社会福祉法人 聖霊会 聖霊病院 森下 剛久 院長

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高度急性期と在宅をつなぐ懸け橋に

【もりした・よしひさ】 1975 名古屋大学医学部卒業 愛知県厚生農業協同組合連合会昭和病院(研修医)1976 同内科医員 1979 藤田学園藤田保健衛生大学医学部(内科助手) 1983 名古屋大学医学部附属病院( 内科医員) 1984米国ワシントン州F r e dHutchinson Cancer Research Center , Researchfellow(3年間)1988 医学博士(名古屋大学) 1990 愛知県厚生連昭和病院内科(血液化学療法科部長) 2008 愛知県厚生連江南厚生病院血液・腫瘍内科(副院長兼血液細胞療法センター長) 2015 社会福祉法人聖霊会聖霊病院院長 同理事

 聖霊病院は聖霊奉侍布教修道女会による社会福祉事業として設立されたカトリック病院。姉妹施設として老人保健施設サンタマリアがある。

 急性期、周産期、ホスピス・緩和ケアなどを提供している同院の森下剛久院長に今後のビジョンを聞いた。

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◎焼け野原からの出発

 終戦直後の1945年10月、まだ焼け野原が広がる状況下で、医師2人、シスター4人、30床で開院。カトリックの精神にのっとり「愛と奉仕」の理念を掲げ、困っている人、苦しんでいる人々に医療を提供しました。

 1968年、現在の地に300床の総合病院を新築。以来「お産の聖霊」と呼ばれるほど、周産期医療に力を注いできました。NICUを設置したのが1987年。名古屋市内では比較的早い時期での設置でしょう。地域の急性期病院として、救急医療も支えてきました。

 今の建物が完成したのは2009年です。その時に緩和ケア病棟「ホスピス聖霊」も開設しました。

◎高度急性期病院との連携

 院長に就任したのは2015年4月です。

 当院が診療圏とする名古屋市の昭和区と瑞穂区には、高度急性期医療を提供する病院として、名古屋大学医学部附属病院、名古屋市立大学病院、名古屋第二赤十字病院があります。

 私は「このまま急性期病院として運営していては生き残れない」と感じました。

 そこで、高度急性期病院との連携強化の方針を打ち出しました。当院の急性期機能を生かして、高度急性期を脱した患者さんを受け入れ、回復期、在宅へとつなぐ橋渡し的な病院にしようと考えたのです。

 名古屋第二赤十字病院は当院から徒歩で10分ほどの場所にあります。同院は病床数812の地域の高度急性期を担う基幹病院です。まずは同院との連携を強化することから始めようと考えました。

 名古屋第二赤十字病院は急性期の重症患者に対し、高度で密度の濃い医療を提供する必要があります。そのためには平均在院日数を短縮し、ベッドの回転を速くし、常に患者さんを受け入れる体制を整えておかなければなりません。そのためには高度急性期を脱した患者さんの受け皿になる病院が必要です。

 しかし、その受け皿になれる病院が不足している状況では、平均在院日数を短縮したくてもできません。また高齢者は、何らかの合併症を持っていることも多く、幅広い疾患に対応できる病院も必要としていました。

 当院にとっても高度急性期からの患者さんを受け入れることで地域包括ケア病棟や、緩和ケア病棟などをフル活用できます。まさに双方にとってプラスになる連携だったのです。

 今後は地域包括ケア病棟を拡充してもっと多くの病院と連携をしていきたいと考えています。

 6月に発足した名古屋東部地域医療連携推進協議会に発起人として参画しました。広域の連携組織の一員として、今後生ずるであろうさまざまな問題に対する答えを、個々の施設単位ではなく地域内で連携する多くの施設が協働して見いだしていくことを目的としています。

