医療法人翠松会 岩城クリニック 兼田 康宏 理事長

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老いも若きも安心して住める町に

【かねだ・やすひろ】 香川県立丸亀高校卒業 1992 徳島大学医学部卒業 1997 同大学院修了 同非常勤講師2000 徳島大学病院精神科神経科助手・外来医長 2002米国ヴァンダービルト大学留学 2006 岩城クリニック

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◎家族への啓発が早期発見につながる

 2006年、私が当クリニックに赴任し、心療内科を開設した当時、最も多かったのはうつ病の患者さん。次に不安神経症、3番目が認知症でした。現在は高齢化を反映して認知症が最多です。さらに認知症と不安神経症が併存していたり、うつ病の症状として認知機能障害があらわれたりします。

 高齢者のうつ病と認知症との関連は、まだはっきりとは分かっていませんが、例えばレビー小体型認知症の初期段階からうつ病のような症状が見られることもあり、当院でも鑑別が難しい患者さんが増加しています。

 診断が難しい場合はまずうつ病を仮定して治療にあたるのが基本。その経過を見ながら治療方針を定めていきます。患者さんの多様化が進んでいることを感じています。

 当クリニックは内科、外科、心療内科をもち、認知症を中心に心身の両面にアプローチする診療に力を入れています。

 この3部門をそろえる医療機関は、徳島県の中でもあまり多くはないのです。通常の外来診療に加えて認知症専門医による「もの忘れ外来」や、糖尿病専門医による「糖尿病外来」なども開設。企業を対象とした検診、阿南市の委託事業として病児・病後児保育にも取り組んでいます。

 また、デイケアの利用者は1日あたり約50人。理学療法士と作業療法士をはじめとするスタッフが、質の高いリハビリを提供するためのチームづくりに努めています。

 私は認知症サポート医として阿南市の認知症初期集中支援チームや、市の介護認定委員会の活動にかかわっています。

 患者さんを適切な治療に結びつけるためには、まず早期に発見する仕組みづくりが必要です。認知症患者さんは、多くのケースでご家族が連れてくる。ご自身で「自分は認知症ではないか」と疑って来院されることは少ないのです。

 ですから、ご家族への啓発が非常に重要なのです。みなさんの悩みをどうやって拾い上げ、いかにして少しでも早く治療をスタートするか。地域における認知症対策は、この点に尽きるのではないかと思います。

 治療については薬物の使い方がポイントです。保険適用の4剤を患者さんに合わせてうまく組み合わせ、使用するタイミングを見極めることで、認知症の進行を少しずつ遅らせることができるようになってきました。

 各種の研究データや私自身の治療経験を踏まえると、適切に実施された薬物療法の効果が大きく期待できるのは、現在のところ「4年間」が一つの目安だと考えます。

 認知症の患者さんの多くが75歳以上であることを考えると、人生の4年間を安心して過ごせるようになることには、非常に大きな意義があるのではないでしょうか。今後、さらに期間を延ばせる可能性も十分にあると思います。

◎積極的に動いて地域を巻き込みたい

 認知症の進行を予防するには、一般によく知られているとおり、食事、睡眠、運動の改善、知的活動の推進の四つが基本です。生活習慣病との関連も指摘されていますから、高血圧や糖尿病の指導も重要。近年の研究では、早い段階で医師が生活指導に介入することによって、認知症の発症を遅らせたり、進行スピードがゆるやかになったりすることが明らかになってきました。

 食事は、動物性を避けて、野菜や魚介類を中心にした「地中海風」の内容をお勧めしています。高齢になるほど眠りが浅く、短くなっていきますから、決まった時間帯に集中的に睡眠を確保できるよう努力してもらう。

 運動は毎日続けるにこしたことはないが、週末の散歩だけでも習慣化していただきたい。気持ちの面でもリフレッシュできるでしょう。

 認知症になる方がみんな、暴飲暴食など、大きく乱れた生活を送っているわけではありません。ただ、やはり何かしらの面で、生活習慣を改善する必要がある、そんな患者さんが多いこともたしかだと思います。

 私たちの指導の内容を理屈としては理解できていても、生活の改善を行動に移すのは難しい。だからこそ、家族の存在が極めて大きいのです。

 知的活動として取り入れやすいのは、声に出して新聞記事を読むことやラジオのニュースを聞くこと、自分の考えを整理して、日記をつけることなどです。

 ただ、患者さんが自分だけでやろうとするとハードルが高い。そこでご家族に新聞を読んで聞かせたり、ラジオを一緒に聞いて内容について語り合ったり、会話しながら散歩したり。五感を使えるように、ご家族に協力してもらうことが大切です。

 一方で認知症治療の基本は、患者さんが自分でできることは、できるだけ自分でやってもらうことです。家族や周囲の人は、あくまでも補助の役割。何もかも干渉してしまうと、それまで維持できていた認知機能まで低下し、さらに認知症を悪化させてしまう恐れもあります。

 患者さんとのかかわりにおいて、どこで線引きをするべきなのか、最初は感覚がつかめないものです。それは、それぞれの家庭が学習を重ねながら、見つけていかなければなりません。その意味でも、家族の積極的な参加が必要だと思います。

 同時に、一人で暮らしている高齢者や、老老介護の家庭に対して、誰がかかわっていくのかという問題があります。しばらく姿を見かけないと思ったら、すっかり認知症が進行していた。問題行動を起こして、ようやく発見された―。

 民生委員、地域包括支援センターの職員、介護ヘルパーなどが連携を密にしており、認知症初期集中支援チームの活動も円滑になってきました。私たち医療機関も定期的な会議を開き、対応について話し合っています。しかし、まだまだマンパワーが足りていないのが現状です。

 さらなる行政の力が必要です。市と医師会の連携を強化するなど、橋渡しを働きかけていきたいと考えています。

◎三つの機能を集約新施設がオープン

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 11月10日、グループホーム「無量寿(むりょうじゅ)」、看護小規模多機能型居宅介護「じゅげむ」、訪問看護ステーション「ナイチンゲール」の三つの機能を集約した複合施設を阿南市見能林町に開設しました。デイケアの利用者から「入所できる施設をつくってほしい」との要望を受けて実現したものです。

 天井は高めで開放感があり、自然の光や風が心地よく入ってくる設計にしました。エントランスに伊万里焼の招き猫を置くなど、遊び心も盛り込んでいます。

 施設の特色の一つとして、NASA(アメリカ航空宇宙局)が宇宙飛行士の筋力トレーニングのために開発した振動マシン「パワープレート」を導入しました。

 日本ではプロサッカーチームが使用しているほか、リハビリテーションでの活用も注目されています。昨年、岩城クリニックのデイケアで先行して導入したところ、常に利用者がおり、好評です。パワープレートの認知症予防の効果についても研究が進んでおり、当施設でもデータを蓄積していく計画です。

 グループホーム名の無量寿という言葉には「永遠のいのち」という意味があるそうです。若き人も老いた人も、県南地域のみなさんの健康を守り、患者さんの人生に長く、深くかかわっていく。岩城クリニック、新しい施設ともに、そんな存在でありたいですね。

医療法人翠松会 岩城クリニック
徳島県阿南市学原町上水田11-1
TEL:0884-23-5600
http://www.iwaki-clinic.jp/


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