科 2006 米シカゴ・ロヨラ大学病院 循環器科 2010 米カリフォルニア州San Joaquin Hospital 循環器科 2012 あおばクリニック 2014 同院長

 「地域医療の取り組みを発展させたい」との思いのもと、2代目としてあおばクリニックを継承。精力的に活動する伊藤大樹院長が提唱する「患者中心医療」と「地域完結型医療」は在宅医療をどう変えていくのか。

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◎プライマリ・ケアは継続性が重要

 在宅医療は慢性期や回復期の患者さんの受け皿ではなく、当クリニックが目指す「患者中心」で「地域完結型」のプライマリ・ケアを提供するための手段の一つだととらえています。在宅医療そのものを目的としているわけではありません。

 来院が可能な患者さんには外来診療で。来院が難しい患者さんには訪問診療で―。いずれも同じように重要で、プライマリ・ケアを提供していくための窓口です。

 当クリニックが掲げている内科や小児科といった診療科も分かりやすくするための標榜にすぎません。内科は成人を対象とした、小児科は子どもを対象としたプライマリ・ケアを提供する役割を担っています。

 では、その中で私たちが取り組んでいる在宅医療のあり方とはどのようなものか?

 前提として1996年に米国国立科学アカデミーは、「患者の抱える問題の大部分に対処」することができ、「継続的なパートナーシップ」を築き、「家族及び地域という枠組みの中で責任を持って診療するヘルスケアサービス」をプライマリ・ケアと定義しました。

 「継続的なパートナーシップ」という観点から在宅医療の実践を考えるとき、例えば単発的に対応する往診は狭義の在宅医療とは分けて考えるべきではないか。また、訪問診療さえしていれば、すなわち在宅医療とみなしていいのだろうか。

 患者さんとご家族のことを考慮した継続的かつ包括的なケア。「生活を診る視点」が在宅医療に不可欠であると私たちは位置付けます。

◎患者さんの「ホーム」として機能

 米国にはPCMH(ペイシェント・センタード・メディカル・ホーム)という概念があります。患者を中心に据えた医療を、かかりつけ医が常に寄り添いながら支えるという考え方です。

 現状の医療の仕組みは急性期治療から慢性期治療、リハビリテーション、在宅での介護や生活支援まで患者さんが受ける医療を一貫してコーディネートできる人間が不在なのです。医療機関同士の連携は密であっても、患者さんにとっては右往左往させられていると感じることも少なくない。これを私は「ファイナンス中心モデル」と呼んでいます。

 対して、私たちが提唱する「患者中心モデル」は、患者さんがコーディネーター役であるかかりつけ医やケアマネジャーといつでも連携できる医療です。いわば私たちが患者さんの「ホーム」となって、何か疑問に思ったり不安を感じたりすれば、たとえ入院中でも在宅でもどのような相談にも乗り、サポートしています。これがPCMH(プライマリ・ケア・メディカル・ホーム)です。

◎地域を越えたつながり

 当クリニックの活動のベースの一つが、在宅ケアに関する情報交換の場として2008年にスタートした「福岡東在宅ケアネットワーク」です。

 私の父である伊藤新一郎、原土井病院の原寛理事長、当時、九州大学の教授を務めておられた信友浩一先生らが始めた勉強会「地域完結型在宅ケア研究会」を前身に発展したものです。

 特徴は「個人参加型」のネットワークであること。機関や団体でなくても入会可能です。会の目的はあくまで在宅ケアを学ぶこと。個人単位での参加にしているのは、患者さんの囲い込みなどを防ぐ意味もあります。

 また、福岡市東保健福祉センターや東区医師会と連携。症例検討会などさまざまなイベントを共催しています。当ネットワークの会員は、どの地域にいる医療者でも参加することができ、エリアを越えたつながりが構築しやすくなるのです。

 2017年2月の時点で、会員数は325人。診療所や病院の医師、看護師、保健師、ケアマネジャーなどのほか、行政、さらに弁護士や司法書士といった職種の方も所属しています。

 在宅医療は、ときに「密室の医療」とも呼ばれる面を持ち合わせています。診療所の医師の多くは1人で活動しており、なかなか相談する人が身近にいない。多職種のネットワークによって問題の共有や、在宅医療のオープン化を図りたいというねらいもあります。

 在宅医療を担う医師の不足を解決するために、「東区南部地域包括ケアネットワーク」を推進しています。メーリングリストで「代診」を依頼できるシステムで、24時間365日、訪問診療が可能な体制を目指しています。

◎当事者に学ぶ

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 2018年11月3日(土)・4日(日)、私が実行委員長を務め「九州在宅医療推進フォーラムイン福岡」を開きます。会場は「なみきスクエア(福岡市東区)」。今回で9回目の開催です。テーマは「ナッシング・アバウト・アス・ウイズアウト・アス」│。つまり「私たちのことを私たち抜きに決めないで」という意味です。

 認知症を発症後も働き続け、もの忘れ相談窓口「おれんじドア」などの活動に取り組む丹野智文さんの講演も予定。当事者や学者の提言から「当事者参加型の介護・福祉・医療」を探ります。

 日本ではかつて、患者さんは病院で亡くなるのが一般的でした。ここ10年ほどの間に緩和医療が普及し、自宅で亡くなることが重視されるようになってきました。

 思うのは、医療者側のスタンダードが一方的に変わっただけで患者さんに押し付けてしまっているのではないかということです。本質は自宅で亡くなることではなく、患者さん自身が意思決定を行い、その意思を尊重した医療を提供するよう努力することです。

 治療を中止して家で穏やかに死にたいと願う人がいて、最期まで手術に挑みたいと望む方もいます。医学的適応はもちろん大切ですが、一方で患者さんにも選択する権利があることを、立ち止まって考える場にしたいと思っています。

医療法人あおばクリニック
福岡市東区青葉3-1-6
TEL:092-663-2037
http://www.f-aobaclinic.jp/


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