公立大学法人奈良県立医科大学 細井 裕司 理事長・学長

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MBTによるまちづくり 奈良県立医科大学の挑戦

【ほそい・ひろし】 1975 奈良県立医科大学卒業 1992 近畿大学医学部助教授 1999 奈良県立医科大学耳鼻咽喉科学講座教授 2014奈良県立医科大学理事長・学長

 「医療をもって地域に貢献する」。高度な医療を提供することはもちろん、「医学を基礎とするまちづくり」に取り組む姿は、全国の大学のモデルケースになることだろう。地域での在り方を含めて、大学の展開を聞いた。

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―2015年に創立70周年を迎えました。

 創立70周年を迎えるにあたり、本学を取り巻くさまざまな環境の変化に適応し、飛躍するための道しるべとして「奈良県立医科大学の将来像」を策定しました。

 策定にあたり、全教職員に法人の現状認識に関する調査を実施。その後、奈良県立医科大学と奈良県とが共同で設置した「将来像策定会議」を軸に、教育・研究・診療・法人運営分野に分かれたワーキンググループ、サブワーキンググループで検討を重ねました。

 検討に用いる資料はホームページで公表するなどすべて「見える化」し、公平性を担保。検討状況を紹介する講演会や、中間とりまとめ結果に対するアンケート、インタビューを複数回実施。約3年かけて策定に至りました。将来像には、新しいシンボルマーク、建学の精神、キャンパス整備に関する内容も含みます。

 これまでなかった建学の精神は「最高の医学と最善の医療をもって地域の安心と社会の発展に貢献します」としました。本学の価値観やアイデンティティーを示すものとして、創立して72年経ちますが、あえて「建学の精神」と名付けました。

 さらに、建物の老朽化と狭隘(きょうあい)化に伴い、教育・研究・看護部門の新キャンパスへの移転を予定しています。新キャンパス予定地は現キャンパスから約1kmの、旧奈良県農業開発センターの敷地。2021年の完成を予定しています。

―奈良県立医科大学の特色を教えてください。

 MBT(Medicine‒Based Town、医学を基礎とするまちづくり)に取り組んでいます。

 医師や医学者、看護師が持つ医学的知識を、企業と連携した上で、新しい産業の創生や新商品、新システムの開発に生かして地方創生を図る構想。

 各診療科が企業と共同研究をすることは一般的ですが、大学単位でやっているところは他にあまりないでしょう。

 MBTは2012年に早稲田大学と「MBT共同研究」として実施したことに始まります。2016年4月奈良県立医科大学で一般社団法人MBTコンソーシアムを設立。企業とのマッチングの場を設けるなどし、2016年末時点で、金融機関や民間企業など約80 社が参画しています。

 企業は、現キャンパス内にある「MBT(医学を基礎とするまちづくり)研究所」や近くの今井町などのコンソーシアムが用意したフィールドで、新産業の創生のために企業活動を展開することができます。

 参画企業を募るため、これまで奈良、東京、大阪で企業とのマッチングの場を設けてきました。

 2016年11月に早稲田大学大隈講堂とリーガロイヤルホテル東京で開催した「MBTコロキウム」には、計916人、285企業が参加。

 コロキウムにおける「新産業創生のための企業と医師等の交流相談会」では、本学の医学系講座の教授76人が一堂に会し、企業の担当者と活発な交流が交わされていました。

「奈良県立医科大学の将来像」の概要 各分野の理念
【 教 育 】
豊かな人間性に基づいた高い倫理観と旺盛な科学的探究心を備え、患者・医療関係者、地域や海外の人々と温かい心で積極的に交流し、生涯にわたり最善の医療提供を実践し続けようとする強い意志を持った医療人の育成を目指します。
【 研 究 】
研究の成果を患者への最善の医療に生かし奈良県民の健康増進を図るとともに、最先端の研究により医学の進歩に貢献します。
【 診 療 】
患者と心が通い合う人間味あふれる医療人を育成し、地域との緊密な連携のもとで奈良県民を守る最終ディフェンスラインとして、安全で安心できる最善の医療を提供します。
【法人運営】
最高の医学の追求、最善の医療の追求を使命として、互いに連携しながら自らの職務に誇りと情熱をもって取り組み、課題に対して自ら行動できる人材を確保・育成することで、教育・研究・診療の理念を実現し、発展し続ける法人運営を実践します。

―MBTに関わるこれまでの取り組みを教えてください。

 「ユニオンツール」(東京都)と連携し、レーダーを用いて安否確認を行う生活見守りサービスの開発・実証を進めています。距離データを扱うので、カメラと違いプライバシーが確保されます。また呼吸や微小な動きを検知し、対象者の不在、在室、着床といった情報を専用のパソコンに表示します。運用が始まれば離れて暮らす家族や高齢者の安否確認に役立てられることでしょう。

 この他、県内のCATV事業者やコミュニティFMなど複数のメディアと連携し、住民及び旅行者を対象にしたLアラート(災害情報共有システム)情報伝達に関する実証事業にも取り組んでいます。

 災害時、訪日外国人にLアラートの情報を伝達するための手法や、平時にも住民に「健康支援・増進」に関する情報をLアラートで伝達する手法を確立している段階です。

 MBTは日本にとどまらず、将来的にはASEAN(東南アジア諸国連合)をはじめとする海外での展開も視野に入れています。そこで2017年4月、大学院にMBT学講座を開設しました。MBTにおいて必要なハード・ソフト・運営を掌握し、各専門家や企業と連携して、国際的にも第一線で活躍できる人材の育成に取り組んでいきます。

―大学として力を入れていることは。

 優秀な医療人を育て、世界に貢献するために、偏差値全国トップ10を目指しています。

 そこで本学では、後期試験を実施しています。国公立大学の医学部で後期試験を実施している大学は少なく、関西では当大学だけです。

 2017年度の一般選抜試験における医学科の募集人数は、前期日程22人、後期日程53人。後期日程を重視する体制をとっています。

 この体制にして約5年。偏差値は上昇を続け、2017年度の河合塾発表の偏差値一覧では、後期日程の偏差値は72.5で、東京大学理科三類(前期日程)と同じでした。

 優秀な人材が多く集まれば、提供する医療のレベルも上がる。ひいては大学の魅力を高めることにもつながり、全国から優秀な医師や看護師が集まります。

 そうするとこの地域の住民は高いレベルの医療を受けることができます。優秀な人材の確保と育成は地域に貢献することにつながるのです。

 また、英語教育にも力を入れています。医師に必要なのは、「論文を読む力」「英語を読む力」「自分で書く力」。しかし、英語の読み書きはできても、会話ができる人は少ない。そこで、大学1年時からネイティブスピーカーによる英語の授業を、必修と選択の両方の科目で取り入れています。

 在学中に英会話を身に着けて、卒業後、留学先や国際学会で自分の研究発表やディスカッションに生かしてほしいですね。

―医療従事者に必要なものは。

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 「確かな医学的知識」と「患者さんに寄り添う心」です。

 いくら人当たりが良くても、正しい知識を持ち合わせていなければ患者さんを治すことはできません。また、診療が忙しいとつい患者さんではなく病気を見てしまいがちですが、背景も含めてしっかりと患者さんを診て、元気づけることが必要です。

 確かな技術といたわる心の両方を持った医療者を、われわれはこれからも育てていきます。

公立大学法人奈良県立医科大学
奈良県橿原市四条町840
TEL:0744-22-3051(代表)
http://www.naramed-u.ac.jp/


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