特定医療法人財団 同愛会 博愛病院 櫃田 豊 院長

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私たちは患者さんの生活の一部

【ひつだ・ゆたか】 1980 鳥取大学医学部卒業 1984 同医学部附属病院助手 1990 同講師 2001 同助教授 2005 日野病院組合日野病院 2006 同病院長 2016 博愛病院院長

 医療機関は、地域での立ち位置を明確に示さなければならない時代を迎えている。さまざまな選択を迫られる中、変化の波を乗り切るためには、何を見極めるべきなのか。昨年10月、博愛病院のトップに就いた櫃田豊院長は、「医療者が患者さんの生活の一部になることが大切」と感じている。

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―現在、博愛病院はどのような時期に差しかかっているのでしょうか。

 10年ほど前に、博愛病院は急性期中心の医療から、回復期、慢性期、在宅医療へと軸足を移し始めました。

 現在は移行のさなかにあり、急性期、回復期、慢性期、在宅医療・介護のバランスは、ほぼイーブン。医療と介護の機能をあわせもつケアミックス病院として、地域包括ケアシステムの中心的な存在を目指しています。

 実は、博愛病院がこのような方向性を打ち出していたことが、私が院長を引き受けた大きな理由でもあります。

 私は鳥取大学医学部附属病院呼吸器内科に20年間従事したのち、2005年、日野病院(鳥取県日野町)の一員となりました。

 大学病院では、高度で専門領域に特化した診療が求められていました。日野病院でも、呼吸器専門の医師としての活躍が期待されているのだろう。そうイメージしていたのですが、予想とはまったく違っていました。

 中山間地域にある日野病院は、99床の規模で診療科は4科。どんな患者さんであっても、医師は可能な限り診る。この時期を境に、求められる医療が「病気を診る」から、「人を診る」に変わったわけです。1人の患者さんを、最初から最期までケアすることが、日野病院での私の役割となりました。

 高齢の患者さんは併存疾患がありますから、診察を重ねていくうちに、どんな生活を送っているのか、どんな生い立ちなのかなどを、自然と知ることになります。

 ご自宅で診察する機会も多い。患者さんの「生活の一部」に入り込んでいく中で、視野がうんと広がったのです。いわゆる「全人的な医療」を実感したことが、現在の私の医療スタンスを決定づけたと思います。

 博愛病院が推し進める「人を診る」医療と、私の中心にあるプライマリケアの経験。重なり合う部分があると感じ、当院で働いてみようと決めたのです。

 米国医学研究所が提唱したプライマリケアの5つの原則「ACCCA」が、私個人としての目標であると同時に、当院としての基本方針として根付いてほしいと考えています。

 患者さんがかかりやすい病院づくりに努める「Accessibility(近接性)」、すべての訴えに応える「Comprehensiveness(包括性)」、チーム医療を強化する「Coordination(協調性)」、医療、福祉、介護、保健を提供し続けていく「ContinuityContinuity(継続性)」、十分な説明や意思疎通を心がける「Accountability(責任性)」の頭文字をつなげたものです。

 さらに超高齢社会に入った日本の医療機関には、「Adaptability(適応性)」も不可欠だと考えています。急性期をどの程度残し、回復期、慢性期をどこまで広げていくのか、その見極めが当面のテーマです。

 高齢化、人口減に向かう中で急性期がダウンサイジングし、受け皿となる地域包括ケア病床などが伸びる傾向にあるのは間違いない。医師の偏在の解消はまだまだ先でしょうし、診療報酬を踏まえた判断という意味でも、線引きは難しい。

 ただ、回復期リハビリテーション病床、療養病床、地域包括ケア病床と多機能をそろえてきた当院の取り組みは、少しばかり時代に先んじていたのではないかとも思います。「半歩先をいく視点」をもっていることが強みの一つであり、継続できるかどうかが、当院の将来を左右すると思っています。

―国が在宅医療を推進する中で、どのようなアプローチを。

 当院では訪問診療、訪問看護、訪問リハビリを提供しています。今年3月、在宅療養支援病院に認定。病院が在宅医療に力を入れている例はあまり多くはないでしょうし、少なくとも、米子市では当院が唯一です。

 必要に応じてすぐに入院できるバックアップ体制がありますから、利用する患者さんの安心感も大きいのではないかと思います。

 今年6月、敷地内に「在宅医療センター」がオープンしました。

 これまで個別に業務にあたっていた訪問診療、看護、リハビリ、居宅介護支援の各部門を、1カ所に集約。情報共有が円滑化しました。また、やや手狭だった業務のスペースが広がったことで、これまで難しかったスタッフの増強も図りやすくなりました。

