南和広域医療企業団 南奈良総合医療センター 松本 昌美 院長

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南和の医療は南和で守る

【まつもと・まさみ】 1982 奈良県立医科大学医学部卒業 1993 奈良県立医科大学助手(第3内科) 2006 奈良県立五條病院副院長兼附属看護専門学校長 2008 奈良県立五條病院院長2016 南和広域医療企業団副企業長兼南奈良総合医療センター院長

 2016年4月、南和医療圏の公立3病院が統合し南和広域医療企業団が発足。その中で唯一の2次救急医療機関として救急医療を担い、今春ドクターヘリの運行を開始した南奈良総合医療センターの取り組みを聞いた。

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◎2016年4月に開院

 1市3町8村から成る南和医療圏は奈良県の面積の約64%と広大な面積を占めています。この地域の人口は県全体の約5.5%。高齢化率は2015年時点で36.6%と、過疎化と高齢化が特徴的な地域です。

 地域には県立五條病院(五條市)、町立大淀病院(大淀町)、国保吉野病院(吉野町)と三つの公立病院がありました。どの病院も急性期を担っていたため、医療者も資源も分散し、医療機能が低下。地域の救急搬送は約4割しか受け入れることができず、回復期・慢性期を含めると、この医療圏の入院患者のおよそ6割が他の医療圏に流出していました。

 2006年、大淀病院に入院していた妊婦が脳出血を起こし、より充実した医療機関への転送を試みるも、19の病院で断られました。結果、子どもは無事に生まれたものの、母親が死亡する痛ましい出来事となってしまったのです。

 この出来事は南和医療圏の医療体制を見直す契機になり、南和公立3病院の機能再編が始まりました。

 「南和の医療は南和で守る」を基本理念に掲げ、新たに建てた南奈良総合医療センターに急性期を集約。大淀病院を廃院して、五條病院と吉野病院の2病院を回復期・療養期に特化し、体制を再構築しました。

◎2017年3月ドクターヘリが始動

 南和医療圏は南北に長く、一番離れた十津川村から当院まで救急車だと約2時間かかってしまいます。これでは一刻を争う患者を救うことは不可能です。

 そこで、南和医療圏唯一の2次救急医療機関として「地域救急を断らない救急センター」という使命を果たすべく、奈良県立医科大学(橿原市)が主体となって、ドクターヘリの運航を開始。当院の屋上ヘリポートを発進基地としました。

 これにより、県内のどこでも15分以内で駆けつけることができるようになりました。運用を開始して6カ月で出動は185件。平均するとほぼ毎日出動している状況です。

 救急の要請を受けた際に、患者の重症度ではなく、意識障害やショック症状などのキーワードに当てはまればドクターヘリが出動するという、「キーワード方式」を採用しています。

◎救急搬送の受け入れ状況の変化

 開院して1年間で約4100件の救急搬送を受け入れました。以前は公立3病院で約2000件の救急搬送を受け入れていたので、その約2倍を当院だけで受け入れていることになります。

 救急隊は、重症多発外傷の治療や心筋梗塞に対するカテーテル治療といった高度医療を要する場合など、患者の状態によって3次救急医療施設である奈良県立医科大学高度救命救急センターに搬送します。

 また患者や家族の要望があれば、かかりつけの病院に搬送することもありますので、この医療圏の約7割の救急搬送を当院が受け入れている状況です。集中して救急車が来る場合などやむを得ず断ることもありますが、当院にくる要請の95%は受け入れています。今後も100%断らない医療を目指します。

◎スタッフ確保と病病連携

 3病院の医療スタッフは、南和広域医療企業団でコントロールして人員を配置しています。また、奈良県立医科大学の強力なバックアップ体制によって、各専門医を含めて医師を派遣してもらっています。

 周産期については、当院の産婦人科医1人で分娩まで対応することは難しいため、大学から当院に来てもらった医師や助産師が妊婦健診・産後の母子健診を行い、分娩時はここから車で20〜30分の大学のメディカルバースセンターにつなぎます。

 大学と当院で周産期の電子カルテを相互に閲覧できるシステムにしているので、患者の情報共有体制は万全です。

 正常分娩はもちろん異常時も大学の総合周産期母子医療センターで対応することができるので、患者さんも安心して出産することができます。

◎ハードもソフトも災害医療体制

 これまで五條病院が担っていた機能を引き継ぐ形で災害拠点病院に指定されました。新たな建物は免震構造で、屋上へリポートには防災ヘリも離発着が可能。隣接する看護専門学校の体育館には冷暖房を完備し、災害時には200人以上を収容できます。

 当院のDMATは2チーム。循環器内科の守川義信部長は奈良県DMATコーディネーターを務めており、ソフト面も充足しています。開院して2週間後に起きた熊本地震の際も、DMATを派遣するなどして、災害拠点病院としての役割を果たすことができました。

◎へき地医療支援の取り組み

 当院では2018年度から、総合診療専門医を取得するためのプログラム「奈良県総合診療医プログラム」を開始します。当院で2年間、南和医療圏の公立へき地診療所で2年間、計4年間の研修プログラムです。

 これまでも自治医科大学出身の先生を受け入れて実施していました。診療所によっては指導医がいる場合もありますし、仮に1人で診療する場合にも、当院、五條病院、吉野病院の3病院と電子カルテを共有・閲覧したり、テレビ会議システムを使って相談したりすることもできます。不安を抱え込まずにへき地での実習を行うことができると思いますよ。

◎「笑顔と感謝にあふれる病院」を目指して

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 南和医療圏の医療体制が整備されたことで、他の医療圏への患者の流出を食い止めただけでなく他の医療圏から患者が流入してくるようになりました。今後は流入による患者の増加にも、また一方で過疎化が進むことによる人口の減少にも、柔軟に対応できるシステムを作っていく必要があると考えています。

 高齢者は肺炎や骨折、脳梗塞などによりすぐにADLが落ちてしまいます。そういった患者さんが退院した後、この南和医療圏で在宅医療や介護、福祉とシームレスにつながり、診ることができる地域包括ケアの実現を目指します。

 日本の平均よりも20年先を行くと言われるように、南和医療圏の高齢化は深刻です。しかし、医療や福祉、それに教育が充実すればこの地域にもたくさんの人が集まる魅力があると思うのです。

 「20年先を行く」ということは、裏を返せば「日本の最先端にいる」ということにもなります。大学では標準的な医療を学びますが、ここで科学的なエビデンス(根拠)を発信すれば、高齢社会の医療の教科書になりうるのです。私はこれをチャンスととらえていますよ。

 「笑顔と感謝にあふれる病院」が3病院に共有するモットーです。病院それぞれの色は違えども、理念が共通であれば、同じ方向に向かって協働することができる。「どの病院に行っても笑顔で迎えてくれる」と患者さんから言われるような病院をこれからも築いていきます。

南和広域医療企業団 南奈良総合医療センター
奈良県吉野郡大淀町福神8-1
TEL:0747-54-5000(代表)
http://nanwairyou.jp/


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