◎患者一人ひとりにマッチした入退院支援を

 昨年10月に、患者の入退院支援を強化するため多職種で構成される「患者支援プロジェクト」を院内に立ち上げました。

 入院から退院まで患者さんの情報管理、共有を図ることで、病床の効率的利用を図り、特に紹介入院患者数の増加を目指すことを目的としました。

 提携先の病院から紹介があった場合、まずは該当する診療科の医師に連絡。受け入れ可能と判断すれば、提携病院から紹介患者の電子カルテが当院に開示されます。そのカルテを患者支援プロジェクト・患者支援室のメンバーが確認し、その後、対応する病棟看護師に引き継いでいます。

 また退院前に患者さんのご家族と面談し、病状の説明や、在宅復帰後の介護環境などを聞き取ります。

 このプロジェクトの発足により、患者さん一人ひとりにマッチした入退院支援ができるようになりました。

 この地域の民間病院で当院のように急性期から回復期まで切れ目なく診ている病院は多くはありません。希少性がありますし、高齢化における医療ニーズを満たす大きな可能性を秘めているとも言えるでしょう。

 高齢の患者さんは複数の疾患があることが多く、対応するためには多くの診療科をそろえていなければなりません。

 当院は16の診療科があり、幅広い疾患に対応が可能です。「聖霊病院に送れば何とかしてくれる」と、開業医の先生や高度急性期病院の先生たちに認知されているのが当院の強みだと思っています。

◎情報を共有し、活発な意見が出る組織づくりを

 院長に就任した私は、まず職員に当院の状況を開示し、情報を共有することから始めました。

 診療科別・部署別の実績、病院経営指標から財務面に至るまで、現状分析と問題点の把握、そしてその打開策について、職員と一緒に考える機会を持ちました。そのために会議用スライドを何枚作ったか数え切れないくらいです。

 情報を共有することで、職員から活発な意見が出てくるようになりました。

 私は職員全員が、病院を自分たちの力で良くしようという思いを持つことが大事だと思うのです。今後もボトムアップできる組織づくりをしていくつもりです。

◎病院診療医

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 私は、病院に専門医として勤務しながらかかりつけ医的役割を担うことができる医師を「病院診療医」と呼んでいます。さまざまな疾患について、その領域の専門医ほどの詳しい知識・技術はないが、初療段階には十分対応できるジェネラリストです。

 医師採用面接時には、「君たちがここで働くのなら、専門領域以外のことも勉強してほしい」と言っています。当院規模の病院では、専門に特化した医師も必要ですが、それ以上に幅広く診療できる医師を必要としています。

 当院は、2004年にスタートした新臨床研修制度の影響と高度急性期病院からの橋渡し役という地域における病院の位置付けの変化により、医師数が徐々に減少してしまいました。特に内科医の減少は深刻でした。マンパワーが不足する中で、患者さんのニーズに応えた診療を提供するための方策が、「病院診療医」の導入なのです。

 病院には、いろいろな疾患を持った患者さんが来ます。その診療をする過程で自分が今まで知らなかったことをたくさん経験できるでしょう。

 この領域を始めると、とてもやりがいがあると思います。私自身、専門は血液内科ですが、当院にきて、病院診療医として内科疾患全般を診るようになりました。

 これまでの医学教育では専門性を追究することに重きを置いていました。しかし、これからの日本で本当に必要とされるのは「病院診療医」のような、幅広い疾患を診療できる医師だと思うのです。

 幅広い疾患を診療することができる病院診療医がいることで、少ない医師でも多くの患者さんを診られるし、患者さんに種々の合併症があっても担当医が把握できるという安心感があります。

◎慈しみの心を忘れずに

 2015年に当院は開院70 周年を迎えました。その節目の年に「慈しみの心」をもって診療することを目標として掲げました。カトリックの教えである慈しみの心は人々のありのままを受け入れ、深い愛をもって大切にすることです。

 この言葉は医療者にとって、基本姿勢だと言ってもいいと思います。今後も患者さんに対する慈しみの心を忘れない病院であり続けたいと考えています。

社会福祉法人 聖霊会 聖霊病院
名古屋市昭和区川名山町56
TEL:052-832-1181
http://www.seirei-hospital.org/


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