岡山大学大学院 医歯薬学総合研究科 病態制御科学専攻(第二内科) 前田 嘉信 教授

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患者さん、医学、社会のために

【まえだ・よしのぶ】 1992 岡山大学医学部卒業 同第二内科入局 2001 米国ミシガン大学研究員 2012岡山大学病院血液・腫瘍内科講師 2017 岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病態制御科学専攻(第二内科)教授

 7月に前田嘉信・新教授が誕生した岡山大学大学院病態制御科学専攻(第二内科)。およそ1700人を輩出した西日本最大級の教室を、8代目として、どう運営するのか。就任から3カ月となる前田教授を教授室に訪ねた。

◎スペシャリストでありジェネラリストでもある

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 私たちが担当するのは、血液・腫瘍と呼吸器・アレルギーの領域です。

 共通する大きな目標は「世界で最も進んだ専門性の高い医療を岡山で提供し続ける」ことと、「臓器横断的に診る力を持った医師を養成する」こと。相反するようにも見えるこの二つを同時に実現できるのが、この教室です。

 「専門性」で言うと、呼吸器領域では肺がん、肺炎、COPDなどの患者数が増加。国立がん研究センターによる最新のがん罹患数予測で新たに肺がんだと分かった人は12万8700人。肺炎の患者数は年間40万人で、2016年には全死因の中で3番目に多い約12万人が亡くなっています。

 高齢化や喫煙、大気汚染だけでなく医学の進歩で生存期間が延びたこともあり、患者数は今後も増える傾向です。それぞれの疾患を適切に治療していく必要があります。

 血液領域では、血液疾患患者に対する造血幹細胞移植に積極的に取り組んでいます。

 岡山大学病院は中国地方の造血幹細胞移植推進拠点病院、関連病院の一つ愛媛県立中央病院は四国の推進拠点病院です。同門の先生たちと一緒に、造血幹細胞移植に関わる人材の育成や連携体制の整備などを進め、中四国の移植医療を推進していきます。

 臓器横断的に診る能力を持つ医師は、これらの専門性を磨く中で育っていくと考えています。

 例えば白血病や肺がんの抗がん剤治療では、肝臓や腎臓など他臓器の状態も悪化する恐れがある。全ての臓器の状態を把握し、コントロールしながら、白血病や肺がんの治療を進めていくマネジメント力が求められるのが、私たちだからです。

 こうして養われた「ジェネラリスト」としての力は、複数の合併症がある高齢者が多い地域医療の場でも役立つでしょう。たとえ、その医師が専門から離れることがあったとしても、広く患者を診ることができる内科医として、その力は十分発揮されるはずです。

◎「目の前の患者さんのため」だけでは不十分

 就任に当たり「患者さんのために」「医学のために」「社会のために」の三つの理念を医局員に伝えました。

 当科は、肺がんや白血病など、病態の変化が早く命を落とす可能性がある疾患を数多く扱います。患者に寄り添い、全力を尽くす。さらに「患者さんのために」と努力を重ねることで、知識や技術が向上し、医師の人格も形成されていきます。

 「医学のために」は研究の推進です。設備が整った実験室でないとできない基礎的な研究もありますが、医学を発展させる場は、実験室だけではない。開業医でも、市中病院や大学病院の医師でも、本人の意思さえあれば、医学を一歩前進させることができるのです。

 「優れた臨床医は研究者である」という言葉があります。患者に寄り添うわれわれだからこそ、見つけられる課題がある。患者の状態などを科学的に観察、分析し、考察できる「Physician Scientist」を育てたいと考えています。

 「社会のために」には、他人のために行動できる人であってほしいという願いを込めました。

 医師は「目の前の患者を一生懸命に診ていればそれでいい」と思いがちです。しかし、それだけでは不十分。医療の面で言えば、後進を指導したり、メディカルスタッフを含めたチーム全体を鼓舞したりするのも、重要な役割でしょう。プライベートでパートナーを大切にする、近所の人を笑顔にするといったことも大事なことのはずです。

 医師も「社会の一員」であるという視点を失わず、広い視野で、他人のために何ができるかを考える人であってほしいと思います。

◎面談で高める「チーム」「部下教育」の意識

 今の課題はマンパワー。特に呼吸器領域で不足しています。

 血液疾患の場合は人口40万人ほどの範囲に1カ所、血液疾患を担当する病院があり、「センター化」されています。他の医療機関は白血病だと診断したら、すぐ、センターに患者を送る。センターに医師を集中配置できる環境が整っています。

 一方、呼吸器はどの病院にも呼吸器疾患患者がいて、多くの病院が呼吸器内科医を必要としている。しかし、私たちが医師派遣の要請に十分に応えられていないのです。

 結果、呼吸器内科医の不在や疲弊を招いています。この状況を改善し、目指している医療を実現するためにも、人材育成にもっと力を入れていかなければと思っています。

 方法の一つは、人事。研修医がいる病院に、呼吸器内科の魅力を伝える熱意と指導力がある人を割り当てます。呼吸器内科のおもしろさを言葉や行動で示してくれるロールモデルがいれば、呼吸器内科医を目指す若い人も増えるでしょう。

 就任後から医局員一人ひとりと面談。「企業と同じように『部下を育てる』『チームの成果を上げる』という意識を、もっと持たなければならない」と伝えています。

 各々に目標を立ててもらい、1年後の評価を予定。全員の人材育成に対する意識が高まれば、マンパワー増にもつながっていくと考えています。

◎最新・最善を追い求め続ける

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 岡山大学や関連病院の血液腫瘍を専門とする医師が参加する「西日本血液腫瘍グループ(West-JHOG)」では、末梢性T細胞リンパ腫に対する多剤併用化学療法「EPOCH療法」の有効性を調べる第2層試験を実施。一定の有効性が認められたため、その成果を間もなく論文で発表します。

 末梢性T細胞リンパ腫の治療法は十分に確立されているとは言えません。次に目指すのは第3相の比較試験。リンパ腫には臨床研究のための全国組織がありませんが、オールジャパンで進めていきたいと考えています。

 治療では、免疫チェックポイント阻害薬の登場が大きなトピックです。国内では2015年にニボルマブ、2016年にペムブロリズマブが承認され、切除不能の進行・再発非小細胞肺がんの治療に使えるようになりました。私たちも積極的に使用しています。

 今後は、どのような人に治療効果や副作用が出やすいのかなどを調査し、未来の治療に生かす計画です。

 遺伝子診断の技術も、肺がんを中心に進んできています。

 岡山大学では全国でもまだわずか数カ所の大学でしか導入していない「がんクリニカルシーケンス検査」を希望者に対して実施。患者さんの遺伝子情報を次世代シーケンサーで詳細に解析し、治療に生かしています。

 この検査によって得られる情報は貴重です。集積し、分析することで新薬の開発などにつながります。

 肺がん関連では全国規模の遺伝子診断ネットワーク「LC‐SCRUM‐Japan」が発足し、患者に検査を受ける機会を無償で提供。見つかった遺伝子異常を医薬品の開発に生かす試みが始まり、私たちも参加しています。

 この取り組みは、徐々に血液腫瘍などほかの領域にも広がりつつあります。「この『がん』にはこの抗がん剤」ではなく、その人に最も適した治療薬を選べる時代になってきているのです。

岡山大学大学院医歯薬学総合研究科病態制御科学専攻(第二内科)
岡山市北区鹿田町2-5-1
TEL:086-223-7151(代表)
http://ninai.med.okayama-u.ac.jp/


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