 センターの開設は、厚労省による「地域医療介護総合確保基金」の「居宅等における医療の提供に関する事業」の資金援助を受けて実現したものです。当院は基金の認定を見すえて、病床再編の事業計画を作成。2015年、131床の急性期病床を80床に減らし、地域包括ケア病床51床を開設しました。

 切れ目のない医療・介護体制の構築を進める国の政策と密接にリンクしているというわけです。センターは、当院が在宅医療にシフトしていくことを地域に伝える、象徴的な存在だと言えます。

 介護相談窓口を設置し、テナントとして運営するコンビニエンスストアは、高齢者向けの宅配弁当のサービスも提供しています。シニアサロンでは講演会や健康教室なども予定。地域密着型の施設として、みなさんに親しまれるセンターに育てていきたいと思っています。

 小児在宅医療のニーズも高まっていると感じています。国が推進する在宅医療の政策の一つとして「小児を対象とした在宅医療分野の人材育成」があります。昨年、鳥取大学に「小児在宅支援センター」が開設され、小児神経外科が中心となり、医療的ケアが必要な子どもを専門的に支えることのできる人材を養成しています。

 今後、当院としても人材の確保を進め、重症心身障害児を支援する体制を整えたいと考えています。現状の取り組みとしては、医療型ショートステイやレスパイト入院を受け入れています。これらの充実も図りつつ、包括的に子どもたちをサポートできる仕組みを探ります。

―鳥取県で初となる最新型マンモグラフィーの導入、「すまいるプチ検診」開始など、さまざまな試みを取り入れています。

 新たに導入したマンモグラフィーは、トモシンセシス(Tomography= 断層とSynthesis= 合成、統一を合わせた造語)機能を搭載しています。

 従来のマンモグラフィーは平面的な画像ですが、新機種は多方向から1ミリ間隔で乳房を撮影し、パラパラ漫画のように展開することで、いわば「3D画像」を得ることができます。

 トモシンセシス機能は日本人女性に多く、腫瘍の発見が難しいとされるデンスブレスト(高濃度乳腺)の方にとって有効だと言われています。被ばく線量も従来の機種とほぼ変わりません。

 予想を超える反響で驚いているところです。当初は年間5000人程度の利用を見込んでいましたが、2000人ほど増えそうです。

 当院は「マンモグラフィー検診精度管理中央委員会」の認定施設でもあることから、乳がん検診に力を入れてきました。近年の乳がんへの関心の高まりに、より応えていきたいと思っています。

 7月、18歳以上の人を対象に始めた「すまいるプチ検診」は、「忙しい方にも手軽に健康をチェックしてもらえる方法はないか」という、職員のアイデアから生まれたサービスです。保険証不要で、予約も必要ありません。

 1階のロビーに設置している券売機で、「よくお酒を飲まれる方コース」「血糖値が気になる方コース」「コレステロールが気になる方コース」など、各種検査チケットを販売。「痛風が気になる方コース」500円から用意しています。

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 すべてのコースに、院内のカフェで使える1杯分の無料ドリンク券が付いています。2階の中央検査室で採血し、結果が出るまでは30分程度。少しずつ、利用者が増えているようです。地域のみなさんが、自分の体の状態を知り、健康づくりに踏み出すきっかけになればうれしいですね。

 総合診療内科のドクターとして外来患者さんと接している中で、受診者数の伸びとともに、プライマリケアの必要性が高まっていることを、強く実感しています。

 複数の医療機関を受診し、10種類を超える薬を併用している患者さんが、数を減らすとみるみる調子が良くなった。血圧が正常値なのに、高血圧の薬が処方されて飲み続けている│。私が日常的に経験していることです。

 ポリファーマシー(多剤併用)や認知症の問題をはじめ、私たちがカバーすべき医療安全の領域も、高齢化とともに広がり続けています。

 私たちがなすべきことは、はっきりしています。急性期からスムーズに回復期に移り、ご自宅に戻っていただく。家でも病院と変わらない質の医療を受けることができ、困ったときには、なんでも聞いてもらえる。

 そんな博愛病院に、一歩ずつ近づいていきたいと思っています。

特定医療法人財団 同愛会 博愛病院
鳥取県米子市両三柳1880
TEL:0859-29-1100(代表)
http://www.hakuai-hp.jp/


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