広島赤十字・原爆病院 古川 善也 院長

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PFMがもたらした「プラスの変化」とは?

【ふるかわ・よしなり】 1980 広島大学医学部卒業 1982済生会呉総合病院内科 1984 広島大学医学部附属病院第一内科 1988 広島赤十字・原爆病院 2012 同副院長兼消化器内科部長 2016 同院長

 「広島県内でPFMを導入している病院は増加傾向。地域全体の医療レベルの底上げにつながっている」と古川善也院長。入退院マネジメントを強化し、入院予定の患者を早期にスクリーニング。在院日数の適正化で患者満足度の向上と医療者の負担軽減に貢献する「PFM(Patient Flow Management)」は、どう実践していくべきか。

―PFMを取り入れることになった経緯を教えてください。

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 2010年、周術期のサポートを充実させるために「周術期インフォメーションセンターを開設。術前、術中、術後のフォロー体制を発展させていく中で、私たちが着目したキーワードが「PFM」でした。

 2012年に、導入を検討するプロジェクト委員会を発足。翌年に試験的にスタートしました。2016年には、従来の5.5倍のスペースを有する「地域連携・入退院センター」を整備し、本格的にPFMを運用しています。

 当院の平均在院日数は12.4日(2016年度実績)。入院期間が20日を超えることが多い血液内科を除くと、平均在院日数は9日ほどです。

 以前の体制では部署ごとに患者さんの対応にあたっていたため、1人の患者さんに同じことを何度も確認。プロセスの重複が生じていました。

 結果、看護ケアを提供するための準備で「丸1日」を要していました。

 9日のうちの1日を費やして看護ケアの開始が遅くなるぶん、患者さんをお待たせしてしまいますし、病棟のスタッフにかかる負担も大きくなっていたのです。

 急性期病院の平均在院日数が短縮化に向かい、高齢者が増加している現在、外来から入院、治療、退院までの切れ目ないマネジメントが不可欠。

 地域連携・入退院センターが入院前から患者さんのデータを収集。退院困難者を事前にアセスメントし、「外来の段階から看護ケアに取り組む」ことで、病床の効率的な運用、スムーズな退院支援につなげています。

 現在、センターのスタッフは34人。看護師が18人、事務職が9人、MSW(医療ソーシャルワーカー)が6人、臨床心理士が1人います。また、1病棟につき1人の退院支援看護師の配置を基本としています。

―導入の効果は。

 2012年と2016年の平均在院日数を比較すると「3.2日」短縮しています。

 ベッドの利用率は年々上昇しており、今年は95%程度を維持。ほんの4年ほど前は、90%を割り込むことも珍しくありませんでした。昨年は改修や病棟の引っ越しなどがあったものの、常時90%超え。PFMによる効率化の成果が表れているのではないでしょうか。

 退院調整患者について2013年度と2016年度を比較すると、平均在院日数が「11日」短縮しています。中央値と比較してみると9.5日の短縮。別の言い方をすれば、「9.5日、早く看護ケアを始めることができる」体制を構築しているというわけです。

 リスクマネジメントの観点でも、情報共有の強化が医療事故の予防に貢献していると考えます。

 一方で患者さんの視点に立てば、「自分がいつ、どのような治療」を受けて、「何日後に」退院できるのか、イメージが描きやすいのではないかと思います。医療者と患者さんが退院までの時間軸を共有できるのですから、協力体制も築きやすくなります。

 今年度中に、すべての予定入院患者さんへのPFM対応ができるよう目指しています。クリアできたら、次の段階として救急医療に広げていく予定です。

 当院の近隣、および県内の医療機関は、PFMを積極的に導入しています。病院の現状や方針によって、ベストな方法論は異なります。

 互いにいいところを学び、地域の患者さんに還元していけたらいい。当院としても、まだ道半ば。スタッフの充実化なども含めて、進化させていきたいと思います。

―職員の「働き方改革」、ひいては経営改善にもつながるのでは。

 病棟スタッフの時間外労働時間が少しずつ短くなっています。

 新規の入院患者数は増え続けており、今年は平均して月に約1100人。8月は1200人を超えました。

 年間の合計で見ると2013年度1万980人、2014年度1万2031人と上昇し、昨年度は1万3136人。通常なら患者さんの増加に伴い、時間外労働も伸びていくはずです。

 ところが、10数分という単位ではありますが、近年はじわじわと減少しています。PFMが、働きやすさにも影響することが分かるデータです。

 私たちのPFMは、あくまで「患者さんにより早く、もっといいケアを届けていきたい」という思いが出発点です。

 在院日数の短縮や、時間外労働の減少といったさまざまなプラスの面が積み重なることで、「結果的に」業務改善、経営改善にもつながる。経営的な発想が第一にあったわけではないのです。

 PFMを動かしていくためには、組織の大幅な変更が必要ですし、機能を集約するための物理的なスペースも必要になる。すでに他の医療機関での成功事例などがありましたが、そもそもPFMのことを知っている職員は多くはない。経営のことを入り口にして説明しても、なかなか理解を得ることは難しいのではないかと感じます。

 私がくり返し伝えてきたのは、このシステムが医療の質を高め、患者さんにメリットがあるということ。同時に業務のムダが減るなど、働きやすくなること。双方にとっていい仕組みであることを強調しました。

 また、地域連携・入退院センターには、各病棟からベテランの看護師たちを集めました。センター所属のスタッフの理解や効果への実感が深まれば、おのずと病棟にも波及していきます。

 医師も看護師も薬剤師も、やはり「ペイシェント・ファースト」であって、ホスピタル・ファーストではない。その大前提を見失わず、職員との信頼関係を構築することが、PFMを円滑に進めるために最も重要な点だと捉えています。

―10月1日、約5年間におよんだ病院整備事業が完了。グランドオープンしました。

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 引き続き高度急性期型の病院として、特に血液疾患やがんを中心にした医療に重点的に取り組みます。当院の外来化学療法室は56床、無菌治療室は49床で、西日本地域の中でも最大規模。多くの患者さんを受け入れることができます。

 並行して病診連携、病病連携、医介連携をさらに拡大したい。当院が地域包括ケアシステムの一員として活動できる体制を充実させていきます。

 また、赤十字病院として救急医療、災害医療への貢献も期待されています。移動式の診療システム「dERU(仮設診療所)」を運用するためのスタッフの確保や訓練に取り組んでいるほか、新病棟に免震構造を採用するなど、有事には拠点病院として即座に行動を起こします。

 原爆で広島の町が壊滅した1945年。鉄筋コンクリート3階建ての当院は、外郭を残して破壊されました。病院を目指してやってきた人々には、「まるで観音様のように見えた」そうです。

 当院は、世界で初めての原爆被害者医療専門病院です。歴代の院長が守ってきた歴史と伝統を発展させて後世に残す。私の、8代目としての使命としたいと思います。

広島赤十字・原爆病院
広島市中区千田町1-9-6
TEL:082-241-3111(代表)
http://www.hiroshima-med.jrc.or.jp/


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