鳥取大学医学部脳神経医科学講座 脳神経外科学分野 黒﨑 雅道 主任教授

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他科との連携で下垂体領域の中核的機関に

【くろさき・まさみち】 1990 鳥取大学医学部卒業 同附属病院医員1993 島根県済生会江津総合病院1999 ドイツ連邦共和国ハンブルク大学医学部脳神経外科研究員2009 鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経外科学分野准教授2016 同主任教授

 脳腫瘍手術や脳血管内治療で、中四国をけん引する鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経外科学分野。間脳下垂体、頭蓋底部脳腫瘍などを専門とする黒﨑雅道主任教授が就任して1年余。教授が見る今の強みと未来を聞いた。

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◎脳疾患を網羅する地域医療の「要」

 脳にかかわるあらゆる疾患、すべての患者さんを診ることができるのが、この教室の特徴です。

 主な疾患として挙げられるのは脳血管障害、脳腫瘍、頭部外傷です。都市部では、市中病院が脳卒中をはじめとする脳血管障害や頭部外傷を診て、脳腫瘍については大学病院がカバーする、というようなすみ分けがされている場所もあるかもしれません。

 しかし、ここではそういった区分はありません。私たちは、「地域医療の要」として、地域に根差し、あらゆる脳の病気、けがに対応するための体制を整えています。

 患者さんの中には東京など都市部への転院を希望される方もいます。もちろん、その意見は尊重しますが、ここでも同等かそれ以上の医療が提供できる。そのために日々努力を重ねています。

 悪性脳腫瘍の遺伝子解析によるテーラーメイド治療や、ナビゲーションシステムと術中脳機能モニタリングを組み合わせ、脳機能温存と根治性を追求した手術など、最先端の治療にも積極的に取り組んでいます。

◎耳鼻咽喉科と連携低侵襲手術

 国内ではまだ限られた施設でしか取り組まれていない耳鼻咽喉科と協力した「内視鏡下経鼻的下垂体腫瘍・頭蓋底腫瘍摘出術」を実施しています。

 従来の口唇下切開に比べ、術後、口周囲のしびれやはれなどの合併症がないのが大きなメリット。2012年11月から今年10月までで、共同手術は72例実施。最も多いのが下垂体腺腫に対してで、51例です。

 下垂体腫瘍の手術は、日本では脳外科だけでするのが一般的ですが、グローバルな視点に立つと、この手術で脳外科と耳鼻科が連携するのはむしろ当たり前。今後、少しずつ国内でも広がってくると予想しています。

 鼻から脳に至るまでは、耳鼻咽喉科・頭頸部外科が得意とするところ。そこから先はわれわれが専門とする範囲です。内視鏡を使うため、患者さんの負担が少なく、脳神経外科医と耳鼻科医が連携して手術に当たるため安心感も高まります。

 私たちの大学では、鼻の治療を専門にしていた耳鼻咽喉科の医師が、身内の脳疾患を機に下垂体に興味を持ったことから、この連携プロジェクトが進みました。

 脳神経外科医局と耳鼻咽喉科医局、双方から医局員がアメリカに渡り、手術研修を通して連携に必要な手技を習得。2012年11月から協力関係を築いています。

◎COEを設立さらなる発展を

 今後は、耳鼻咽喉科との連携をさらに強め、内分泌代謝内科、小児科、女性診療科、泌尿器科、神経放射線科といった他科とのつながりも一層深めたい。

 臨床の場だけではなく研究や教育にも力を入れ、下垂体の分野で、世界的に評価される中核的研究機関(COE)、下垂体センターを設立していきたいと考えています。

 この下垂体センターでは、優秀な研究者と最先端の設備をそろえ、中四国地方での中心的役割を果たすとともに、さらに多くの紹介患者を受け入れていきたい。

 下垂体の臨床、研究、教育がしっかりとできる組織が構築できれば、ここで下垂体疾患に関わる一通りの検査や治療が受けられることになります。患者さんや地域の医療機関も「下垂体疾患ならここ」と明確にわかります。

