近年、新規大卒就職者の約3人に1人が3年以内に退職をしています(2012年卒32.3%、2013年卒31.9%、2014年卒32.2%、厚生労働省HP新規学卒就職者の在職期間別離職率推移より)。退職理由はさまざまですが、ほぼ何かしらに対する「不満(=怒り)」です。
3年以内に退職した方を対象に行った「どうすれば退職を回避できたと思いますか?」という調査(2017年一般社団法人日本アンガーマネジメント協会調べ)での回答は、第1位:上司との良好な関係、第2位:上司からの適切な叱られ方、第3位:労働時間の改善、第4位:給与面の改善、第5位:同僚との良好な関係でした。まとめると、人や待遇面に対する不満です。
ほとんどの人は怒りを自分でコントロールできないため、退職という道を選んでしまいます。そこで現在、アンガーマネジメント(以下、AM)が注目されてきています。AMは1970年代にアメリカで始まった、怒りの感情と上手に付き合うための心理教育です。AMとは「怒りで後悔しないこと」。怒る必要があることには上手に怒ることができ、怒る必要がないことは怒らない、その線引きができることです。決して怒らなくなることではありません。
まずは自分が「怒りに負けない人」になる。
まず大切なのは、自分自身が「怒りに負けない人」になることです。もしリーダーが機嫌や部下の好き嫌いで怒る人だったら、あなたはそんなリーダーの言うことを聞くでしょうか?信頼できるでしょうか?答えはおそらく「NO」でしょう。
「怒りに負けない」ためには、ささいなことで怒らないことが大切です。さらに言うと、イライラしても、すぐにその怒りの消し方を知っていることも大切です。怒りを感じたときに「反射的に怒る」、いわゆる「売り言葉に買い言葉」はNG。怒りの感情のピークは長くて6秒と言われています。些細な怒りなら、6秒待つだけでも収まることも多いのです。
「べき」と上手に付き合う。
皆さんは今まで怒りの原因は、他人や物・出来事など、外にあると思っていたのではないでしょうか。実は私たちが怒っているのは「べき」という言葉があるから。〜すべき、〜すべきでないの「べき」です。
簡単に言えば、私たちが怒る理由は、自分が信じている「べき」が目の前で裏切られたからです。例えば、仕事は早くすべきだと思っている人がゆっくり丁寧に仕事している人を見るとイライラします。実は怒りの原因は自分の中にあるのです。よって「べき」という言葉と上手に付き合えれば、怒りと上手に付き合うことができます。ただ少し難しいです。
ではどうすれば上手に付き合えるのか? 皆さんの心の中に、三重丸があると想像してください。
1番中心にある円は、自分と同じ「べき」です。よって怒りません。2番目の円は、自分とはちょっと違うけど許せる範囲です。最も外側の円は、自分の「べき」とは全く違うので許せません。したがって怒るゾーンです。「べき」と上手に付き合うポイントは、2番目の円をできるだけ大きくすることです。他人の価値観を「なるほど〜」と関心を持つことができれば2番目の円は大きくなり、怒ることが少なくなります。後述しますが、上手に叱るためにはこの三重丸がとても大切になります。
叱り方にも技術がある。
人材教育において叱ることは必要です。ただ上手に叱ることができる人は少ないです。叱り方は技術なので、練習すれば上達します。前提として、叱る側と叱られる側には信頼関係が必要です。信頼関係がないと絶対に伝わりません。逆に信頼関係があれば叱っても感謝されます。
叱る目的は「部下が次から失敗しないように理解してもらうこと」です。決して上司の自己満足のためや部下を追い込むことではありません。叱って嫌われる人は、怒り方が計算高く、怒るルールが不明確(気分屋)で自分の保身で怒る人です。まずは自分自身が「怒りに負けない人」になり、部下のために叱れるリーダーになりましょう!
〈参考図書〉安藤俊介著「怒りに負ける人 怒りを生かす人」/安藤俊介著「アンガーマネジメント叱り方の教科書」
マルプロ代表 丸山 啓太 (アンガーマネジメント専門家)
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