尼崎医療生活協同組合 尼崎医療生協病院 島田 真 院長

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無差別平等の医療を目指して

【しまだ・しん】 1990 京都府立医科大学卒業 1995 尼崎医療生協病院 2002 同副院長 2006 同院長

 「一人は万人のために、万人は一人のために」という生協理念の下、1949年から市民の健康と福祉を支え続ける尼崎医療生協病院。高齢者独居世帯数の増加が深刻な尼崎市で、今後どういった役割を担っていくのか―。

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―尼崎医療生協病院の役割を教えてください。

 現在、病床数は199床。前身のナニワ病院が開院した1949年から数えると、今年創設68年目を迎えます。

 2015年度の分娩数は484件。市内で分娩を担う病院が当院を含めて三つしかないこともあり、周産期医療には開設当初から力を入れています。

 2007年に病院をリニューアルした際に緩和ケア病棟を設置しました。病室は1部屋20平方㍍以上と広々とした造りになっています。

 産婦人科と緩和ケアの病棟は全室個室。個室と大部屋が混在する他の病棟を含め、「いのちは平等である」との医療生協の理念の下、全館差額ベッド料はいただいていません。

 医療生活協同組合立の病院の特徴は、組合員の出資で成り立っている点です。組合員でない患者さんも、もちろん診るのですが、私たちの中心にあるのは組合員さんの健康と福祉。「まちかど健康チェック」や、当院で健康診断などを活用して、組合員さんに病気の予防や健康維持のために気を付けるべき点などを指導しています。

―欧米をはじめ世界中で導入が進む、ボランティア参加型プログラム「HELP」を日本で初めて導入されたそうですね。

 HELPとは、「HospitalElder Life Program」の略称。患者のベッドサイドに研修を受けたボランティアが出向き、日常的な会話などを重ねることで、「薬に頼らないせん妄の発症予防」を目指したプログラムです。

 入院直後の高齢者は病気や薬の影響、環境の変化により、幻覚を見たり興奮したりと一時的な意識障害「せん妄」を起こしやすい。まず、せん妄を治療することが優先され、本当に必要な治療がスムーズに進まないといった問題があります。

 当院では内科入院の19.7%にもこのせん妄がみられ、大変深刻な状況でした。

 せん妄治療のためには薬を投与して軽い沈静状態にすることが多いのですが、一時的に活動量が低下することもあり、身体機能が落ちるリスクもあります。

 そこで、薬に頼らずせん妄をはじめとする意識障害を予防する目的で、2013年、国内の医療機関として初めて「HELP」を導入しました。

 HELPボランティアは、患者さんと話をしたり、患者さんが乗った車椅子を押して院内を散歩したりします。医療行為はしません。

 ボランティアになるためには、事前にHELPの活動についての講習や、看護師、医師らによる基礎的な医療知識に関する講義、車いすの使い方などを学んでもらいます。2017年3月現在、32人のHELPボランティアの方に登録いただいています。

―「HELP」導入でどのようなことが期待されているのでしょうか。

 HELPを導入した、米国エール大学医学部内科では約14%の患者さんのせん妄が減少。睡眠薬の使用頻度も減少するなど、半年間で62万ドルのコストを削減できたと報告されています。

 当院の調査でも、せん妄は減少傾向を示しています。今年度さらに詳しい調査分析を行う予定です。

 せん妄状態になった患者さんを前にすると、医療者は治療やリハビリといった本来の役割を果たせないことに苦慮します。HELPを導入することでせん妄をはじめとするすべての意識障害が解決するわけではありません。しかし、少しでも防ぐことができれば、適切な時期に必要な治療が開始できるのです。

 医師やリハビリスタッフが本来の役割を分業的に果たすだけでなく、せん妄という状態に全てのスタッフが関わることが、チーム医療の強化や、医療の質を上げるには有効的なのです。

 また、ボランティアが入ることで、第三者の目で病院の課題を見つけることができる。われわれ医療者が気づかない点を指摘してくれますので、患者さん目線に立つという点でも非常に意味があることだと思います。

―尼崎市の地域医療について、今後どのような課題がありますか。

 尼崎市では高齢単身世帯および高齢夫婦世帯が2015年の時点で全世帯の24・5%を占めており、全国平均の22・5%よりも高く、高齢者単独で構成される世帯が多いのが特徴です。

 入院するほどではないが、介護する人がいないため食事を自分で取れないといった、医療だけで解決できないケースがこれから増えるはずです。2025年に向かって、問題はもっと顕著になってくるでしょう。

 入院ですべて解決するわけではないため、医療生協内外問わず診療所や介護、福祉施設とも連携を強化し、効果的な対策を考える必要に迫られています。

―病院としての今後の展開を教えてください。

 職員へのアンケート調査で、部署間の連携がスムーズではないことが分かりました。これは、「どうにかしないといけない」と職員が問題意識を持ち、しっかりと考えている結果でもあり、改善の余地は十分にあると思います。

 チーム医療の強化という点で、自分のやるべき役割を果たすのはもちろん大事ですが、それに固執すると視野が狭まりかねません。「自分の担当じゃないのでわかりません」「できません」という言葉は極力減らそう、と常々職員に呼びかけています。

 病院としても、疾患や診療科などのテリトリーを決めてそこに集中するのではなく、テリトリーの境界を時には横断しながら診ることができるようになれば、それは一つの理想かもしれません。

 まだ発展途中ですが、どこの病院に行ったらいいかわからない患者さんや、救急隊がどこに搬送すべきか決めかねている患者さんを可能な範囲で受け入れる。そうすることで患者さんからの信頼にもつながりますからね。

 さらには、当院で治療できない重症の患者さんの場合は適切な医療機関にきちんとつなげる。それも大事な役割だと思います。

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 近年、いったんは治療を終えたものの、その後の治療方針や治療を受ける医療機関が定まらないがん患者「腫瘍難民」が問題になっています。がんを治療できる施設は増えてきましたが、その後のケアについてはまだまだ連携が弱いのが現状です。

 腫瘍性疾患は、患者が多いにも関わらず、すべての人が適切に診療を受けられているとは言い切れません。例えば、他の医療機関で胃がんの治療をして根治に至っても、食べ物を完全に消化できないといったさまざまな問題を抱えた人が多くいます。

 最近は保険料が払えず無保険だったり、医療費を払えない人が増加傾向にあります。そういった方の医療費を軽減・免除することで医療を受けられない人を減らそうという「無料低額診療」にも取り組んでいます。

 医療費を払う余裕がないために受診することを我慢した結果、救急搬送されてきたり、見るに見かねて組合員さんや近隣の方に病院に連れてこられるケースも少なくありません。

 生活保護や身体障害のレベルにある人には診断書を書いて、適切な社会保障制度につなげています。「医療を受けることができない人をなくす」ことは、われわれの信念です。

尼崎医療生活協同組合 尼崎医療生協病院
兵庫県尼崎市南武庫之荘12-16-1
TEL:06-6436-1701(代表)
http://www.amagasaki.coop/byouin/


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