 私たちは専門に特化した診療に力を入れることができる。地域の方々も受診や紹介がしやすくなることで、さらに多くの症例が集まるでしょう。

 私は常々、山陰という視点から脱して、日本一を目指さなければならないと考えています。下垂体領域において日本一の施設を作りたいですし、この鳥取大学医学部脳神経医科学講座脳神経外科学分野を、下垂体の診療、研究をしたいと願う学生や医者がたくさん集まる、日本一の教室にしたいとも思っています。

◎ドイツとアメリカ両国で学んだこと

 1999年、ドイツの国立大学「ハンブルク大学」の附属病院脳神経外科に留学。経鼻的腫瘍摘出術の世界的権威であるリューデッケ教授の指導のもと、間脳下垂体腫瘍の外科的治療について学ぶ機会に恵まれました。

 症例数が多く、毎日のように手術がありました。下垂体腫瘍に限らず、さまざまな種類の脳疾患の患者さんを診ることができたのが良い経験です。世界最先端の医療を肌で感じることもできました。

 その後、1カ月という短期ではありましたが、アメリカにあるカロライナ研究施設にも留学しました。そこは、最小限の開頭範囲で脳腫瘍を切除する、いわゆる「鍵穴手術」の考案者として知られる福島孝徳先生の職場の一つです。

 私の2代前の教授が福島先生と同級生だった縁で、研修医時代にも少し指導を受けたことがありましたが、この短期留学では下垂体だけではなく頭蓋底外科も学ぶことができました。医師としての幅を広げることができたと思っています。

 以来、福島先生が国内外で主催される研修会にたびたび参加し、積極的に学んでいます。臨床の現場で対応に困る症例があると、連絡を取って相談することもあります。先生の研修に出席することで、全国の脳外科医同士の横のつながりも強くなってきているのを感じます。

◎「身を置くこと」にも意味がある

 私はサッカーが好きで小学校から大学までずっと続けてきました。今は医学部サッカー部の部長も務めていて、Jリーグ「ガイナーレ鳥取」のスタジアムドクターを務めることもあります。

 海外に出たものの活躍できなかった日本人サッカー選手が「試合には出られなかったけれど、練習に参加しただけでも意味があった」と語ることがあります。その言葉の意味が何となくわかる気がします。

 私も海外留学時、主導的な立場で手術に加わったわけではありませんでした。しかし、その場に身を置くだけで学ぶことが非常に多く、刺激も受けました。ですから、学生や若手の医師には留学や研修、学会などで「外」に出ていくことの重要性を説いています。

◎手術は「寧静致遠」若手にも伝えたい

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 海外に行くことで、日本の良さを改めて知ることができたのも良かったですね。日本人は真面目で、何ごとに対しても一生懸命な人が多いと感じました。

 「寧静致遠(ねいせいちえん)」という言葉があります。たとえ遠大な事業でも、誠実で地道な努力の積み重ねで達成できる、という諸葛孔明の教えです。

 私は脳外科の手術に通底するものを感じます。長時間に及ぶ大手術であっても、冷静かつ最善の選択を一つひとつ、こつこつと積み上げていくほか手立てはありません。

 若いスタッフたちにも、とりわけ手術に対しては「寧静致遠」の態度で臨まなければならないと伝えていく責任が、私にはあります。

 脳外科医という仕事は、生死をさまよって手立てがない人を助けることができる、まさに命に直結した仕事です。責任は限りなく重いですが、そのぶん、やりがいが大きく、「医者冥利(みょうり)に尽きる」と感じられることも多々あります。この使命の尊さを若手たちに伝えながら、これからも他科と緊密に連携を取って、一歩ずつ前進していくつもりです。

鳥取大学医学部脳神経医科学講座 脳神経外科学分野
鳥取県米子市西町36-1
TEL:0859-33-1111(代表)
http://neurosurgery-tottori-u.jp/


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