地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院 原田 明生 理事長・病院長

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競合よりも協働で地域医療を支える

【はらだ・あきお】 1974 名古屋大学医学部卒業1983 米国カリフォルニア大学留学 2007 岐阜県立多治見病院主任部長兼消化器外科部長2010 地方独立行政法人岐阜県立多治見病院理事長兼病院長

 岐阜県立多治見病院は地域の高度急性期・急性期を担う基幹病院。現在さらなる病院機能の強化を図るべく、新中央診療棟の整備計画が進行している。

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―新中央診療棟を建設予定です。

 現在、基本設計の段階で、建設に先駆けて周辺設備を整えています。新中央診療棟は5年後の2022年の完成を目指しています。

 今年6月、高精度放射線センターに最新の放射線治療装置「トゥルービーム」を設置完了。来年4月に運用を開始する予定です。

 「トゥルービーム」はがん病巣にピンポイントで短時間にエックス線を照射でき、副作用の少ない治療が可能です。また頭頸部や体幹部の病変も治療対象となります。

 私は十数年前にヨーロッパの医療視察をしました。当時から欧米では放射線治療が盛んに実施されていましたが、日本ではまだそれほどではありませんでした。

 私は外科医で手術を中心にがん治療をしていましたが、今後は放射線治療が大事になってくるだろうと、その当時から考えていたことを覚えています。

 当院に来たのは2007年。この病院は当時から放射線治療に力を入れていました。従来の治療装置の老朽化もあり、2011年に新しく高精度放射線治療装置「ノバリス」を導入し2台体制としました。

 今回は、古い装置の更新として、「トゥルービーム」の導入を決断したわけです。今回の導入により、地域がん診療連携拠点病院として今まで以上に最新の放射線治療が提供できるようになります。

 4月には血液浄化センターの運用を開始しました。これまで透析ベッドは6床でしたが、15床に拡充しました。

 また来年の春には新しい院内保育所の建設を開始。2019年2月に開設予定です。

 新中央診療棟の建設工事は2020年に開始する計画です。現在の中央診療棟はまもなく築40年と老朽化し、手狭になってきています。また増築を繰り返してきた歴史があり、決して効率的な動線だとは言えません。

 より良い外来診療、急性期医療、周産期医療、災害医療を提供するためには新しい診療棟を建設し、医療機能を拡充することが急務だったのです。

 新中央診療棟完成後の目標として、年間の手術件数は現在の1.2倍の9000件、化学療法は外来が1.7倍の2万400件、入院が1.5倍の1900件と設定しました。放射線治療の件数は今の1.4倍の1万2200件になると予想しています。

―どのような建物になりますか。

 鉄筋コンクリート造、6階建て。救急外来とのアクセスを重視した配置で、屋上には防災ヘリが着陸可能なヘリポートを設置します。

 手術室は現在の8室から4室増の12室。その中にハイブリッド手術室と、将来的にロボット手術の実施が可能な大手術室を含む予定です。近い将来の手術支援ロボットの導入に備えてハード面を整えておく必要があります。

 手術室は使用済みの物品を回収する廊下を設けた回収廊下型設計を採用します。回収廊下型にすることにより清潔機材と非清潔機材の動線が区別できますし、スタッフの動線を効率化できます。

 また、地域がん診療連携拠点病院としての機能を強化するため、化学療法センターを40床に拡張(現在は20床)する予定です。

 4階には救命救急センターを設置。ICU8床、CCU3床、HCU9床。

 5階は周産期母子医療センターで、NICU(新生児集中治療室)9床、GCU(回復治療室) 11床を設置する予定で、共に拡張整備が可能な構造にします。

 当院は災害拠点病院です。新中央診療棟は、地震などの大規模災害に対応するために免震構造を採用します。病院に隣接する土岐川が豪雨によって増水・氾濫(らん)した場合の浸水被害を防ぐために、高額放射線機器は2階に、エネルギー関連装置は上層階に設置予定です。

―2017年度自治体立優良病院賞を受賞されました。

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 この賞は過去5年以上黒字経営が続いている病院で、かつ地域医療に貢献していると評価された病院に贈られます。

 当院は、8年前に地方独立行政法人へと移行。以来、7年間黒字経営を続けています。

 独法化したことで意思決定を院内で迅速にすることができるようになりました。欲しい人材がいたり機器があったりすれば、すぐに採用、導入することが可能です。

 一般企業も同じだと思いますが、意思決定においてはタイミングが重要です。2、3年かけて物事を実行していたのでは遅いということが多々あります。

 診療報酬改定は2年ごとに実施されます。スピーディーかつフレキシブルに対応する必要があるのです。独法化が経営の効率化にもつながっていると感じています。

 地域連携に関しては東濃・可児地域の各市で中心的な役割を果たしている7病院に声をかけて3年前に「東濃・可児地域病病連携推進会議」を発足させました。

 年2回の会議で各病院の役割分担と連携強化に向けた話し合いを重ねています。それぞれの病院がお互いの役割・機能を明確化し、東濃・可児地域の限られた医療資源を最大限有効に活用することを目的にしています。

 当医療圏は愛知県の名古屋医療圏と近接していて、地元の東濃・可児地域からも相当数の患者さんが名古屋地域の病院に行っていると推測されます。しかし、私はできる限りこの地域で医療を完結させたいとの思いがあります。

 そのために当院では地域包括ケア病棟、回復期リハビリテーション病棟などは持たずに急性期、救急、周産期、がん医療などに特化して当院にしかできない領域を担っていきます。そして、その後の回復期、慢性期医療を他の病院にお任せするようにしています。

 医療は専門分化が進んでいて、どこの病院も最先端の医療機器をそろえるのは、効率的ではありません。それぞれの病院が得意な分野と不得意な分野を補い合うことによって効率的な地域医療が提供できるわけです。

 当院の平均在院日数は約11日です。これも後方病院との連携がスムーズな証しだと思っています。

 医師が足りない地域の病院への医師派遣もしています。中津川市民病院の脳神経外科には医師が週1回手術補助で行っていますし、土岐市立総合病院の循環器内科にも医師が行って外来診療を担当しています。

 当院も医師不足の診療科もありますが、できる限り連携を深め、地域の病院全体で互いの弱い部分を補い合うことで、住民の皆さんにより良い医療の提供が可能になると考えています。

 救急車の受け入れ台数は年間約5000台、応需率は99%以上と「断らない救急」を実践しています。

 当院は東濃・可児地域の中核病院です。これからも地域の病院、クリニックなどと共に地域医療を支えていきたいと考えています。

地方独立行政法人 岐阜県立多治見病院
岐阜県多治見市前畑町5-161
TEL:0572-22-5311(代表)
http://www.tajimi-hospital.jp/


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