神戸大学大学院医学研究科 肝胆膵外科学分野 福本 巧 教授

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難治性肝胆膵疾患の治療限界の克服に挑む

【ふくもと・たくみ】 1987 滋賀医科大学医学部卒業 神戸大学医学部附属病院医員 1994 ドイツ・フンボルト大学留学 1999 神戸大学附属病院医員 2009 同大学院医学研究科肝胆膵外科学分野准教授 2017 同教授

 2017年6月1日付けで、肝胆膵外科学分野に福本巧教授が就任した。国内外から期待を集める、難治性肝胆膵疾患治療への新しい道。まいた種は実を結び始めている。医療未踏の地に果敢に踏み入る、福本教授から話を聞いた。

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◎神戸大学肝胆膵外科の使命と強み

 1967(昭和42)年開設の「旧第一外科」の流れを汲(く)む肝胆膵外科は、外科学講座の再編により、2007年に誕生しました。発足から10年。難治性肝胆膵疾患の国内における最終治療拠点の一つとして重要な役割を担っています。

 外科学講座の再編成で専門領域の重複が解消したことによって、効率的な教室運営が進み、手術症例数は増加しました。今年開院した第二附属病院「国際がん医療・研究センター」(神戸市中央区)との連携のもと、今年度は450例を超えると予測しています。

 全国各地から状況の厳しい患者さんを受け入れながら、肝臓や膵臓切除の手術死亡率が1%以下の実績は、全国集計と比較しても良好です。

 ベースとなる手術手技の洗練により、高難度手術へのトライを恐れず、なおかつ長期・短期の治療成績が満足できるものであるよう力を尽くしています。

◎大学の総合力を結集患者さんに優しい医療を

 肝胆膵外科の大きな特色として、神戸大学を基盤とした高いレベルのチーム医療が挙げられます。他科の医師、看護師、検査技師と連携できることは大きな強み。大学全体を巻き込んだ総合力で、難治性疾患から逃げることなく、外科の可能性に挑戦しています。

 私たちが第一に考えるのは、患者さんが納得できる診療に力を尽くすこと。いかに技術が発達し、画期的な治療が開発されたとしても、すべての患者さんを完治させることはできません。しかし、不断の努力で得た技術による最善治療と、患者さんに優しい真摯(しんし)な姿勢で、理解を得ることができると考えます。

◎医工連携で患者さんに先端技術を届ける

 基礎分野の研究はもちろん、医療機器・技術の開発にも総力を結集して取り組んでいます。

 昨年、神戸大学先端融合研究環に立ち上げた医学と工学のプロジェクトでは、医工学連携による新たな医療技術を多数推進。大事なのは自分たちで研究した技術を患者さんにフィードバックし、難治性疾患の治療を可能にすることです。

 例えば、腹部・骨盤部の切除不能悪性腫瘍に対するスペーサー併用粒子線治療では、独自の「吸収性スペーサー」を開発。

 粒子線治療は優れた抗腫瘍効果がありますが、腹部は消化管が近接するため肝がん、膵がん、胆管がんなどへの対応が非常に困難でした。

 そこで、「吸収性スペーサー」を手術で留置し、腫瘍と消化管の間にスペースを確保することで、消化管を保護しながら腫瘍全体に根治的な粒子線照射を可能に。腹部に留置した「吸収性スペーサー」は、良好な放射線遮へい力を有しながら、3カ月間で体内に吸収されます。

 2016年12月の段階で「スペーサー併用粒子線治療」の実施は合計162例。80%以上の局所制御を達成しています。

 この開発事業では、神戸大学大学院工学研究科、兵庫県立粒子線医療センターほか、オールジャパンの研究開発体制を構築。すでに臨床試験が終了して2018年度中の薬事承認を目指しています。

 この例はすでに成果の「収獲段階」にあります。一つの事業を成功させるためには、大学全体を巻き込んだたくさんの種まきが必要で、私たちは日々、そういった研究開発に地道な努力を重ねています。

◎関西でも数少ない移植手術を担う拠点

 当科は発足当時から、難治性肝胆膵疾患の治療限界の克服を重要な使命としてきました。実現のため臓器移植を推進し、全国から多数の患者さんを受け入れています。

 生体および脳死肝臓移植については、肝炎ウイルスを原因とした末期肝硬変や肝がん治療の選択肢の一つとして推進。脳死膵臓移植についても、膵臓移植実施認定施設としての使命を果たしています。

 こういった移植手術は、大学病院の総合力が問われます。肝胆膵外科のみならず、内科や心臓血管外科、麻酔科、ICUなどの専門力の維持と協力が重要になってきます。移植は私自身の専門でもあり、今後さらに力を入れて取り組んでいきたい分野です。

 現在、関西エリアで肝臓移植を実施しているのは神戸大学、京都大学、京都府立医科大学、大阪大学の4カ所です。昨今、ドナー(臓器提供者)の数も増えてきていますので、私たちは近畿の受け皿として移植に対応できる体制を死守していきたいと考えます。

◎既成概念を超え考える力を持つ医師に

 もう一つ、外科学講座の重要な使命に、若手外科医の育成があります。手術のカンファレンスでは振り返りを重視。また研修医に向けては、年2回「神戸大学外科学講座手術手技セミナー」も実施しています。

 外科医に必要なことは優しい心と品格、技能。さらに、常識ばかりにとらわれず、発想豊かに自分で考える力を持ち、未踏の地に踏み入れる気概を持つこと。医療現場は光が当たる場面だけではありません。99%が単調です。それに耐え、こつこつと真面目に努力を積み重ねていくことも大事です。

 肝胆膵外科学を志してくる人々は、難度の高い手術が念頭にあり、もともとのモチベーションも高いと感じます。優れた次世代の外科医ができるだけ早く増えていくため、きちんと組織づくりをした上でチャンスを与えることが大切だと思います。

◎世界をリードする最先端の医療へ

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 神戸大学肝胆膵外科では、つねに新しい治療法を開発し、検証しながら臨床に組み入れることで治療の可能性を拡げてきました。その伝統を引き継ぎ、「患者中心の医療」「安全な医療」「世界をリードする最先端の医療」「若手外科医の育成」を目標に、さらなる発展を遂げていきたいと考えます。

 目指すゴールは「治らない患者さんを治す」こと。手術のレベルアップだけでなく、他の治療法を開発し組み合わせることで、限界の克服に挑戦しています。

神戸大学大学院医学研究科 肝胆膵外科学分野
神戸市中央区楠町7-5-2
TEL:078-382-5111(代表)
http://www.med.kobe-u.ac.jp/hbps/


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