地方独立行政法人 西都児湯医療センター 長田 直人 理事長・院長

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脱・赤字経営 行政と一体で支える地域

【ながた・なおと】 1968 三重県立四日市高校卒業 1972 名古屋大学農学部農芸化学・食品工学科卒業 1980 宮崎医科大学医学部卒業同麻酔科入局 1990 同附属病院麻酔科講師1992 同附属病院集中治療部講師 1998 宮崎県立日南病院麻酔科医長 2003 同院麻酔科部長 2010 宮崎大学医学部地域医療学講座教授 2015 西都児湯医療センター理事長・院長

 2016年4月、地方独立行政法人に組織変更した「西都児湯医療センター」。人口減が進む宮崎県西都市で、行政と連携しながら将来を見据えた改革を進める。その取り組みは、今の日本の医療機関のヒントとなりうるのか。

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―地方独立行政法人化した背景は。

 当病院は1980年12月、西都市と児湯郡の新富町・西米良村の1次・2次救急に対応する病院として西都市西児湯医師会が開設しました。

 しかし、救急医療を担う医師の不足と体制維持のためのコスト増大で赤字経営が続き、2011年4月、市が病院の土地と建物を医師会から購入。市の出資率97%の「官民共同型医療法人財団」として再スタートを切りました。

 健診室の新設、災害派遣医療チーム(DMAT)の発足、医療機器の更新などの打開策をとっても、医師不足と赤字は改善の兆しを見せず、一時は内科の外来と入院診療を休止。さらに2013年、宮崎大学や西都市西児湯医師会からの内科医の当直派遣が中止となり、救急医療の維持は、一層危機的な状況でした。

 そこで2016年、資金面での安定を図り、地域に救急医療を残すため西都市が100%出資する「地方独立行政法人」となったのです。

地方独立行政法人
地域にとって必要な事務・事業のうち、民間では必ずしも実施されない可能性があるものを、効率的・効果的に実施することが目的。地方自治体が100%出資する、地方自治体からは独立した法人

―独法化から1年半。その変化は。

 独法化初年度の2016年度の経営は黒字。経営面が大きく変わり、医療の質向上につながってきました。

 一時、脳神経外科と放射線科各1人の計2人にまで減っていた常勤医は、独法化を控えた2016年2月までに内科3人、脳神経外科1人、麻酔科1人の計5人に増加。救急医療以外にも、各医師の専門性を生かした診療・手術が提供できる医療機関になっています。

 黒字化の要因は四つ。①独法化を機に前法人の債務を清算できたこと②マンパワーが揃い収入が増えたこと③独法化により救急医療・託児所などの経費のうち収入で賄えない部分が地方交付税の算定対象となったこと④西都市から派遣された会計のプロが参画したこと、が挙げられます。

 独法化によって、当病院は公設機関となり、公務員に準ずる福利厚生や就業規則が整備された安定的な職場環境は、医師のみならず医療スタッフの採用においてプラスに作用しているようです。

 病院の会計・経営業務に参加する西都市役所からの4人の職員の働きも大きなメリットをもたらしています。

 4人はある程度病院改革が進めば、市の業務に戻ります。同程度の能力がある人材を当院が採用するよりも効率的で、採用業務などの負担も少ないシステムです。

―現在の課題は。

 当病院の許可病床数は91床ですが、現在の稼働病床数は最大65床。開院時と比べ、今は医療法上の患者1人当たりの必要面積が広くなったため65床が限界なのです。2次救急指定医療機関として最低5床は常に空けておく必要があり、病床数不足の問題は深刻です。

 また、より多くの患者さんへ医療を提供するため、2019年までに医師を2人増員したいと考えています。現在の施設は手狭で、新しい医師を迎える部屋さえありません。専門性を持つ医師が集えるよう、ハード面も整える必要があります。

 内科では呼吸器と循環器の専門外来を開設し、高齢化に伴い増加するさまざまな疾患の診療に一層注力していきます。

 さらに地域唯一である脳神経外科の診療を一層充実させるため、地域包括ケア病棟を開設し、在宅移行に向けたリハビリを強化していきたいと考えています。

 当院がある西都市は、25年後には65歳以上の高齢者の割合が39%にまで増加。人口は27%減少すると見込まれています。

 救急医療をいかに地域に残すかという課題だけでなく、高齢者医療に必要な認知症予防のための運動療法や、緩和ケアにも取り組んでいく必要があります。これらの課題をクリアしようと考えた時、既存の施設では当院に求められる役割が果たせないと感じています。

 そこで、5年後のオープンを目指し、新病院施設の建設を計画。事務手続きは「新病院準備室」が担当。2人のスタッフが、市民への説明を含め日々奮闘しています。

―新病院施設の概要は。

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 新病院の施設整備に向けて、五つの基本方針を策定しました。

 ①災害拠点病院として災害に強く、院内感染予防など、医療安全対策に配慮した安心・安全な施設②質の高い医療を提供できる十分なスペースと機能性を持つ施設③患者やその家族などの視点に立った、ユニバーサルデザインを基本とし、患者の不安を和らげる快適な療養空間が提供できる施設④柔軟性を持たせ、医療環境や技術の変化に対応できる施設⑤物流の一元化や医療消耗品管理のシステム導入による経営効率とともに地球環境にも配慮した施設、です。

 人口と患者の絶対数が減り、税収増が見込めない地方で、いかに維持可能な病院を建設し、管理していくかは、悩ましい問題です。建設費と維持費のバランスを考え、病院経営において中長期的負担にならないようにしなければなりません。

 当法人には大学教授、医師会の会員、弁護士などで構成される評価委員会があります。このチェック機能を生かし、地域のみなさんに安全で質の高い医療を永続的に提供していくため取り組んでいきたいと思います。

 課題を挙げればきりがありませんが、乗り越えられる壁です。一つひとつクリアしていくことで、病院経営の基盤を安定させ、地域医療を支えていくことができると信じています。

地方独立行政法人 西都児湯医療センター
宮崎県西都市大字妻1550
TEL:0983-42-1113(代表)
http://www.skmc.jp/


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