愛媛県立中央病院 西村 誠明 病院長

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ムダを削減し意識を改革 TQM活動の進め方

【にしむら・しげあき】 1980 岡山大学医学部卒業 1988 岡山央病院 1990 岡山大学医学部第三内科非常勤講師 2002 高知県立中央病院 2004 愛媛県立中央病院医監内科部長 2009 愛媛大学医学部臨床教授 2012 愛媛県立中央病院病院長
TQM活動
総合的品質管理。組織全体で医療やサービスの質を継続的に向上させるための管理手法。トップダウンによるマネジメントとボトムアップによる改善活動の両輪で機能するとされる

 患者と医療者がともに「満足度」を高めていくことで、初めていい循環が生まれる。その気づきを促すツールの一つが、組織に「カイゼン」のサイクルを根付かせる「TQM活動」だ。導入した医療機関に訪れる変化を読み解くことで、「伸びる病院」のヒントが見えてくる。

◎「整理整頓」ができない体質だった

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 2014年の新病院オープン以降、特に昨年から今年にかけて、DPCⅡ群病院認定、3次救急医療機関へのシフト、ドクターヘリの運航開始など、当院にはいくつもの変化がありました。

 取り組みの中でも力を入れたのは、逆紹介の徹底的な推進です。「愛媛県立中央病院は入院中心の医療を担う」というスタンスを明確に示し、地域完結型のネットワーク構築を目指しました。連携強化による紹介率の高まりとともに、大腸がんや胃がんなど、消化器系のがんを中心に手術件数も大幅に伸びています。

 増加する患者さんの対応と在院日数の短縮化には、昨年9月、術前サポートセンターを発展させて開設した「入院サポートセンター」が貢献しています。入院や手術に関する手続き、説明などのプロセスをセンターに集約。患者さんの利便性の向上と、職員の業務効率 化を図りました。

 さまざまな仕組みの導入が医療の質を引き上げることにつながり、目標としていたDPCⅡ群病院の要件をクリアすることができました。それも職員の意識や働き方を変えることができなかったら、望む成果を得ることは難しかったのだろうと思います。

 当院は、いわゆる「古い体質」の病院だったのです。診療科ごと、病棟ごとに独自の方針をもっていて、物品の配置も違えば、情報共有のルールも異なる。施設全体として、いろいろな意味での 「整理整頓」がなされていませんでした。

 整理されていない環境は「ムダ、ムラ、ムリ、 ダラリ」を増やして仕事の効率化を妨げるだけでなく、医療安全も脅かします。医療には「これがベストだろう」とされる選択肢はあるが、「100%間違いない」と言い切れる「正解」はありま せん。かつての常識が、時代とともに非常識に変わることも珍しくない。

 ムダや古い慣習を引きずって、各々のルールに基づいた医療をしていては、いつ医療事故が起こっても不思議ではありません。自分たちの身を守るためにも、新病院をきっかけに体制を整えなければと考えていました。

 もう一点、公立病院は職員の定数条例があるため、増員が容易ではありません。限られた人員で働かざるを得ないという事実も、おのずと効率化を後押ししました。

◎全員で課題さがし

 改革の中心を担ったのは、新病院開院に向けて2012年に設置した改善推進本部です。クオリティマネジメント室(QM室)と改善推進室(KP室)の2チームが連携し、病院全体で「TQM (Total Quality Management)活動」を展開しています。

 職員たちがグループごとに取り組む「TQMサークル活動」で問題点を探して拾い上げ、自分たちで解決策を考えるサイクルを回します。

 また、年に1度、院内の改善事例を募集して表彰する「ワンポイント改善」も実施。ユニークなアイデアが、たくさん生まれています。

 看護部は患者さんに誰が出勤しているのかが分かるよう、「似顔絵」の掲示を思いつきました。写真ではなく、あえて似顔絵にすることで、親近感も湧く。

 職員には、気になったことがあれば、どんなに小さなことでも報告してほしいと伝えています。多ければ多いほど、改善への視野も広がります。

 私は11月17日(金)と18日(土)の2日間、松山市総合コミュニティセンターで開かれる「第19 回フォーラム 医療の改善活動 全国大会in松山」の会長を務めます。

 四国では初めての開催です。2015年大会と2016年大会では、当院が発表した演題が優秀賞を受賞しました。

 最も時間をかけるべきは、やはり思考の転換だと思います。当院は827床の規模で、院内外のスタッフを合わせると2000人ほどが働いています。根気強く、段階的に方針を浸透させていくことが大切です。

 在院日数の短縮化についても、高齢者や重症患者が多いのだから、在院 日数が長くなるのは当然ではないかー。

 医療者に長年染みついた感覚はなかなか抜けないものですが、当院と他のDPC対象病院とを比較することで、何が足りていないのか、どんな工夫ができるのかが「見える化」できます。

 当院では「診療科ミーティング」と呼んでいる場で、各診療科のスタッフに、当院と同規模の病院の診療成績データを見てもらうわけです。

 また、愛媛県内のDPC対象病院において、患者数が最も多いのが当院であることや、中四国でがんの手術件数が上位であることなども分かる。自分たちがどのような位置にあるのか、客観的に 眺めることができる効果は大きいと思います。

 次のステージは、第三者の評価をより積極的に受けていくことです。

 病院機能評価、救急医療機能評価に続き、今年、臨床検査室の認定である「ISO15189」を取得しました。また、人材の戦略的な獲得や研修プログラムの充実を見据えて、研修医の習熟度を査定する臨床研修評価も受審しました。今後、研修施設としての教育環境評価も受ける予定です。

◎成功のポイントは「この病院が好きだ」

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 実のところ、当初はDPCⅡ群病院の認定を得ることは難しいのではないかと思っていました。しかし、私が想像していた以上に職員たちが奮闘し、いい循環をつくってくれました。

 自分たちの仕事の質や満足度を上げることが、患者さんの満足度も上げる。TQM活動の最大のメリットは、それを発見できることです。

 在院日数の短縮化についても、単に病床利用の効率化という話では、目標を共有しづらいのではないでしょうか。

 かつては、病院に長く入院して、しっかり治すという発想でした。在院日数を減らすことは、 力の衰えや、認知機能の低下を遅らせる側面もある。あくまでも「早く地域に戻りたい」と願う患者さんの要望に寄り添うためのツールとしてTQM活動を活用するべきだと思います。

 労働人口が減少し、いずれ本格的に働き手が不足する時代が来ます。医師、特に若いドクターは「自分の患者さんは自分で責任をもってケアしたい」との思いが強いことから、気づかないうちに負担を抱えてしまうことがある。ライフスタイルを根本的に見直さなければ、患者さんのためにならないという意識を浸透させていきたい。

 また、看護師の離職は医療界が抱える課題の一つですが、病院に貢献することに喜びを感じることができれば、もっと技術を磨きたいという気持ちも高まるでしょう。

 働いている病院のことを「好きだ」と感じられる環境づくりが、TQM活動を成功させるポイントだと思います。

愛媛県立中央病院
松山市春日町83
TEL:089-947-1111
http://www.eph.pref.ehime.jp/epch/


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