山口大学大学院医学系研究科医学専攻小児科学講座 長谷川 俊史 教授

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小児科の魅力を伝えたい

【はせがわ・しゅんじ】 山口県立宇部高校卒業 1991 山口大学医学部卒業同附属病院研修医 2006 米国サンディエゴ・ラホヤアレルギー免疫研究所 2008 山口大学医学部附属病院講師 2009 同准教授 2017 同教授同附属病院総合周産期母子医療センターセンター長

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―3月に教授就任。抱負を聞かせてください。

 山口大学小児科学講座は開設70年を超える歴史がある教室です。山口県の小児医療を充実させなければならないという使命感があります。

 山口大学をはじめ、地方大学は2004年に開始された臨床研修制度の影響を受け、入局者数が減り、都会と地方での格差を広げることになってしまいました。

 2014年の厚生労働省調査では山口県の小児科医師数は人口10万人当たり162.64人。全国平均の191.52人をかなり下回っています。

 現在、山口大学医学部卒業生の約4割は卒業後、県外に出ています。山口大学に残り、小児科学講座に入局してもらえるよう、この医局の特徴を打ち出し、小児科の魅力とともに教室の特徴、魅力を学生に伝えていかなければと思っています。

 都会にでた人が「勝ち組」、山口に残った人が「負け組」では決してありません。

 地方の大学でも世界レベルの診療、研究は可能です。

 診療、研究、教育をバランスよく学生に提供して世界レベルの優秀な人材を育成していきたいと考えています。

―小児科の魅力とは何でしょう。

 これからの日本、世界を担う子どもの命を守ることができる。それが小児科医の最大の魅力でしょう。 少子化であっても、小児科医の果たす役割が減ることはありません。小児科医には診療などのほかにワクチンや健診などの予防医療も求められています。

 新生児医療も発展しました。厚生労働省の調査によると1950年代半ばの生後1年未満の乳児の死亡率は、40%弱でした。それが2000年代に入ってからは3%台に。

ちなみに2015年の死亡率は1.9%。60年前と比較して20分の1まで減少しています。

 日本小児科学会は小児科医を「子どもの総合診療医である」と規定しています。小児科は臓器ごとに診るのではなく、全身を診る必要があるわけです。

 当講座では感染症など一般的な疾患を治療するだけでなく、循環器、血液・腫瘍、神経、腎臓、新生児、代謝・内分泌、消化器、アレルギーなどの専門医療も提供しています。

 どの専門医療チームも、1人の患児に対して複数の医師が関わる体制を整備。患児の状態を常に共有することで主治医が不在でも万全の対応ができるようにしています。これによって主治医の休日夜間の呼び出しも減り、負担が軽減。働きやすい環境にもつながっています。

―山口県の小児科医療の現状について。

 2015年の国勢調査によると県最大の都市である下関市の人口が26万8千人。山口市が19万7千人、大学のある宇部市が16万9千人など人口10万人以上の都市が五つ。人口5万人前後の地域も四つあります。

 地政学的に見て特殊な地域だと言えるでしょう。

 それぞれの地域には大学の関連病院があり、各病院に5〜6人ずつの医師を派遣。地域の小児救急医療、新生児医療を支えています。

 将来的には、関連病院に派遣する医師の数を、各病院の小児患者数に合わせて、見直していく必要があるでしょう。必要な場所に集中的に人材を投入することが、小児科医療のレベル維持と、医師の過重な負担防止につながると考えています。

―求めている理想の人材像はありますか。

 臨床だけでなく研究にも目を向けてもらいたいと思っています。

 私が研究の重要性を教室員に説明する時に、たとえ話で「車の運転は免許さえあればできる。しかし本当に運転を楽しもうと思ったら車のメカニズムを知るべきだ」と言います。

 アクセルを踏めば前に進む。ブレーキを踏めば止まる。診療や手術はいわば車の運転。医師免許は運転免許です。でもエンジンはロータリーかツインカムかなど車の構造を知ったら運転をもっと楽しめます。研究で原理を追究するのもそれと同義だと思うのです。

 研究をすれば診療にもっと興味が持てるし、それまでとは違う角度から診療ができるようになると思います。研究に従事しようという人を1人でも多く増やしていきたいですね。

 医師を目指すのであれば高い志を持ってもらいたいですね。どうしたら社会貢献ができるかを常に念頭に置いた行動ができる医師であってほしいと思っています。

 最近は医学部志向が強まっていて、高校では成績が高い生徒に医学部進学を勧める傾向があります。 昔は「医師になりたい」との強い気持ちを持った人が医師になっていましたが、現在は必ずしもそうではありません。

 「医師になって病気の人を救いたい」という強い気持ちを持った人に、その気持ちを忘れずに日々精進して、より高みを目指してほしい。医師になることだけがゴールではないのです。

 初期研修は初期研修、後期研修は後期研修といったように、その時期、その時期を断片的にとらえてしまう人が多いですが、そうではなく今後、自分はどんな医師になりたいか、長期的なプランを持って行動してもらいたいとの思いがあります。そうすれば自分のスキルアップ、ステップアップにつながると思うので、その辺をしっかり指導していきたいと思っています。

―研究のための留学も若いうちにするべきでしょうか。

 現在、教室から2人、国内留学に行っています。今後は多くの人に海外留学に行ってもらいたいと思っています。

 海外に留学し、研究に従事することで、世界のレベルを肌で知り、自分たちの位置を理解する。客観的に日本を見る目を養うこともできます。今後、日本が世界レベルの医療を続けていく上で、若い人たちが世界を知っておくことが重要です。

 他国の文化に触れ、友人を作る経験も、人間としての幅を広げてくれるでしょう。コミュニケーション力も養われると思います。私はアメリカに2年間留学。その時に知り合った人たちとは診療に行き詰まったとき相談をしたり、アドバイスをもらうなど今でも交流があります。

―小児科は今年から新専門医制度がスタートしています。

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 後期研修1年目は大学、2年目は基幹病院での研修です。3年目は地域の病院で研修してもらいます。

 大学では重症疾患、希少疾患を勉強。2年目は関連病院で救急医療、2次医療を中心に経験してもらいます。3年目は地域の小児科医2人体制の病院で地域医療を経験。3年間で3次から1次救急、重症から軽症までを経験してもらいます。

 学生さんからは「小児科医は学ぶ範囲が広くて大変そう」という声をよく聞きます。しかし、それは違います。範囲が広いから面白いのです。

 子どもたちと家族の笑顔のためにがんばり、笑顔から活力をもらう。その繰り返しで、これまでやってきました。

 どの科に進むか、悩んでいる人に「小児科は楽しい」と伝えたいですね。

山口大学大学院医学系研究科医学専攻 小児科学講座
山口県宇部市南小串1-1-1
TEL:0836-22-2111(代表)
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~pediat/


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