今月の1冊 - 72.ゆびさきの宇宙 福島智・盲ろうを生きて

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生井久美子[著] 岩波現代文庫 350頁
1100円+税

 静かな部屋に座り、目を閉じ、両手で耳を塞ぐ。1分、2分、3分...。何も見えず、何も聞こえない世界で、あなたは何を感じるだろうか。

 目が見えない、耳が聞こえない。ヘレン・ケラーと同じ障害がある東大教授、福島智(さとし)氏。本書は、4年余りにわたる福島氏への取材をもとに書かれている。

 神戸市出身の福島は病によって4歳で右目を摘出。9歳で左目の視力も失う。「音」の世界に希望を抱いたが18歳で、聴力さえも奪われた。

 コミュニケーションの術は、母・令子が点字用タイプライターの入力法をヒントに編み出した「指点字」。しかし、指点字は相手が福島の手をとらない限り会話が始まらない。触れ合っていた手が離れれば、再び「無音漆黒の世界」。複数人の会話に入ることもできなかった。

 しかし、ある偶然がこの現状を大きく変える。喫茶店に福島と友人、そして高校の先輩で全盲の三浦佳子が集う。

 「福島君だけがその場の会話を理解できないのが耐え難かった」。三浦が発言者と発言内容を指点字で福島に伝えたのだ。

 このとっさの行動が、「通訳」という概念と役割を生み出し、後に福島の世界が大きく広がるきっかけとなる。「全く聞こえなかったどん底から、3カ月ほど。もし、何年もかかっていたら、生きていなかったかもしれない」。周囲に"世界"が戻ってきた日のことを、福島はそう振り返る。

 2008年、東大先端科学技術研究センター教授となった福島。専門はバリアフリー分野だ。「(人間の)能力の差を否定はしない。否定するのは、能力の差と、その人の存在価値を連動させること。連動させてしまう、人間の存在の内面にくいこむ差別的なもの、価値の序列体系。障害を通して批判的に研究したい」と研究の狙いを語る。

 福島はどこまでも自身を客観的に見つめる。「完全に視聴覚を失う体験をしたのでコミュニケーションを回復していく過程で得たものと、障害によって失ったものの中身は何か、自分の体験そのものに関心がある」。どこか達観したような視点が、時にユーモラスで、そして深い。(原)


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