独立行政法人 労働者健康安全機構 神戸労災病院 鷲見 正敏 院長

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すべては患者さんのために(For the Patient)

【すみ・まさとし】 大阪府立北野高校卒業1977 神戸大学医学部卒業 1981 カナダクイーン大学整形外科学研究室留学 2014 独立行政法人労働者健康福祉機構神戸労災病院院長

 兵庫県神戸市を対象エリアとする神戸医療圏。神戸大学医学部附属病院などの大規模病院に加えて、中規模病院も集中する激戦区だ。

 同地区で360床を運営する神戸労災病院。その戦略について、鷲見正敏院長に聞いた。

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―病院の概要を。

 1964(昭和39)年に開設。もともと、神戸港の港湾労働者を対象にしていました。このため、勤務中のケガなど、整形外科を中心にした診療で発展してきました。

 現在は、整形外科、循環器内科、心臓血管外科、消化器内科、腎臓内科、呼吸器科、精神科などの幅広い診療科があります。

 専門外来も多岐にわたっており、2015年に開設した骨粗しょう症外来では、多職種で患者さんを支える「リエゾン」を取り入れています。

 病棟においては、2015年に、地域包括ケア病棟を50床で開設しました。急性期を終えた患者さんの在宅復帰を支えています。

 また、働く人に限らず、地域の住民の皆さんも多数来られますので、一般的な疾患を扱う総合内科もあります。

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―2014年に院長に着任。注力していることは。

 労災病院としての歴史は、しっかり受け継がれています。

 現在も、整形外科の手術は年間1000例を超え、360床の病床のうち約100床は整形外科の患者さんです。

 手術は脊椎の疾患の手術、手の外傷、関節外科の三つの専門的な手術を中心に実施しています。

 病院の強みである整形外科を生かすことと同時に、それ以外の診療科も、運営の大きな柱となるように診療を強化してきました。

 また、救急の受け入れも、特に力を入れています。2014年度の救急患者数、救急車搬送患者について、2017年度の同時期と比較すると、この3年間で10%以上の伸びを示しています。

 また、診療以外の面でも、新しい取り組みを始めました。当院は、神戸市中央区の東西に細長い市街地の山側で、上り坂もあるので、高齢の患者さんが徒歩で来院するには、少し不便な場所でもあります。

 このため、JR灘駅、阪急王子公園駅、阪急春日野道駅の各駅と当院の間を送迎する「無料送迎バス」をスタート。患者さんや、家族、お見舞いの方に利用していただくなど、大変好評です。

 これまでは、あまり患者さんが来ていなかった灘や岩屋、王子公園、そして春日野周辺からの患者さんの増加につながっています。

 また、病院に親しみを持っていただきたいと、労災病院の「災」を動物の「サイ」になぞらえて、「ロッサくん」というキャラクターを作成。送迎バスを「ロッサくん」でラッピングしたり、当院の売店で販売しているお菓子のパッケージにあしらったりと、まず当院のことを覚えてもらえるようにしました。

 患者さんに対する接遇についても、職員の意識改革を進めてきました。病院の職員は、言葉遣いや所作など、百貨店などと比較するとまだまだ弱い面があります。このため、就任以来、「すべては患者さんのために(For the Patient)」という考え方の重要性を伝えながら、色々な面について改善するよう取り組んでいます。

―労災病院ならではの診療は。

 「復職外来」を今年4月に始めました。患者さんが、病気の治療をしながら働き続けられるように、治療と就労の両立支援をサポートしようというものです。

 患者さんの不安や疑問などの相談に、医師だけでなく、看護師、医療ソーシャルワーカー(МSW)など、多職種で対応していくのがこの外来の特徴です。

 このため、まず入院時や外来で患者さんにアンケートを取ります。その回答の内容によって仕事に何らかの影響がありそうだとわかった場合は、担当のМSWが患者さんと直接話すようにしています。そして、必要があれば、企業との交渉などに復職外来の医師も出向きます。

 私の患者さんのケースですが、ある病院の看護助手さんで、頚椎椎間板ヘルニアの方がいました。首周辺がしびれて仕事に支障があるということで来院。話を聞くと、職場では「仕事にならないのなら辞めたら」と言われるなど、本人は大変悩んでいることがわかりました。

 これを当院MSWに伝えて、チームとしてどのように職場での対応を求めるのかについて話し合いの機会を持ちました。幸い、治療の方も、手術には至らずに症状が改善されましたので、本人は無事職場に復帰。このような対応により、必要であれば職場との対応も含めて患者さんの就業をサポートする体制を始めています。

 復職外来では、医療的なケアはもちろん、職場復帰や再就職にあたって、さまざまな社会資源があること、またそれを活用できることを患者さんに伝えています。

 他の医療機関や企業の産業医から、患者さんの復職に関する相談も増えており、当院ならではの役割を果たせていると思います。

 今後は、非正規雇用者、契約社員そして自営業の方にも目を向けながら、患者さんの支援をしていきます。

―脊椎脊髄の手術

 整形外科では、脊椎手術を年間に360例ほど実施。兵庫県では、高い実績を挙げています。

 当院では、主に、頚椎(けいつい)ヘルニア、頚椎症性脊髄症、後縦靱帯骨化症(OPLL)の治療をしています。これまでの手術の実績などが評価されているのか、兵庫、大阪圏内以外にも、京都府、奈良県、三重県、岡山県、鳥取県などといった遠方から来院する患者さんも増えています。

 OPLLは現在、国内に約2万人の患者がいます。OPLLは、アジア人、特に日本人に多く発症している原因不明の難病(厚生労働省特定疾患)でもあります。

 この病気は、椎体の後ろにある後縦靭(じん)帯が骨化するのが特徴です。骨化した靭帯が、脊髄や神経を圧迫することで、手足の痛みやしびれ、運動障害、場合によっては脊髄マヒが起こることもあります。治療は、手術が中心となります。病気のメカニズムの研究や解明はある程度進んできていますので、今後は新たな治療薬の開発などが期待されます。

 私自身も、医師として長年、脊椎脊髄の分野に取り組んでいます。今年3月には、神戸市で開かれた「国際頸椎学会アジア太平洋部門」の学会長を務めました。

 昨年は、シンガポールの病院で脊椎の手術を指導。今後も、日本のみならずアジア各国で、後進の育成に携わりたいですね。

独立行政法人 労働者健康安全機構 神戸労災病院
神戸市中央区籠池通4-1-23
TEL:078-231-5901(代表)
http://kobehrofuku.sakura.ne.jp/


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