九州大学大学院医学研究院 耳鼻咽喉科学 教授 会長 中川 尚志

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【第62回日本聴覚医学会総会・学術講演会】発達障害を伴った難聴児をめぐる諸問題難聴・耳鳴治療に向けた聴覚基礎研究

【なかがわ・たかし】 1986 九州大学医学部卒業 1991 医学博士(九州大学大学院) 1995 米ベイラー医科大学耳鼻咽喉科研究助手2006 福岡大学耳鼻咽喉科主任教授 2013 福岡大学病院副病院長 2015 九州大学大学院医学研究院耳鼻咽喉科学教授

 第62回日本聴覚医学会総会・学術講演会が10月18日(水)〜20日(金)、福岡市のアクロス福岡で開かれる。

 主題は「発達障害を伴った難聴児をめぐる諸問題」と「難聴・耳鳴治療に向けた聴覚基礎研究」。主題演題が37、一般演題179の計216題。参加者はおよそ600人を予定している。

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◎「聴こえ」に関わる多職種の学会

 日本聴覚医学会は、乳児から高齢者までの「聴こえ」を担当しています。耳鳴りや難聴といった「聴覚」そのものだけでなく、子どもの難聴に付随して生じる言葉の遅れや、必要となる教育的介入、補聴器、福祉に関すること、聴力検査のための研修など、幅広く扱っています。

 総会・学術講演会に参加するのは医師だけではありません。言語聴覚士、聴覚特別支援学校や難聴学級の教員、補聴器業者など多職種に渡ります。

◎「発達障害とは」を知る

 今回の一番の特徴は、主題の一つに「発達障害」を取り上げたことです。

 今、1学級に1人〜2人の割合で、発達障害の子がいると推定されています。難聴の子にも、同程度の割合で、発達障害の子が含まれます。

 自閉症スペクトラムの子やアスペルガーの子は自分が興味があることにしか関心を示さず、コミュニケーションをとるのが難しいことが多いです。多動症の子は物事に集中することが苦手です。

 難聴児の療育においては聞く姿勢をもつことが大切です。このため、発達障害を合併した難聴児ではその診断や療育で、苦慮する場面が多々あります。私自身、日常的に臨床に関わる中で、親や学校の先生が悩んでいる話を聞く機会もあります。

 そこで、筑波大学人間系の大六一志・元教授を招き、「発達障害の理解と支援」と題して、1時間、基調講演していただくことにしました。

 大六先生は、東京大学で教育学博士を取得し、2016年3月まで筑波大学人間系教授を務めた方です。「教育」の面から、知能検査や発達評価の理論的背景の研究を進め、WAIS―ⅢやWISC―Ⅳの日本版にも関わってきました。

 講演を通して、「発達障害とは」を理解した後は、同じ会場で関連の演題発表と質疑をします。

 これまで、発達障害について、しっかりとディスカッションする機会がありませんでした。発達障害がある難聴児の診断や療育のヒントになることを願っています。

◎基礎医学は理解につながる

 もう一つは、聴覚生理に関わる「難聴・耳鳴治療に向けた聴覚基礎研究」です。

 東北大学大学院医工学研究科/医学研究科の川瀬哲明先生に、「聴覚臨床に役立つ聴覚メカニズムの知識―音受容から聴覚情景分析まで」と題し、内耳から聴覚の中枢まで、基礎的なことを要約してお話しいただきます。

 教育系の職種の方からも「基礎医学の話を聞きたい」という希望があります。基礎医学を学ぶことは、難聴児を理解することにつながるからです。

 例えば、高度難聴の子どもの発音はひずみます。発音がひずむのは、聞く音がひずんでいるからです。そのことを理解するには基礎医学の知識が必要です。

 しかし、その部分をまったく理解していなければ、「この子たちは、言葉の練習さえすれば、クリアできれいな発音ができるはずだ」と思ってしまいます。

 でも、その子は、いわゆる「きれいな発音」を聞いたことがありません。

 適切な教育には基礎医学の知識が必要で熱心な教員の先生方は、基礎医学についても深いところまで勉強してきます。

◎字幕やスピーカーで「情報保障」

 この学会には、難聴の方も参加します。「当事者」としてではなく、自分の障害と向き合って、この業界に就職している人です。

 難聴の方に対する「情報保障」はこの学会の大きなテーマの一つです。そこで、今回、音声認識機能を使って字幕を作成するアプリ「UDトーク」を初めて活用することにしました。字幕は発表者の横に置いたスクリーンと、参加者のスマートフォンで見ることができます。

 これまでは一部の発表に対して口述筆記を入れていました。アプリは、誤変換がありますが、どの会場にも入れることができます。まずは、やってみよう、と企画しました。うまくいけば、今後さまざまな学会で使えると思います。

 また、指向性の高いスピーカー「comuoon」も、難聴者用席と演者席付近に置き、聞きやすさを向上させます。

◎利便性向上と統合視野にコンパクト化

 日本耳鼻咽喉科学会の関連学会は、この学会を含めて現在16あります。その中には、内容や参加者が一部重なる学会も複数存在します。重複をなくすこと、学会参加者の負担を軽減することを目的に、日本耳鼻咽喉科学会は、この関連学会の統合を視野に入れています。

 そこで、今回の総会・学術講演会では、統合の前段階として、コンパクト化を意識しました。

 シンポジウムもパネル展示も、懇親会もありません。これまで7〜9分だった演題の発表時間は原則6分と短縮。質疑の時間は各4分と一応定めていますが、質問がなかったら、早く終わっても構わないと、座長の先生にお伝えしています。

 参加者が関心を持つ内容にじっくり時間を割き、ディスカッションを深めたい。集中的に学べる会を目指します。

 会期内には、補聴研究会、聴覚生理研究会も開催。さらに、これまで7月に開催していた「難聴遺伝子の研究会」を、試行的に、今総会・学術講演会内に移しました。数多く種類がある「遺伝性難聴」について、教育関係者の関心も高まっています。研究会にも、多くの人が参加してくれるのでは、と期待しています。

第62回日本聴覚医学会総会・学術講演会

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【基調講演】

10月19日(木)午前8時5分~同9時5分
「聴覚臨床に役立つ聴覚メカニズムの知識―音受容から聴覚情景分析まで」
司会:原 晃(筑波大学)
演者:川瀬哲明(東北大学大学院医工学研究科/医学系研究科)

10月20日(金)午前8時~同9時
「発達障害の理解と支援」
司会:廣田 栄子(筑波大学名誉教授)
演者:大六 一志(筑波大学人間系元教授)

【ランチョンセミナー】

「難聴児イノベーション」
司会:佐藤 宏昭(岩手医科大学耳鼻咽喉科学講座教授)
演者:鎌田 浩二(全国難聴児を持つ親の会会長) など

会期:10月18日(水)~20日(金) 会場:アクロス福岡
運営事務局:コングレ九州支社内
HP:http://www.congre.co.jp/audiology62/


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