徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野 北川 哲也 教授

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テクノロジーの恩恵を最大限に届けていく

【きたがわ・てつや】 1980 徳島大学医学部卒業 同第二外科医員 1984 国立循環器病センター心臓血管外科レジデント 1996 米国ミシガン大学胸部外科留学 2000 徳島大学医学部附属病院心臓血管外科教授 2012 同手術部長 2014 同外科長

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―今年1月、四国の大学病院では初めて「経カテーテル的大動脈弁置換術(TAVI)実施施設」に承認されました。

 承認後のハートチームとしての実践トレーニングを経て、5月11日に1例目を実施しました。11月に予定している患者さんを含めて、これまでの実績は計6例です。

 循環器内科医、心臓血管外科医、麻酔科医、看護師、放射線技師、臨床工学技士、リハビリテーションスタッフなどで、ハートチームを構成しています。

 TAVIカンファレンスで、TAVI患者さんの適応と施行について、それぞれの専門的見地から、徹底的にディスカッションします。

 気を付けるべきことは何か、どんなことが起こりうるのか、よりよい治療を計画し、チームでドライランを行ってから治療に臨みます。できるだけ不測の事態を避け、仮に起こったとしても、素早く対応するのです。

 これまで着実に実績を積み重ねていることで、さらにメンバーのモチベーションも高まっていると感じています。

 TAVI専門外来も開設していますが、重症の大動脈弁狭窄症で、高齢や併存症などで、外科的大動脈弁置換術が難しい患者さんが対象です。フレイルティ(虚弱さ)が代表的な適応指標の一つですが、年齢の目安からすると通常は80歳以上で適用し、当院の最高齢は93歳です。

 患者さんはおおむね1週間程度で退院することができます。早期に食事をとって、歩行できるようになり、ありがたいことに術後の合併症も起こっていません。

 なにより「早く家に帰ることができる」と、本人とご家族の方々に喜んでもらえるのが、私たちとしても一番うれしいことです。

 TAVIは、少しでも元気な体で過ごしたいとの思いを後押しできる、非常に意義のある新しい治療だと思います。

 TAVIのスタートにあたり、一定の症例数に達するまでは、プロクター(TAVI指導者)の適切なアドバイスと指導をいただきながら、より安全で質の高い医療を提供できる体制をとっています。

 近年の医工連携が実現したテクノロジーの進歩には、著しいものがあります。当院でも、2015年にハイブリッド手術室が設置され、弁膜症にはTAVI、大動脈瘤にはステントグラフト治療といった低侵襲血管内治療の選択肢が広がりました。先端技術の恩恵を最大限に活用してみなさんに届けていくのが、私たちの努めだと考えています。

 今後も、さまざまな高難度新規医療技術が開発され、導入していくことになるでしょう。現在、実施している手術の適応もさらに変化していくかもしれません。

 高齢化によって患者さんが多様に重症化していますので、より安心で安全な医療を備えていきたいと思っています。

―小児の心臓疾患について、現状をどのように捉えていますか。

 先天性心疾患の子どもたちは、毎年1万人ほど新たに誕生していると推測されます。医療の進歩に伴い、いまや9割以上が成人すると言われています。学校に通い、社会に出て、働くようになっているのです。

 しかし、先天性心疾患の手術の多くは根治手術ではなく修復術であることから、小児期に遺残病変のない手術が行われたとしても、経年的に続発症が進行し、成人後に外科治療を必要とする可能性があります。

 例えば、チアノーゼ型先天性心疾患の中で最も多いファロー四徴症で小児期に修復術を受けられた患者さんでは、成人期に至るまでの移行期や成人後に、肺動脈弁閉鎖不全症が高度になって心室機能に支障をきたすことがあります。

 肺動脈弁の人工弁置換の再手術をしなければならない人が著明に増えているのです。

 そのような場合、小児期に受けた手術を「根治手術ではなかったのですか」と、驚く患者さんやご家族が少なくありません。つまり、先天性心疾患においても長期的なフォローや医療介入が必要な方は多く、継続的な患者さんへの啓発も欠かせないのです。

 学生生活、就職や結婚などさまざまな理由によって、小児期に手術を受けた地域を離れていく人は多いでしょう。診療科も、ずっと小児科ではなく、成人科への円滑な移行も必要です。

 暮らす地域が変わっても、適切な移行期の医療支援や医療を受けることができるよう、地域間、医療機関同士の連携により、不安なく生活できる仕組みを整えていくことが大切です。

―静脈疾患の領域に関して、近年の動向などはいかがですか。

 今年6月15日、16日の2日間、「第37回日本静脈学会総会」(徳島市・あわぎんホール)の学会長を務めました。

 静脈瘤の低侵襲治療はカテーテルによるレーザー焼灼術が主流になりつつありますし、静脈血栓塞栓症(VTE)については血栓の予防法として、ここ数年、抗凝固薬の役割が大きくクローズアップされています。

 多様化する治療にかかわる職種も、血管外科医のほか、脈管医や循環器医、放射線科医、CVT(血管診療技師)、形成外科医、看護師、弾性ストッキングコンダクターなど実に幅広いのです。

 今回のテーマを「ダイバーシティ・アンド・イノベーション」としたのは、静脈疾患の治療法の多様性と独創的な発展の両面を表現したいと考えたためです。

 2日間の参加者は737人。女性を中心に若い層も多く、会場は非常に明るい雰囲気に包まれました。「楽しい学会」であることがこの学会の特色だと思いますし、私が伝えたかったメッセージの一つでもあります。

 近年、自然災害が頻発していることから、パネルディスカッションの討論テーマとして「災害医療」を取り上げました。

 昨年4月に発生した熊本地震の支援活動にかかわった先生方を中心に、「災害医療とVTE(熊本地震を経験して)」と題して、活発な意見交換がなされました。

 車中泊が続くことによって下肢静脈に血栓が生じる「深部静脈血栓症」の可能性が高まります。生じた血栓が静脈を流れて肺に到達し、肺動脈を閉塞するエコノミークラス症候群としても知られる「肺血栓塞栓症」に至ります。

 「静脈血栓塞栓症」といわれるこの一連の症状連鎖は短期間で起こってしまう現象です。

 地震発生の直後、日本静脈学会は弾性ストッキングを被災地へ送りました。学会と行政、各医療機関との連携を含めて、災害医療にどのようにかかわっていくか。多職種が共に考えるきっかけを提供できたのではないかと思います。

―人材の育成で大切にしていることは、どのような点でしょうか。

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 私たちの領域にも、たくさんの多様で若く、優秀な人材がいます。彼らのモチベーションを維持することができ、それぞれの個性に合った成長をサポートできたらと思っています。

 彼らの長いキャリア形成において、「本当にこのまま進んでいいのだろうか?」と立ち止まって考えることもあるにちがいありません。

 ただ、私たちは弱い立場にある人たちを助けることのできる仕事を選び、誰かの役に立っているのだという誇りを忘れないことが大切だと思います。

 私は「心臓血管外科の仕事は楽しい」と思います。それをしっかりと次の世代に伝えられるように、まず自分自身が幸せだと感じられるようにありたいと思っています。

徳島大学大学院医歯薬学研究部 心臓血管外科学分野
徳島市蔵本町2-50-1
TEL:088-631-3111(代表)
http://www.toku-cvs.umin.jp/


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