浜松医科大学医学部附属病院 伊東 宏晃 病院教授/周産母子センター長

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地域に貢献する人材育成に尽力

【いとう・ひろあき】 岐阜県立岐阜高校卒業 1986京都大学医学部卒業 同大学婦人科学産科学教室入局 1996 米ウィスコンシン州立大学マジソン校医学部産婦人科 2008 浜松医科大学医学部附属病院周産母子センター講師 2009 同准教授2011 同病院教授・センター長

 母体・胎児と新生児を総合的に診る周産期医療をいち早く取り入れた浜松医科大学附属病院。一部の妊娠合併症においては、全国から診断のための血液が送られてくる。静岡県とも協力し、地域医療に貢献する人材の育成にも力を入れている。周産母子センター長である伊東宏晃病院教授に話を聞いた。

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◎周産期医療の先駆け

 今では全国的に定着している周産期医療ですが、浜松医科大学附属病院はその先駆けの一つとして取り組んできました。

 周産母子センターは、妊婦と胎児を扱う母子産科病棟と新生児を扱うNICU(新生児集中治療室)を備えています。産科医と新生児科医は、毎朝カンファレンスを行い、密に連携を取っています。麻酔科医も2人所属しており、無痛分娩や帝王切開など産科麻酔で活躍しています。

 この大学には、「臨床に根付いた研究」という伝統があります。先々代の産婦人科学教室教授で学長も務められた寺尾俊彦氏と、現在の教室代表である金山尚裕副学長の2人が築いてこられました。

 特に、羊水が母体血液中に流入することで起きる「羊水塞栓症」に関しては、日本産婦人科医会からの委託事業として、全国から疑いのある症例の血液が集まり、ここで診断のお手伝いをしています。

 また、妊娠維持や分娩時の止血に重要な血液凝固成分が欠乏する無フィブリノーゲン血症の妊婦の分娩は、世界で報告されている十数例の分娩のうち、約半数が当院での症例です。

◎増える分娩数

 当院の場合、本来は、合併症があるようなハイリスクの妊婦を受け入れる役割が大きいと考えています。

 ただ、周辺の分娩取り扱い施設の中で医師の高齢化により分娩を取りやめるところが多くなってきました。通常の分娩の「受け皿」が減るのに伴い、ここでリスクの少ない妊婦の受け入れが増えています。

 10年前に年間約400件だった当院の分娩数は、昨年度は倍以上の約850件に。母子産科病棟は17床しかなく、お産が重なると他科の病棟に入ってもらうこともあります。軽症例で母子産科病棟が満床になり、重症例の母体搬送依頼を断らないといけないという問題も起きています。

◎人材育成が急務

 今、わが国において産科医師、新生児科医師の不足は深刻です。

 静岡県は周産期の人材育成に積極的で、5年ほど前から静岡県の寄付講座「地域周産期医療学講座」を開いています。特任准教授と助教の新生児科医師の枠を増やすことができ、それに合わせてNICUも6床から9床に増床しました。

 現在、静岡県の東部、中部、西部に一つずつ、地域で中核的な役割を果たす「総合周産期センター」に指定された病院があります。ここには、全国から若手医師が研修のために集まります。しかし、周産期専門医を取得すると、また全国へ散ってしまう傾向があります。県内に残る周産期専門医が少ないのも課題です。

◎女性医師の働き方支援

 最近、産婦人科医を目指す医師のうち7割から8割が女性です。結婚、出産で職を離れる人も多い。そこで、女性医師支援にも力を入れています。妊娠・出産期間中は大学院で研究に取り組んでもらい、子育てが落ち着いた頃に、また臨床の現場に戻ってもらうことを選択肢の一つとしています。

 女性の産婦人科医師たちには、努力すれば男性と同等以上の仕事ができる可能性があることを、実例を示しながら伝えて、励ましています。

 実際ここにいる若手女性医師の中には、大学院生でありながら日本産科婦人科学会のシンポジストに選ばれた人や、日本胎盤学会の相馬賞を受賞した人もいます。

◎深刻さ増す新生児科医不足

 産科の医師ももちろん足りないのですが、新生児科医はさらに厳しい状況です。

 新生児部門がある環境ならば、新生児だけを専門的に診ることができます。しかし、多くの市中病院では小児科医としての通常診療に加えて新生児の診療を担当する場合も多い。そうすると、仕事の負担は一層大きくなります。

◎命いずる唯一の現場

 病院には多くの科がありますが、命が生まれるのは唯一、産婦人科だけです。その場に立ち会える喜びは、とても大きい。ぜひ、次世代の医師たちにも、この魅力ある職に就いてもらいたいと思います。

 私は偉大な産科医の先達に憧れてこの世界に飛び込みました。自分たちのような上の世代が生き生きとしていないと、若い人は来てくれないでしょう。

 私自身、40歳くらいから、現実がいかに厳しくとも、歯を食いしばって元気に振る舞う努力をし続けてきました。自分たちが生涯を捧げてきた「周産期医療」に従事する次世代の医師を勧誘し、育成する責任があると思っています。

◎妊婦の栄養不足を危惧

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 個人の研究としては、妊婦の栄養摂取不足が子どもの成長後の生活習慣病リスクを高めるメカニズムを調べてきました。胎児期の不適切な栄養環境が生活習慣病リスクを高めるというのは、地域や人種を超えて共通しています。

 浜松市内の妊婦の調査では、妊娠期間を通じて1日の平均摂取エネルギー量は約1600キロカロリーでした。妊娠末期には2400〜2500キロカロリー必要なので、全然足りていないと言えます。

 日本では、1980年代に平均3200gほどあった出生体重が、減り続け、現在は3000gを切っています。

 かつて妊娠中毒症と言われた妊娠高血圧症候群の予防のため、1990年代後半から体重をあまり増やさないよう指導されてきました。それと、日本人女性特有のやせ願望とが合わさり、負の連鎖になったのではないかと思います。

 妊婦にとって体重の増えすぎは確かに良くありませんが、生理的な増加より少ないのは問題があります。厚生労働省が出している母子の健康水準向上のための指針「健やか親子21」に目安があります。

◎次世代の健康増進を目指して

 胎児、新生児や乳幼児の時期における栄養などさまざまな環境が、成人期における生活習慣病のリスクを形成することが注目されています。産科医として、妊婦管理を改善して将来世代の健康増進を図るべく基礎的な研究も行っています。

 浜松医科大学の「子どものこころの発達研究センター」では、浜松市内で生まれた約1200人の子どもの発育や精神発達を胎児期から詳細に継続して調査しており、最年長の対象者は現在8歳になっています。私たち周産母子センターも協力し、臍(さい)帯血や胎盤なども提供してもらっています。

 また、妊娠マウスを用いた基礎研究にも取り組んでいます。病の起源が胎児の時期にさかのぼることが、少しずつ明らかになりつつあります。実際、母体の妊娠糖尿病の血糖管理を適切に行うことで、子どもの2型糖尿病発症リスクを軽減できることが報告されています。次世代の健康長寿に寄与するという視点からも、周産期医療の発展を目指して頑張っていきたいと思っています。

浜松医科大学医学部附属病院 周産母子センター
静岡県浜松市東区半田山1-20-1
TEL:053-435-2111(代表)
http://www.hama-med.ac.jp/hos/cent-clin-fac/perinatal-ctr/


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