国家公務員共済組合連合会 浜の町病院 一宮 仁 院長

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急性期医療を担う総合病院であり続ける

【いちみや・ひとし】 福岡県立修猷館高校卒業 1976九州大学医学部卒業 同第一外科入局 1987 スウェーデンカロリンスカ研究所留学 2005 九州大学医学部臨床教授 2009 国家公務員共済組合連合会浜の町病院副院長 2014 同院長 2016 福岡市医師会常任理事 福岡県医師会勤務医部会委員長

 故郷の年老いた両親がこの病院に来たら、どう感じるだろう―。

 浜の町病院の一宮仁・院長は、職員にこんな問いかけをしながら、「優しい視点」で病院をつくる大切さを説く。移転から4年。新病院となって、何が変わり、今後、どんな病院を目指していくのか。

◎大きく変わったのは「職員の意識」

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 当院は36診療科、468床。急性期の総合病院です。旧病院のころは520床を標榜していましたが、実際の運用病床数は450床。稼働病床数は新病院になって増えています。

 移転を機に、診療科・病棟の編成が変わり、電子カルテを導入。検査機器が新しくなって、検査を受ける患者さんの負担は軽くなり、精度は向上しました。手術室を拡張して部屋数も増やし、院内保育所を新設。災害に強い病院にするため免震構造、オール電化にもしています。

 ただ、一番大きく変わったのは、職員の意識だったと思います。

 新病院建築と移転は、病院にとって何十年かに一度の大イベントです。患者さん中心で、かつ働きやすい病院をみんなで考え、医療を切れ目なく提供しながらの引っ越しを実現するために、全員が協力しました。

 その過程で、職種を越えた連携ができ、他部署の大変さや苦労も知った。それによって、その後のコミュニケーションも格段にスムーズになり、まとまりも一層出てきたと思います。

 院内の雰囲気が明るくなり、離職率も下がりました。私が院長になったのは、新病院開院の半年後。当時の新人看護師の離職率は1年でおよそ3割で、全国平均の2倍ほどありました。

 そのころ私は、「この離職率の高さは、採用試験が悪いか、教育が悪いかのどちらかだ」と考えていましたが、理由はそれだけではなかったのですね。新病院になった翌年には新人看護師の離職率が1割程度に激減。長く働き続けてもらうためには、各部署の努力だけでなく、きれいな施設、動線なども含めて働きやすい施設であることも大切だということに気づきました。

◎診療科ごとに活躍の仕方を変える

 私は、患者さんからも地域の医療機関からも「浜の町病院は良い病院だ」と言ってもらえる病院を目指しています。そのための方法の一つが「急性期の総合病院であり続ける」ということです。

 次の診療報酬改定で、現在25%の重症度、医療・看護必要度(重症患者割合)が、さらに上がるとも言われています。すると、重症患者割合が低い診療科は維持しにくくなってくる。特定の診療科に「特化・集中」して経営するという考え方もあるでしょう。

 しかし、ここでは重症患者割合が低い診療科もなくさない。急性期病院でも今後、高齢患者がますます増加します。高齢者の疾患は複合的で、治療が同時進行であることも多い。だからこそ、患者さんにとっての利便性を考えると、できる限り総合病院でありたいと思うのです。

 今後、医療・看護必要度が低い診療科の医師は主治医として直接入院患者を受け持つのではなく、入院患者の中に自分たちの分野の病気を合併しそうな人やしている人がいる場合にサポートする、という形に活躍の仕方が変わってくるのだと思います。それが他診療科の医療者や患者、家族にとって、大きな安心につながるはずです。

◎「早く退院させなさい」と言わない

 「やみくもに『早期退院』と言わない」のも、方針です。

 今は、急性期病院を退院した患者さんは地域包括ケアや回復期リハビリの病床がある病院へ移り、その後在宅へという流れになります。しかし、この地域はまだ地域包括ケアや回復期リハ、在宅医療の受け皿が十分に整っていないのです。

 ですから私は職員に、「患者を急いで退院させなくても良い」と伝えています。低侵襲手術などで回復が早い患者さんは短期間、必要がある患者さんは少し長めに、病院で過ごしてもらう。そのメリハリで、2016年度の平均在院日数は9.4日です。

 医療政策はめまぐるしく変わっています。その時々での対応も当然必要です。しかし、本来やるべきことをしっかりとやり、地域での信頼を得て愛される病院でいるという「揺るぎない基盤づくり」こそが、最も大事なことだと考えています。

◎連携強化で切れ目のない医療を

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 もともと婦人科と血液内科が強い病院で、外科の患者さんも多い。乳がん、大腸がん、肺がんが増えているのは世の中の傾向と同様です。

 移転後、紹介数の増加に伴い、新規患者数が伸びています。旧病院は駐車場が狭かったため、新病院では250台分を確保。福岡都市高速の天神北ランプを降りてすぐの場所に建てたこともあり、福岡市内だけでなく、粕屋郡や筑紫郡など従来よりも遠方から来院する方が増えました。

 カバーする医療圏が広がっていますので、地域連携をさらに進めていきたいと思っています。この病院の医師も看護師もメディカルスタッフも、先進的であろうと努力を重ね、さまざまな地域での会合などに呼ばれて講演したり、指導したりするようになっています。

 地域医療構想で掲げられている「切れ目のない医療」のためには、その連携をさらに強化する必要があります。

 5年後、10年後、認知症などの方が増えるのに伴い、目が離せない入院患者さんも多くなると考えています。今、当院の病棟で「少し手をかけて看る必要がある」と認識されているような、ある意味特別な高齢患者さんの状態が、「普通」になる。スタッフの負担や人件費などを考えると、介護ロボットなどの導入が必要になるのかもしれませんね。

 病院内だけでなく、地域全体でも同様のことが課題になると思います。構想をスムーズに進めるためには、急性期病院での治療を終えた方を、家族やかかりつけ医、そして地域全体で診ることができるような体制整備が急務だと感じています。

国家公務員共済組合連合会浜の町病院
福岡市中央区長浜3-3-1
TEL:092-721-0831(代表)
http://www.hamanomachi.jp/


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